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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第二部 宇宙人 vs 猫

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あっという間の……

 地上ではユキタローが、マオ、ビキ、コユキの三匹を前に、授業のようなことを始めていた。


 猫語なのでわからないが、ユキタローが黒板に白いチョークで図やら計算式を書き、解説しているようだ。

 三匹はおとなしくそれを聞き、たまにウンウンとうなずいている。


「あれは……何をしているの?」

 俺はわけがわからなすぎたので、隣のリッカに聞いた。


「わたしが聞きたいわ」

 リッカはユキタローの猫語を聞き取りながらも、さっぱりわかっていないようだ。

「なんだかかなり難しい話をユキタローちゃんがしてるの。……マオたちがこれを理解してるとは思えないんだけど……」


 マオは真面目に猫背を少しだけ伸ばして席に座り、真剣にユキタローの授業を聞きながら、たまにウンウンとうなずいている。

 どう見てもお遊戯をしているようにしか見えない。学校のお勉強ごっこだ。


 空には銀の飛行物体が浮かび、俺たちを見下ろしている。コンビニ・ボムとやらを撃つのは中断している。中ではあの3人が侵略を祝してのんびり乾杯でもしているのだろう。


 海崎さんが妨害電波をなんとかかい潜り、東京本部に連絡し、ミサイル及び戦闘機による迎撃を要請していた。それが来るまで俺たちに出来ることは何もない。待つだけだ。

 とはいっても地球の科学力であれを撃ち落とせるだろうか。一瞬にしてコンビニエンス・ストアを地上に建ててしまうようなあの宇宙人の科学力は明らかに地球のそれを上回っている。


「リッカちゃん……」

 さる……山田先輩がやってきて、リッカに言った。

「この戦争が終わったら、ボクと結婚してくれないか」

 山田先輩に死亡フラグが立った。


 東京本部の迎撃を待ちながらも、みんなを絶望が包みこんでいる。

 もう、地球はやつらに侵略されて、地球人は皆、コンビニエンス・ストアでフライドチキンを販売しなければならなくなる未来しか見えていなかった。


 東の空にキラリと光るものが見えた。


 ミサイルだ。

 凄まじいスピードでそれはこちらへ飛んで来る。


「来た!」

「来たぞ!」

「人類の叡智がやって来た!」

 人間たちが歓喜の声をあげる。

「宇宙人どもをバラバラにしてやれ!」


小癪こしゃくよね……。めきるたん、やっちゃいなさい』


 飛行物体から響いたXの声とともに、ぽるぽるという音とともに黄色い光線が発射され、ミサイルはあっという間にからあげ棒に姿を変えた。そのまま墜落し、地上に建っているコンビニエンス・ストアの一軒に吸収され、消えた。


『ホーホホホホホホ!』

 Xたんの声が空に響く。

『なんでもかんでもコンビニ商品にしてあげるわ!』


 人間たちは皆、改めて絶望を確信し、口を半開きにして空を眺めるしか出来なかった。


 その時、とても頼もしい声が地上からあがるのを俺は聞いた。


「うにゃ……」

「うにゃ」 

「うにゃっ!」

「うにゃにゃにゃにゃ!」


 見るとマオを先頭に、4匹の猫たちが勢いよく駆け出している。

 ユキタローはいつも通りだが、他の3匹は様子がいつもと違っていた。やたらと鋭く目を針のように細くして、ちょっと怖いほどの真剣さで駆けていく。

 4匹は俺たちの乗ってきた車に辿り着くと、ユキタローの号令とともにそれをバラバラに解体しはじめた。


「おっ……?」

「おい……!?」

 山原隊長たちがびっくりしてツッコミを入れた。

「何してんだ!? 俺たちの車を……!」


 どこにそんなパワーがあったのだろう。マオたちは、あっという間に車をバラバラにすると、それを材料に新たなものを組み立てはじめた。


 俺たちは呆然とそれを見ているしかできなかった。


 出来上がっていく。


 どんどん出来上がっていく。


 猫たちの手が、車をあっという間に大砲のような形をした兵器に作り変えてしまった。





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― 新着の感想 ―
地球人類、ネコに圧倒的敗北の瞬間である。 ヒト「え〝え〝えぇぇぇぇぇっ!?」 目玉ドーン、顎カクーン
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