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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第二部 宇宙人 vs 猫

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侵略ミニ戦争勃発

 マオを連れ込むと、飛行物体が音もなく浮上した。


「マオ!」

「マオ!」

「マオたん!」


 俺もリッカもマコトさんも、叫ぶばかりで何もできなかった。


 そこへ後ろから海崎さんがやってきた。

「どうした、冴木隊員? あれはなんだ?」


「マオが……! マオがあの中に連れ込まれたんです! あっ、そうだ! 海崎さんて、穿いてるブーツで空、飛べますよね? 助けてください! マオを……!」


「よしっ……!」

 飛びかけて、海崎さんが我に返ったように、言った。

「なぜ私が猫を助けねばならんのだ。あれを助けるのはおまえの仕事だろう、ブリキ」


「ウゥ……」

 人間語翻訳機をつけたブリキが、言った。

「やめておく。猫は怖がりなんだ」


『あっ!』

 上をじーっと見つめていたミオが声をあげた。

『マオちゃま、捨てられたにゃ!』


 見上げると、確かに飛行物体の窓が開き、そこから丸っこいものが放り出されるのが見えた。マオだ。


 落ちてくる。ゆっくりとくるくる回りながら、マオが空の上から落ちてきた。放心してる表情がなんとなくわかる。


「空中キャット七回転だ、マオくん!」

 猫本さんがそう叫んだが、何も聞こえてないように落ちてくる。


 俺もリッカも駆け出した。

 なんとか受け止められる距離だと信じて。


 しかし、俺たちの後ろから、凄い勢いで俺たちを追い越し、マコトさんがチーターのように落下点に先に辿り着いた。


 ぼよ〜ん


 マコトさんが空から落ちてきたマオを胸に受け止めると、そんな音がした。とてもクッションがやわらかそうで、俺もリッカもマオの無事を確信して「ホッ」と声を漏らした。


 やはり日頃の訓練は大事だと痛感させられた。マコトさんの身体能力は凄い。


「よかった! マオたん、大丈夫!?」


 マコトさんがそう聞いたが、マオはパニックを起こしているようだった。


「マオマオ、マオゲー!」

 そんなことを、泡を吹いて言いながら、マコトさんの胸にしがみついている。

「ウママママ……! マゲゲー!」


 ブリキがそっと人間語翻訳機をかぶせると、わかることばで喋りだした。


「怖かった! 怖かったー! あの方たち、お話が通じないにゃ! ぼくにゃん、お空を初めて飛んだにゃ!」


「よしよし」

 マコトさんが体中を撫で回し、落ち着かせようとしてる。

「よちよち、マオたん。怖かったねぇ?」


「あれはどうやら異星からの侵略者のようだな」

 ようやく駆けつけた山原隊長が言う。

「東京支部へ連絡しろ。迎撃ミサイルの発射を要請するんだ」


「無線が繋がりません、隊長!」

 さる……山田先輩が雑音を響かせる無線機に向かいながら、そう言った。

「何やら妨害電波が流されているようでござる!」


「あの飛行物体からだな……」

 隊長が舌打ちする。

「車の中に銃火器があるだろう。あれでなんとかするしかないな」


 そういえば、元々我々は猫を根絶やしにする予定で、車の中に山ほどの銃火器を積んできていたのだった。

 とはいえマシンガンとピストルばっかりだ。そんなものが果たしてあの巨大な飛行物体に通用するものだろうか?


「何事です?」

 人間語翻訳機をつけたユキタローがやってきた。

「あれは何です?」


 その時、上空の飛行物体から大音量でアナウンスが流れた。あの参謀長とかいう女の声だった。


【これよりこの星は、我々ぽるたん星人が征服します。おまえたちは素直に降参しなさい。ホールド・アップ。武器があるならそれを捨て、手を上にあげた者は奴隷として優遇します。従わない者は処刑。さぁ、屈伏せよ】


「ふざけおって……」

 山原隊長が猿のように歯をむき出して威嚇した。

「我々が貴様らごときにそう簡単に屈伏させられると思うのか」


 飛行物体から緑色のビームが飛んできた。

 それが隊長に命中した。


「あうっ!?」

 隊長が簡単に屈伏した。

「わ……、わしはもう……ダメだ」


 さっき俺が喰らったのと同じものらしく、隊長は痺れて動けなくなっていた。あのビームを喰らうとしばらく体が麻痺してしまう。俺は10分ぐらいで治ったが。


『マオ! マオ!』

 ビキがマオに抱きついて号泣している。

『あんまりだ! あいつら、猫に空を飛ばすなんてあんまりだ! 猫は空を飛ばないんだぞ!』

 猫語なのでわからないが、たぶんそういうことを言っていた。


「ビキにゃん、大丈夫だにゃん。昔々、遊園地というものがこの世にあり、ジェットコースターというものが存在したそうにゃん。ぼくにゃん、それに乗ってお空を飛んだ気持ちだったにゃん。怖いけど、今から思えば気持ちがよかった気もするものにゃん」


【ねぇ、ねぇ】

 上空の飛行物体から、今度はあの王女の声がした。

【この星って、コンビニのフライドチキンある? ないの? 原始すぎ! ないならあたしが作ってあげるわ。ホホホホホー!】

 そして、宣言した。

【侵略ミニ戦争、はっじめるよー!】




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処刑すると言いつつ麻痺とは、意外と慈悲深い?
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