新しいともだち(マオ視点)
きっと人間様とおともだちになる前だったら、ぼくは怖くて震えてたと思うにゃ。
でも、恐ろしい妖怪だと思ってた人間様たちは、仲良くなってみれば一緒に遊ぶのが楽しいおともだちだったにゃ。
だからこの新しいひとたちも、怖くないにゃ!
おいしいミルクをごちそうしてくれるっていうし、ぼくは大喜びでその銀色の船の中に飛び込んでいったにゃ。
このひとたちともともだちになるにゃ!
だってともだちは多いほうが楽しいにゃ!
わくわくしながら入っていくと、後ろで銀色の扉がパシュッと閉まりました。閉まる時、なんかみっちゃんの叫び声が聞こえた気がする。
中には他に誰もいなかったので、改めまして、ぼくは3人に挨拶をした。
「イーきにー! ぼくにゃん、地球の支配者で、名前はマオ・ウだにゃん! ミルク飲んでから何して遊ぶにゃ?」
「クックック……」
「うふふ……」
「ぽるぽるぽる……」
なんだか3人がぼくを見下ろして笑ってる。
あんまり楽しそうな笑いじゃなかったけど、ぼくにゃんも笑い返してあげました。
「にゃっはっはっは……」
「バカにしてるのか!」
「下等生物のぶんざいで!」
「ぽるるる!」
なんだか3人とも怒りはじめました。
「それにしてもあなた方はすごいにゃん。何も機械とかつけてないのに、猫にも人間にも言葉が通じてる。早くミルクにしようだにゃん」
ぼくが言うと、3人だけで会話をはじめました。
「早速、このネコを実験台に縛りつけて、データをとりましょう」
「こんな下等生物が言葉を喋ってるなんて……信じられないことだわ。何かすごい潜在能力とかもってるのかも?」
「ぽるる、ぽるぽる」
うーん……。
喋ってる内容はよくわかんにゃいけど……
このひとたちとともだちになるのは、なんだか難しいことのように思えてきました。
いやいや! ことばが通じるんだから、ともだちになれないわけがないにゃ!
頑張って、ぼくは精いっぱい、馴れ馴れしくすることにしました。
「ミルク、早くくれだにゃん」
「はいはい。こちらへおいでなさい」
めきるたんがそう言って、手招きしてくれたにゃ。
楽しそうな雰囲気がしてきたにゃ! ミオにゃんも来ればよかったのに。
そう思っていると、めきるたんが、銀色の台の上にぼくを乗せて、ぼくの手足を縛りつけました。
「これはどういう遊びだにゃん?」
したことのない遊びに、ぼくはわくわくしてきた。
「ぽるぽるぽる」
セミみたいな顔の男のひとがぼくを見下ろして、ハサミみたいな両手をチョキチョキしてる。
「ぽるぽるぽるぽる……」
そのハサミがひとつ、ぼくの顔に近づいてきて、ぼくの顔をまるで食べるみたいに、グワッ!とはさみました。
そこからなんか吸い取られてる……。
うわぁ……。
なんか、眠たくなってきたにゃ……。
めきるたんとすばるたんが会話してるのが、夢心地に聞こえていました。
「ぽるたん兄様をコンピューターに繋ぎ、解析します」
「ただのネコに見えてコイツ、恐ろしい力を秘めてるとかかしら?」
「解析完了しました。ただのネコです」
「ええっ? ただのネコが言葉を喋れるの?」
「ぽるたん兄様の解析能力は完璧です。これはただの下等生物です。恐れるに足りません」
「じゃ、攻撃開始しちゃおっか?」
「はい。このネコどうします? かわいいから飼っちゃいます?」
「だめだめ。船内がケモノ臭くなっちゃう。船外遺棄、船外遺棄して」
ぱかっと窓が開き、ぼくはそこから高い空へ投げ捨てられました。