宇宙人がやってきた!
空に現れたその銀色の飛行物体を見つけて、猫たちがシャーシャーと騒いでる。
「ミチタカ……! あれ、何?」
怖がるリッカが俺の腕にしがみついてきた。
「ミチタカくん……、怖い!」
なんか張り合うみたいにマコトさんも、もう片方の腕にしがみついてきた。
「わからないけど……、用心したほうがよさそうだ」
俺は腰の銃に手をかけた。
それは着陸してきた。
大勢の猫たちが遠巻きに取り囲み、毛を逆立て、びびった耳を後ろ向きにしている中、巨大な銀色の飛行物体は、その扉を開き、中から三体の宇宙人っぽいのが姿を現した。
先頭に立って現れた、銀色づくめの女の人が、大声で俺たちに言った。
「やあ、地球人の諸君! ごきげんよう! 我々はぽるたん星人だ! 君たちと友好を結びにやってきた!」
ざわざわと猫たちが騒ぎだす。
それをなんだかばかにするような目で見回すと、銀色づくめの女の人は名乗った。
「私はぽるたん軍参謀長、めきるたんである! そしてこちらが……」
後ろからズズイと現れた女の子を、手つきをひらひらとさせて引き立てた。
「我がぽるたん星の王女にして姫様! ……」
ばーん! という効果音を口で付け加えてから、紹介した。
「すばるたんX様であーる!」
「ごきげんよう、原始の星の原住民たち」
背の低い、16歳ぐらいの、貫禄も特にない、派手にカラフルな格好をしてるだけの、ただのかわいい女の子だった。すばるたんXと名前を紹介されたその少女は、フライドチキンのようなものをむしゃむしゃと食べながら、俺たちを小馬鹿にする口調で言った。
「我々はおまえらと友好を結びにやってきた。おまえらの代表者と話がしたい」
「ぽるぽる」
その後ろでちょっとセミっぽい男の人が、なんか言った。
「ぽるぽるぽる」
「おまえらの代表者はどいつ? サッサと出てきなさい」
高圧的にそう聞くすばるたんXに、
「あっ、はいはーい! ぼくにゃん! ぼくが地球の支配者です!」
楽しそうにマオが手を上げて、前へ駆け出そうとした。
「待てっ、マオ!」
リッカと二人で引き止めた。
「待って、マオ! なんかあれ、危ないわ!」
「ふにゃーっ!?」
うっかり俺がしっぽを掴んで引き止めてしまったので、マオが声をあげた。
「みっちゃん……。しっぽを掴んじゃ……痛いにゃ」
涙目で責めるように俺を振り返る。
「うふふ……」
高いところからすばるたんXがマオを見つけて、言った。
「あなたがこの星の支配者なのね? やっぱりネコが人間を支配してるのね? おもしろーい……うふふ」
「とりあえずおまえたちの代表と話がしたい」
めきるたん参謀長が言う。
「そこのオレンジ色のネコちゃん。おまえが代表だね? 中へ入りなさい。ミルクでもふるまってあげましょう」
「ミルク!?」
マオの目が、輝いた。
「行く! 行くにゃ……! ちょっ……、みっちゃん、リッカ、離すにゃ!」
「あたいも行くやのやの!」
後ろからそう叫びながら、ミオも駆け出した。
「マオちゃまが行くなら、あたいも行くやのやの! 一緒にミルク、ぺちょぺちょしましょ!」
「ふふふ……」
「おいで〜、ネコちゃん」
「ぽるぽる、ぽるぽる」
「ミオも……だめっ!」
リッカがミオを引き止めてくれた。
「あいつらなんだか危ないわ。わたしの野生の勘がそう告げてる」
俺は全身に衝撃を感じた。
見ると、ぽるぽる言ってたセミみたいな男が、俺のほうにハサミっぽい腕を向け、そこから何かを発射したようだった。
体が痺れる。マオを引き止めてしっぽを掴んでいた手が……離れる。
ゆっくりと地面に倒れる俺を見て、マコトさんが叫んだ。
「ミチタカくんっ!」
マオはそんな俺に気づかず、走り出していた。ミルクという言葉に夢中になってしまっていた。
「ふふふ」
「ふふふふ……。ようこそ、ネコちゃん」
「ぽるぽる」
「ま……、マオ……!」
マオが嬉しそうにそいつらのところへ辿り着き、楽しそうに挨拶をして、中へ連れ込まれるのを見送りながら、俺は体が痺れて動けずにいた。




