侵略者(X視点)
ぽぽぽ……
ぽぽぽぽ……
この静かな飛行音。イカスでしょ?
あたしたちは宇宙人──ん? この言い方、なんかおかしい気がする。
そうよ。宇宙人はこの青い星のやつら。
あたしたち『ぽるたん星人』こそが人間なの。
この青い星を侵略に来た。
あたしたちの『ぽるたん星』はもうだめなの。
資源は枯渇、食糧は危機。大気は汚染されまくって呼吸するにもガスマスクが必要なの。
見て。この星、素晴らしい。
ちっともまだ開拓されてない。知的生命体反応はあるのに。どういうこと?
開拓して、開発して、してしてしまくる余地ありまくりじゃないの、うふ!
「見てくださいよ、X様」
眼下に広がる緑の大地を眺めながら、参謀のめきるたんがあたしに言った。
「まるで原始の頃のぽるたん星にそっくりです。大気成分も酷似しています。調査するまでもなく、ここを我らの新しい大地としましょう」
「ぽるぽる」
お兄様が楽しそうに笑った。
「ぽるぽるぽるぽる」
「でも、知的生命体反応があるのよね?」
念には念を入れるあたしはさすがの星の王女。
「原住民をまず排除しなければ」
「珍しいことに、知的生命体が二種類いるようです。そのうち一種類は我々に似た生物ですが、数がとても少ない。圧倒的に数の多いもう一種類のほうが、どうやらこの星を支配しているようなのですが……」
そこまで言って、めきるたんは苦笑した。
「どうなの?」
「コイツら知能が高いだけの、ただの動物です。我々の星でペットとして飼われているネコにとてもよく似た動物ですね。かわいい」
「あらあら。なるほど」
それだけでこの星のストーリーを伺いしれた。
「なるほどね。この星はネコちゃんの惑星なのね。かわいそう、人間はなんらかの理由で数が増えなくて、ネコに支配されちゃってるのね。かわいそう!」
そう言って、思わずププププと笑ってしまった。
「ぽるぽる、ぽるぽるぽる」
お兄様もお笑いになった。
「とりあえず着陸するわよ」
「らじゃー」
あたしたちが船を着陸させると、この星の原住民たちがワラワラと見にやってきて、でも怖いのだろう、あまり近づいてはこずに、遠巻きに眺めてる。
「さあ、姿を見せてあげましょう」
「王女さまの凛々しいお姿を見て、やつらびっくりしますよ」
「ぽるぽる、ぽるぽる……」
「友好的なふりしてこの星のやつらみんな奴隷にするわよっ!」
意気揚々とそう言って、あたしは船の扉を開き、この星の原住民どもの前に姿を見せた。




