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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第一部 人間 vs 猫

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ブリキ(マオ視点)

『あっ。噂をすればブリキにゃん』


 ちょっと赤の混じったカッコいい黒猫のブリキにゃんが、

なんか森に溶け込む色のジャケットを着て、広場でみんなに自慢げに何か話してるのを見つけた。


『おーい、ブリキにゃん』


『なんだ。マオじゃねーか。相変わらず顔でっけーな』


『いーキニー』


『いーキニー』


 ボクらは合言葉【いーキニー】を交わせばもう友達。

 その場にいたみんなで合言葉を交わし合うと、ブリキにゃんが手にぶら下げてるそれをボクは指さした。


『それ、トウモロコシにゃ?』


『見ての通りよ』


『人間からかっぱらったの?』


『おうよ』


『なんでそんな危ないことするの?』


『だって面白ぇーじゃねーか』


『あー、なるほどにゃ! 面白いことはよきことにゃ』


『だろ?』




 ユキにゃんの説明はなんだったっけ。センリヒンだったっけ。忘れたけど、

ユキにゃんの説明ではわからなかったことがわかってスッキリした。

まぁ、元々わからなくてもどーでもいいんだけど。


 ボクも面白がろうと思ってトウモロコシを見せてもらった。

でも猫には食べれないものだからちっとも面白くなくて。



『いーキニー』


『いーキニー』



 ボクらは合言葉を交わすと気持ちよく別れた。


 正直ブリキにゃんはあんま好きじゃない。

好きじゃないものは面白がれないので、気持ちよく別れる。


 ブリキにゃんの面白いことはボクの面白くないこと。


 それでいいきにー。




 とりあえずボクはブリキにゃんの気が知れない。

森には人間が出る。そんな恐ろしいところを面白がるブリキにゃんの気が知れない。


 ボクは絶対に行かないぞ。森なんて。




((≡゜♀゜≡))  ((≡゜♀゜≡))




 ボクがネコジャラシの穂でガシガシ遊んでると、ビキにゃんがまたやって来て、言った。


『よー、マオ。魚釣りに行かねーか?』


『魚……。うふふ。いいね!』


 お腹がなんとなく空いてたので、よだれが出た。


『猫100匹ぶんでも食いきれねー【ヌシ】って魚がいるらしいんだ。それ釣りに行こうと思うんだ』


『猫100匹でも食べきれない!?』

 目からでっかい目が全部とびだすかと思った。それぐらいびっくりしたってこと。

『そんな魚がいるのかにゃかにゃん!?』


『噂だけどな。見たやつがいるらしーんだよ。』


『行くにゃ! 行くにょー!』


『ただ、場所がちとアレなんだけどな』


『どこにゃ?』


『森らしーんだ』


『行くにゃ!』


『あれ? お前、森は人間が出るから怖いんじゃなかったの?』


『そんなことを言ってる場合ではないにゃ! 好奇心が止められないにゃ!』


『さすが猫の中の猫だな』


『ユキにゃんも誘うにゃ?』


『うーん……。アイツは口うるさいからなー。

アイツには言うな。ブリキを誘おうと思ってる』


『ブリキにゃん、魚釣りなんてのどかなことに興味があるかにゃー?』


『なくても誘おうぜ。アイツ、森のことよく知ってるからな』


『なるほど! 心強いにゃ!』


『よし。そうと決まればオレ、ブリキを誘いに行って来る』




((≡゜♀゜≡))  ((≡゜♀゜≡))




 ユキにゃんの家はカッコいい。木や石をほじくったふつうの猫の家と違う。


 なんか平べったい石みたいなのを組み上げたみたいな、大きな家だ。

猫の王様のボクの家よりよっぽどカッコいい。ちなみにボクの家はただの地面の穴。


『ユーキにゃんっ』


 彼女自慢の【窓】とかいうところから中を覗き込むと、ユキにゃんは【机】とかいうものに向かい、

【紙】とかいうものに【ペン】ってものでなにか書きながら、なんか研究してる真っ最中だった。

ボクが声をかけると難しそうな顔で振り向き、にこっと笑ってくれた。


『やあ、マオ・ウ。どうしたの』


『うふっ』

 ボクはたまらず、ビキにゃんに口止めされてたことを言った。

『森の湖にね、100匹の猫でも食べきれない、でっかい魚がいるって。

ボク、ビキにゃんとブリキにゃんと一緒に、今からそれを釣りに行くんだよ』


『森に?』

 メガネを落としそうになって慌ててクイッと指で上げながら、ユキにゃんの目が険しくなった。

『危ないよ? あそこには人間が出る』


『でもでっかい魚がいるんだよ』

 ボクは人間どころじゃなかった。

『すごいんだから。体長200メートルはあるんだから。知らないけどそれぐらいすごいんにゃ!』


『まぁ……。数が少ないから遭遇することは滅多にないとは思うけど……。

でも確率は0じゃない。心配だな……』


『こーんな! でっかいはずにゃ! ぜーったい! 釣ってみせるにゃ!』


『フフ……。楽しそうだね? マオ・ウ』


『もちろんにゃ!』


 ボクが楽しい気分に飛び跳ねて見せると、ユキにゃんもボクを見て微笑んでくれた。


『君は止められそうにないみたいだね。仕方がない。ボクもついて行くよ』


『本当!?』


 大好きなんユキにゃんも一緒に来てくれると聞いて、ボクは自分の身長より高くジャンプしてしまった。


『それにしてもマオ。なんでボクに教えてくれたの? ビキから口止めされてそうなのに』


『面白いことはみんなに教えたいにゃ! ユキにゃんを仲間外れになんかしないにゃ!』


『フフ』


 ユキにゃんがメガネの奥で優しい目を笑わせる。

気難しいとかビキにゃんは言うけど、本当は優しくて、白くてふんわりもふもふしてるユキにゃんのことがボクは好き。



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― 新着の感想 ―
自由だなあ…………。流石ネコ。 しかし森に魚って、どういう事だろう?
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