太郎丸のひとりごと(太郎丸視点)
みんなぼくを置いて、どこかへ出かけていってしまった。
ごはんは、ある。自動給餌器で毎日決まった時間に海崎くんが作ってくれたお肉のカリカリが適量、お皿の中に出てくる。
水も、おもちゃも、ある。
トイレは勝手に外へ出てしてくればいい。
ついでに外を走りまわって遊べば運動にもなる。
必要なものはみんな揃ってる。
でも一番必要なものが、ない。
ぼくはみんながいないと、さびしい。
新しい隊員のマコトくんもリッカくんも、ぼくはあっという間に好きになった。なんかいい匂いがするんだ、あの娘ら。
山田くんと猫本くんは特にぼくは好きだ。おじさん人間って、優しいんだ。しかもよくかまってくれる。
山原隊長くんはもっと好きだ。おじさん人間の上に、厳しくぼくに命令してくれる。ぼくに何をしたらいいかちゃんと教えてくれる人間がぼくは大好きだ。
ミチタカくんとユカイくんは外で思いきり一緒に遊んでくれる。大好きだ。
みんな、いない。
みんな、ぼくを置いて、どこかに出ていった。
さびしいよ……。
ウォ……
ウォォォ……ん
ピィー! ピィー! ガァー! ガァー! なんか機械が鳴りだした。激しく鳴りだしたぞ? なんだ、これ。ぼくには意味がわからない。
『未確認飛行物体が空より接近中。繰り返します。未確認飛行物体が空より接近しています。ヤマナシ支部隊員は至急調査をお願いします』
東京支部のお姉さんの顔がモニターに映ってそう言ってる。
でもぼく人間語はわからない。
『お手』と『待て』と『よし』とその他短いのはわかるけど、それ以外の長いのはわからない。
息をハッ、ハッ、ハッ、ハと荒くして忙しなく爪の音を床に鳴らして歩き回ることができるだけ。
なんか嫌な予感する。
なんか嫌な予感する。
ぼく、ここに捨てられちゃったんじゃないよね?
早くみんな帰ってきて。
早くみんな帰ってきて!




