人間様がやってきた(マオ視点)
人間様たちが猫の町にやってこられました。
ぼくにゃんはすっかり忘れてたので、ユキにゃんから聞いて外へ飛び出したのにゃす。
みんながひっそりひそひそ騒いでた。
『人間だよ』
『人間が来たよ』
『怖い、怖い』
『でも好奇心で見ちゃう』
ミオにゃんは怖がってずっと地面の穴に頭を突っ込んで震えてる。
ミッちゃんもリッカも人間だってこと、ミオにゃんはまだ知らないのですね。震えるおしりがかわいいにゃ。
広場に行くと、もう7匹の人間様は来られてて、ぼくは急いで駆け寄ったにゃん。
『おーい!』と手を振りながらぼくは手足全部を使って近寄った。
するとリッカが『マオくん! 翻訳機! 翻訳機!』と言うので、そこで初めて気がついた。
ちょうど草の上着のポッケに入れてたので、『めんどくさ、つけるのめんどくさ。でもこれつけなきゃお話できにゃい』と呟きながらそれをかぶりました。
ユキにゃんも出てきてくれて、一緒にお話することになりました。
ビキにゃんも飛んできて、『マオはオレが守るーーっ!』とか言うけど、無理しなくていいだにゃん。
こうして猫と人間のスノーかいだんが始まりました。
さぁ、遊ぶにゃ!
「何して遊ぶにゃ!?」
ぼくが聞くと、人間のタイチョーさんがなんだか嫌そうな顔をされました。
ぼくはあくびをしました。
タイチョーさんの表情にちょっとストレス感じちゃったのかも。
「マオ・ウ」
リッカが話しかけてくれたにゃ!
「今日はよろしくね」
『てめーら、マオに気安く近寄るんじゃねぇ!』
ビキにゃんがなんか張り切ってる。
あっ、でも。
これ、便利にゃ! ユキにゃんの作った翻訳機、人間の言葉は猫語に、猫語もちゃんと猫語として聞こえるにゃ!
ピリピリしてるビキにゃんに、リッカが猫語で話しかけた。
『こんにちは。怖がらないで。私たちはあなたたちの友たちよ』
ビキにゃんがそれを聞いて、驚きのあまり口が裂けそうになりました。
リッカが続けて言ったにゃ。
『私はリッカよ。あなたのお名前は?』
『ね……、猫……!?』
ビキにゃんがリッカに言いました。
『猫語を喋るとか……。おまえ、珍しい種類の猫なのか!?』
ビキにゃんの気持ちがよくわかる。
そんなふうに信じ込んでいた時がぼくにもありみゃした。
「その猫はなんと言ってる?」
タイチョーさんがリッカに聞いたにゃ。
「なにやら我らを嫌悪しているように見えるが……」
「長い歴史の中で、猫と人間は嫌悪し合って来たんですよ」
リッカがタイチョーに説明した。
「いきなり仲良くなれというほうが無理です」
「そうだな」
タイチョーさんが言いました。
「我らも同じだ。さて……」
タイチョーさんが服の上着の隙間に手を入れたにゃ。なんだろう。かまぼこでも取り出すのだろうか?
「やりますか? 隊長」
そう言って長毛種のオスの人間も服に手を入れました。
「うむ、海崎……」
タイチョーさんの顔がなんか怖い。
「橘リッカを盾にしろ」
「マオーっ!」
そう絶叫しながらまこにゃんが、ぼくに駆け寄って来たかと思ったら、だっこしてくれた。
ぼくはまこにゃんの胸の柔らかさが好きなので、そこに頬ずりしました。
スリ……。スリ……。
あー……。なんだかとてつもなく柔らかいものに包まれてる感覚にゃん。もちろんほんとうに包まれてるんだけどにゃ。
「何をしておる! 轟隊員!」
タイチョーさんが猫の嫌いな大声をあげた! うるさいにゃ! 猫は耳が聞こえすぎるんだから小声にしてほしいにゃ!
よく見るとタイチョーさんが銃を持ってた。なんだろう、水鉄砲で遊ぶの?
「マコトくん……! マオ・ウから離れて!」
長毛種のオスの人間様もいつの間にか手に銃を持ってるにゃ。
『みなさん!』
リッカが遠巻きに注目してる猫さんたちに、大声だけどうるさくない声で言った。
『私たち人間は、あなたたち猫ちゃんと仲良くなりたくてやって来ました! おみやげもありますよ!』
「おみやげとは……もしや……」
ぼくはまこにゃんに聞いた。
「そうよ」
まこにゃんがにっこり笑った。
「これよ!」
まこにゃんの右腕についてるかまぼこ発射機が、おおきなピンクと白のかまぼこを空に打ち上げた。
『なんだあれは!』
打ち上がったかまぼこを見て、猫さんたちが騒ぎ出す。
『いい匂いのするものだ!』
『色がきれい!』
『好奇心をそそられる!』
『見に行こう! 見に行こう!』
町の猫たちがぞろぞろと姿を現して、人間様方を取り囲んだにゃ!
みんな笑ってる。
お日様も笑ってる。




