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猫の町(ビキ視点)

 最近、マオがよく町から姿を消す。


 心配だ。あいつはオレがついててやんねーとなんにもできねー地球の支配者だからな。


 山にでも遊びに行ってて、もしコケて鼻をすりむいて泣いてたらどうしよう……。


 湖にでも行ってて、もしでっかい鯉にお尻を食いつかれてたらどうしよう……。


 山道を歩きに行ってて、もし人間に捕まって頭から食われてたらどうしよう……。


 あーーーっ! もう、心配で、いてもたってもいられねー!




「おいユキタロー! マオはどこ行ってんだ!?」


 ちょうど広場でくつろいでるユキタローを見つけたので、聞いてみた。


『さあ? マオは楽しいことが大好きだからね。どっか楽しいところに行ってるんじゃない?』


 呑気にいい加減なことを言いやがる。

 オレは心配で胸が張り裂けそうだってのに。


 呑気にそれだけ答えると、ユキタローはまた【本】とかいうものを見はじめた。

 ……ったく。【文字】なんつーものを読めるおかしな猫の考えてることはさっぱりわかんねー。マオのことが心配じゃねーのかよ!



(ΦωΦ)  (ΦωΦ)  (ΦωΦ)



 可愛い茶トラ猫のハナちゃんが『わうー』と鳴いてたけどそれどころじゃねえ。さかりのついたメスより今だけはマオのことを探したかった。


 マオを探して歩いてると、ブリキに会った。

 おひさまの熱を浴びてあったかそうな岩の上で、子分のもんごえと何やら話をしている。


 オレはからかってやることにした。


『おう、ブリキ。おまえ、人間に捕まってたそうじゃねーか。これでちっとは人間のことが怖くなったんじゃねーか?』


 そう言ってケッケッケと笑ってやると、ブリキが珍しく怯えたような顔をした。あれ? ほんとうに怖くなっちゃったのかな?


 しかし口は素直じゃない。


『うるせえよ、強そうなフリして中身チキン野郎のてめーと一緒にすんじゃねぇ』

 少し弱々しさの浮かぶ顔をオレのほうからそむけた。

『……ちょっとだけバラバラにされそうになっただけだ』


『ば……、バラバラに?』

 とんでもなく恐ろしいワードをさらっと口にしやがって。

『バラバラにされかけたのか!?』


 頭ん中に、人間が恐ろしく尖った爪で、ブリキの体を切り刻もうとしている場面が浮かんだ。

 大きく裂けた口から赤くて細長い舌がチョロチョロと覗いている。

 オレは思わず頭を抱えてブルブルガクガクと震えながら、地面に伏せてしまった。


『でもな、面白い人間とも出会ったぜ』

 ブリキがまだ人間の話を続けやがる。やめてくれぇ〜……怖い。

『猫の言葉を喋れる人間だ。メスだった。アレは使えるな。オレ達の仲間にしてやったフリをして、人間の巣に潜入させれば、あのメスを利用して内部から人間どもを抹殺できるかもだ』


『抹殺なんてしなくていいよォ〜……! 人間を猫に近づけないようにしてくれれば』


『チキン野郎が』

 ブリキに言われた。

『あっちへ行け。俺はもんごえと話をしているところだ』



(=^・^=)  (=^・^=)  (=^・^=)



 人間の話を聞いてしまった恐ろしさが止まらないまま歩いていると、ミオに会った。

 ミオは木の根元にお座りし、ぽけーっとなんにもしていなかった。


『おい、ミオ』

『やあ、ビキ様ではないやの』


『マオはどこだ? 最近よく姿を見ねーけど、どこに行ってる?』

『マオちゃまは、珍しい猫と最近よく遊んでおいでですやの』


『珍しい猫?』

『はいやの。ミオもたまに一緒に遊んでおりますやの』


『どんな猫?』

『どんな猫と申されましても……お名前は【ミッちゃん】と【リッカ様】と申されるのですけどけど……、ミオはイメージを伝えるのがとても下手ですやの。にゃん』

『そんなこと得意そうに言うなよ。……珍しい猫って、しっぽがウサギさんみたいに丸いとかか?』

『いえ。毛が頭からしか生えておりませんやのよ。いと珍し』


 ちょっと待て。


 頭からしか毛が生えてない?


 それって……


『あっ! マオちゃま、お帰りですやのやの』


 ミオがそう言ったので、そっちのほうを見ると、マオが呑気にほたほたと歩いて来るのが見えた。


『マオーーーーっ!』

 オレは安心してしまって、目と鼻から汁を大量に吹き出して、手を広げて二足歩行で駆け寄った。

『心配したぞ! 無事でよかった!』


『ありゃビキにゃん。何を心配したって? 心配したって何をかにゃんかにゃんかにゃん?』

『だってよ……。おまえが人間にでも捕まって、鋭い爪で肉球を一枚一枚剥がされてるかと思うとよ……』


『ビキにゃん』

『ん?』


 マオが珍しいほど真面目な顔で、言った。

『スノーかいだんをやるだにゃん』


『スノーかいだん?』

『だにゃん』


『なんだ、それ?』

『だにゃん』


 ミオが横から口を挟んだ。

『あたいは寒いのは苦手ですやの』


 マオが楽しそうにコココと笑う。

『寒さは関係ないにゃ。何やらとっても楽しそうことにゃ』


『よくわからんな……』

 まぁ、いつものマオの意味不明なことばあそびだろう。


 そう思っていると、マオがとんでもないことを言った。


『人間様を7体、この町にお招き猫するにゃ。そんで、いっぱい、いーっぱい! みんなで遊ぶにゃ!』


『……は?』

 オレの口から勝手に大きな声が漏れた。

『はあああああ!?』



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― 新着の感想 ―
スノー…………って、首脳か!? スノーかいだんとか、なんでボーゲンやってるみたいに言うんだよ、マオにゃん。 そして、スノーが即雪だと通じるネコたち、マジ優秀。
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