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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第一部 人間 vs 猫

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雨が降るにゃん!(マオ視点)

 こ、怖かっただにゃん……!


 やっぱり人間は怖いものだ。人間を知らなかった頃よりそう思うようになっちゃったにゃ!


 あの赤毛のメス様、いきなり襲いかかってきたにゃ……。

 それでいて、見たこともないおいしそうなピンクと白の半月様みたいな形の食べ物をぼくにゃんにくれたにゃ……。


 痛いことするのか、ごちそうくれるのか。

 珍しい食べ物をどうぞなのか、痛い痛いキックをどうぞなのか……。


 どっちにゃの!?


 やっぱりわけがわかんにゃい! わかんにゃいものは怖いにゃ!


 とにかくなんとか逃げられたにゃ。

 あとは猫の町めざしてとっとこ歩くだけにゃ。

 赤毛のメス様……ミッちゃんは『まこにゃん』と呼んでたにゃ……まこにゃんに見つからないように、そーっと、そーっと、足音を立てないように歩いて、帰るにゃ。猫だから足音を立てないのは得意中の得意にゃん。


 ふー……。


 疲れたにゃ。


 ちょっと木陰で一休みにゃ。


 前脚をベロで濡らして……と。


 頭からヒゲごと、洗うにゃ。


 ……。


 あれっ!? にゃんでぼく、顔を洗ってるの!?


 これは……


 雨が降るにゃん!






 感じてた通り、空が真っ暗になって来たのです。

 にゃんてこと! 猫は水に濡れるのが大嫌いなのに!

 でも仕方がないだにゃん。降るものは止められないだにゃん。降りたいなら降るがいい。ほっほっほ……。

 でも濡れるのは嫌だにゃん! どっか……! どっか洞穴とかないかにゃ!?


 あたりは背の低い木が、皮膚病でハゲた猫の毛みたいに、薄く生えてるばっかりで、逃げ込める木もなければ洞穴のある岩とかもありませんでした。

 濡れたくないにゃ!

 でも、見つけました。

 なんだ、あんなところに人間の作ったらしい家があるではないかいな。

 人間の作った……怖いにゃ。でも、雨に濡れないためにはあそこに入るしかないにゃ!




 入口らしきものは見つけたけど手が届きません。

 飛びついてみたけど背が足りませんでした。

 どっか他に入れるとこはないのかにゃ……。

 見つけた! 上のほうに、猫ひとりくぐり抜けられそうな穴が開いてるにゃ!


 ぼくにゃんは丸太の壁を登り、そこから中へと入って行きました。




 ぼくが中に入った途端、雨の音がざばー! と、そんでもってすぐにどばー! に変わりました。


 ふー……危なかった。


 濡れなくてよかったにゃ。


 自分の日頃の運動神経に感謝にゃ。


 にゃんにゃんにゃん……。


 入ったとこは真っ暗だったけど、猫は夜目が利くからね、見えるにゃ。

 蜘蛛の巣さんがいっぱいあって、あとはなんにもないにゃ。でも屋根がある。

 屋根に激しく雨が当たってるけどぼくにゃんにはちっとも当たらない。なんていうの、これ? ゆーえつかん?


 それにしても、最近は短い間にいろんなことがありました。

 人間と仲良くなっちゃった。

 でも、ミッちゃんとリッカは好きだけど、他の人間はまだ怖いの。

 ユカにゃんはメロンのことばっかりで気持ち悪いし、さるにゃんはもっと気持ち悪いけどぼく我慢してるにゃ。


 赤毛のメス様……まこにゃんは一番怖かったにゃ。

 何を考えてらっしゃるのかちっとも……


 ピカッ!


 外が光った! これは……もしや……


 ゴロゴロゴロ〜!


 い……、いかずちにゃ! こ、怖い!


 と、思ってたら、なんか下から誰かの声が聞こえました。


「きゃあっ!」


 高い人間の声にゃ。メスの声にゃ。


 そのあと独り言らしきものをお喋りになったけど、ちょうど人間語翻訳機をぼくつけてたから、その言葉が聞き取れました。


「わああああ怖い! 助けて、ミチタカくん! あたし怖いもの多いの! ごめんなさい、ずっと怖いものなんか何もないみたいな態度とってて! ごめんなさいごめんなさい! 謝るから許して! 助けて! ミチタカくん!」


 わかるにゃ。


 この世は怖いものでいっぱいにゃ。


 ぼくは水がキラリンって光るの怖いし、森の中にへんなバケモノみたいな形の木があったら怖いし、そしてあなた様と同じだ、雷が……


 ピカッ! ゴロゴロゴローン!


 ひ……ひっじょ〜に! 怖いのにゃー!


 怖い時は、どうするの?


 怖い時は? みんなどうするんだっけ?


 みんなで体を寄せ合って我慢するのにゃ!


 ぼくにゃんは下に降りれる穴を見つけて、そこから急いで降りた。

 思った通り、そこにあの赤毛の人間のメス……まこにゃんがいて、自分の体を抱きしめて、ぶるぶるぶるぶる震えてらっしゃいました。


 ぼくにゃんはその胸に飛び込みました。


「ヒエッ!?」

 まこにゃんは一瞬びっくりしたみたいだったけど、

「だ……誰?」

 ぼくのもふもふの毛並みに安心してくれたみたいにゃ。


「怖いのはぼくも一緒だよ」

 ぼくにゃんは人間語で言いました。

「だから一緒にブルブルすれば、怖さを我慢できるにゃ!」


「うっ……うん」

 まこにゃんはぼくを抱きしめました。

「うえぇ〜ん……。誰だか知らないけどありがとう」 


 そっか。人間は暗いとこで目が見えないんにゃ。

 ぼくら猫は子猫の時から教育を受けてるから知ってる。

『人間に出会ったら暗いところに隠れなさい。あいつら夜目が利かないからね』って、おばあちゃんも言ってた。


 とにかく! 今は抱きしめ合うにゃ! 一緒に怖がり合うにゃ! そうすれば雷さんもどっかに逃げ去っておくれになります!


 まこにゃんの胸、猫のおしりみたいで気持ちいいにゃ……。


 落ち着いてきたにゃ!



 

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― 新着の感想 ―
まさか…………この展開はライバル(?)に友情を感じるようになるのか、マコト!?
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