表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/129

にゃーん(マオ視点)

『にゃーん』


 こんな鳴き方をするボクはおかしいんだろうか。


 他の猫はこんな鳴き方しない。


 子猫の時だけだ。にゃーん、なんて鳴くのは。





『おい、マオ』


 ぼーっとしてたらビキにゃんが話しかけて来た。

今日もカッコいい紫色の細長い身体をまっすぐ立てて。


『なににゃん?』


 ボクが聞いたらビキにゃんは首をひねって考えてから、言った。


『何言おうとしてたか忘れた』


『それはねこらしきことにゃん』




 ボクとビキにゃんは友達だ。


 ボクは猫の世界の支配者だ。


 ボクの名前はマオ・ウ。猫の世界っていうか、この地球の支配者だ。



『お前のぼーっとした世界一でっかい顔見てるとなごむ』

 ビキにゃんが褒めてくれた。


『ありがと』



 ボクとビキにゃんは並んで座って、おひさまを身体中に浴びていた。




『日向ぼっこ、気持ちいいな』

 ビキにゃんがボクに言う。


『最高にゃ』

 ボクはビキにゃんに答えた。


 ボクとビキにゃんの上着が風に揺れる。下半身はもちろん産まれたままの姿。

自分の身体のオレンジ色がお日さまにキラキラしてる。


『これでどっかにさかりのついたメスでもいれば最高なんだがな』


『そんな興奮すること、今はしたくないにゃ』


『あっ。ユキタローが歩いてこっち来るぞ』




 ビキにゃんがそう言ったので、向こうを見ると、ふんわかのどかな春の野を歩いて、

ユキにゃんがメガネを揺らして歩いて来るのが見えた。

真っ白なちょっと太めの姿が今日もかわいい。




『やあ』

 ユキにゃんの声は低いけどかわいい。


『よぉ』

 ビキにゃんの声は男らしくてカッコいい。


『にゃー』

 ボクの声はちょっと……やっぱ子猫みたいで恥ずかしい。



『聞いたかい?』

 ユキにゃんが深刻そうないつもの表情で、言った。

『ブリキが人間と森でやり合ったようだよ』


『な、なんだってー!?』

 ビキにゃんが全身の毛を逆立てた。

『闘ったってことだよな!? うわぁぁあ恐ろしい! 

森なんか好きこのんで行くブリキは何考えてんだ!?』


『ううう……にゃん』

 ボクも話を聞いただけで恐ろしくなって、耳が垂れてしまった。


『でも安心して? 勝って、トウモロコシを奪って帰ったらしいよ』

 ユキにゃんが表情をちょっと柔らかくして、優しく言った。

『戦利品だって。トウモロコシを持って帰ったよ』


『トウモロコシなんて持って帰って来てどうすんだ!?』

 ビキにゃんが不思議がる。

『オレら、食えねーのに?』


『人間に勝ったことを示すためだよ。人間も食糧を取られて悔しがるだろ?』


『わかんねー。なんでそんなことすんだ』


『ボクもわかんにゃい』

 正直にボクは言った。

『意味がわかんにゃい』


 フフッと優しく笑うと、ユキにゃんは何も言わずに通り過ぎて行った。




 ボクとビキにゃんは日向ぼっこを続けた。



『ねぇ、ビキにゃん』


『ン?』


『ユキにゃんじゃダメなの?』


『何が? 何の話だ?』


『さっき言ってた、どっかにメスでもいれば、って話』


『バカか、お前は』


『にゃんで!?』


『ユキタローは確かにメスだが、メスじゃねーよ』


『意味がわかんにゃい』


『アイツはメスだが、科学者だ。

自分で作ったさかりをなくす薬を飲んで、発情期を止めてんだよ。

いくら顔が可愛くてもよ、さかりのつかないメスなんてメスじゃねーんだよ』


『メスじゃないなら何にゃ?』


『友達だよ。決まってんだろ』


『あー……』

 ボクはすごく納得した。

『そかそか。にゃっはっはっは!』




 とにかく気持ちがよかった。お日さまがポカポカで、草がお尻をくすぐって。


 ボクは後ろ脚でかゆい頬を掻くと、眠たくなった。


『ねむる? ビキにゃん』


 お昼寝を誘う言葉をかけると、ビキにゃんはもう眠っていた。

座って上半身を立てたまま、器用に頭をコックンコックンさせながら、倒れずに眠ってる。


 ボクも気持ちよくてしょうがなかったので、その場にお腹をつけると、

ビキにゃんの脚に寄り添って、ゴロゴロ喉を鳴らしはじめる。



 白い蝶々が目の前を飛んで行った。鼻の上にとまりそうになるほど近かった。


 日々は平和で良きことにゃん。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
長閑なような、そうでもないような…………? よくネコとライバル関係にさせられるイヌは今どんな立場なんだろう?
[一言] にゃんだか のどかな支配者だにゃあ~
[良い点] え?マオ、可愛いな! 下半身!www まぁ、猫ですからね。 [気になる点] >『何言おうとしてたか忘れた』 >『それはねこらしきことにゃん』 そうなの?! マオは常に「にゃーん」って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ