表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/129

解剖用猫を乗せて(山田ジロウ視点)

 海崎リョウジの開発した自動車は実に性能がいい。


 デコボコ道を難なく走り、邪魔な岩があればジャンプしてでもとにかく進む、進む。


 みんな、オッス! 僕の名前は山田ジロウ。NKUヤマナシ支部の副隊長さまだ。


「フン、フン、フーン♪」 


 僕は鼻唄を歌いながら、カッコいいその車を走らせる。


 行き先はトーキョーのNKU本部。


 行くのは初めてだが、ちゃんと車が勝手に目的地をめざしてくれる。


 気持ちよいな、気持ちよいなぁ。


「フン、フン、フーン♪ フンづまりw」


 おっと、しまった。自分で歌ったお洒落な歌に、自分で笑ってしまった。いけない、いけない。


 マコトちゃんと一緒に行きたかったなあ……。


 マコトちゃんと2人きりで、この狭い車内を笑いとおっぱいで満たしたかったなあ……。


 僕の華麗なドライビング・テクニックも見せてあげられたのに。


 目の前に邪魔な木が現れた。車が勝手にチェーンソーを前から出し、切り倒して進む。


 小さな川に遮られた。車が勝手に水に浮いて、ポコポコ進む。


 ははは! 俺、なんにもしてねーな。自動運転バンザイ。


 車が勝手に走ってくれるので、なんにもすることのない僕は、後ろの席の黒猫を振り返って、確認した。


「シャアッ!」


 黒猫が蛇のような声を出して威嚇する。おお、怖い、怖い。

 まあ、強化プラスチックの籠に閉じ込めてあるから、大丈夫なんだけどね。


 お前はこれから僕がトーキョー本部に送って行って、そこで解剖されるんだよ。

 まぁ、人類のために役立ってくれたまえ。


「ガガゴ、ガギゴ、マアウ」


 なんか黒猫が喋ってる。僕に向かって話しかけてるのだろうか?

 猫とお話する気はないね。マコトちゃんとだったらいっぱい、おっぱい、話したいけどねww


「ウルルァンナ、バオウ」


 なんか黒猫がしつこくしつこく話しかけて来る。

 こんな頭の薄いオッサンよりマコトちゃんのほうがいいだろうのに。


「ナマゲ」


 猫がそう言った。生毛!? なんだ、それは。どんなものだ!?


 まぁ、無視だ、無視。

 翻訳機は首からぶら下げてるけど、猫なんかとお喋りするつもりはない。


 あっ!?


 僕は慌ててブレーキを踏んだ。


 危なかった……。危うくチェーンソーで切り倒すところだった。


 行手を遮るように、道の真ん中に、人間が立っていたのだ。


 っていうか……、僕ら以外にも人間、この近くにいたの?


 しかも、女性だ。


 いや……、女性……だよな?


 そいつは黒くて長い髪に白い顔をしてる。

 粗末な白い服に包んだ身体は細長くて、そして、おっぱいがなかった。


 おっぱいがない女性って、いるのか?


 女性ならおっぱいがあるもんだと思っていたが……。


 固まったようにそこに立っているそいつに、僕は車の外に顔を覗かせると、聞いた。


「あんた誰?」


「あの……」

 そいつはどう聞いても男ではなさそうな、ナヨナヨした声で言った。

「……NKUの方ですか?」


「そうだよ? 君は?」


「私……、橘リッカって言います」


「女性?」


「そうです……」


「おっぱいがないけど?」


「す、すみません。……Aカップなんです」


「こんなところでどうしたの? こんなところで他の人間に会ったのは初めてだ」


「道に迷ってしまって……」

 リッカとやらは言った。

「あの……。もし、ご迷惑でなかったら、家まで送ってはくれないでしょうか?」


「うーん」

 僕は迷った。

「僕、これからトーキョーに行くんだけど?」


「じゃあ、そっち方向へ、途中まで乗せてください」

 リッカはぺこりと行儀よく、頭を下げた。

「お願いします」


 頭を下げると、着ている服のダボッとした襟が垂れ下がった。

 その奥に、確かに、ちっちゃいけど、おっぱいらしきものが2つ、見えた。


 エヘヘヘヘヘ……。


 マコトちゃんには冷たくあしらわれちゃったけど、リッカちゃんはなんというか……


 簡単にもてあそべそうだぁ……。


 僕の頭の中がハートマークでいっぱいになった。


「どうぞ、どうぞ」

 僕は助手席のハッチを開いてあげた。

「途中までと言わず、トーキョーまで一緒に行こうよ」


「ありがとうございます」

 リッカちゃんはハキハキとした動きで、助手席のハッチから乗り込んで来た。


 うわ! いい匂いだあ!


 蜜みたいな香りが鼻をくすぐり、僕は昏倒しそうになる。


 隣に座った。こっちを見る。にこっと笑った。


 やわらかぁい、かわゆぅい、少女だった。色白で、黒い髪がちょっと重たいけど、唇がピンクだ。


「この猫、どうするんですか?」

 後ろの籠に入ってる黒猫を見ながら、リッカちゃんが聞いて来た。


「あー、そいつね。トーキョー本部まで護送するの。あっちで解剖するらしいから」


「解剖? なんてひどいことを」


「ひどくないさぁ。だって猫だもん。猫は何されたって可哀想じゃないもん」

 ちょっと、ひっかかった。

「っていうか君……、猫を見てびっくりしないの? 怖がらないの?」


「イーきにー」

 リッカちゃんが黒猫に、そう言った。

「ナオム、ゴロ」


「は?」

 僕は意味がわからなかった。


「マオゲ、ゴロ」

 黒猫が言った。


「ウンタン、ムーニ、マニマニ」


「グァ、バリバリ、ナマゲ、ナマゲ」


 か……


 会話してる!?


 猫と!?


 翻訳機もなしで!


 プシュッ! と、霧吹きのようなもので、リッカちゃんに何かを顔に浴びせかけられた。


 あっという間に意識が遠ざかって、まだ車を発進させずに停まってたまま、僕はぐっすり眠らされてしまったんだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
山田ああぁぁっ! 乳に! 貴賎はない! それが解らんキサマは所詮二流以下なのだ!
[良い点] おっぱ〇のことで頭がいっぱいになる山田君の気持ちは分かります。 けど、おっπを愛するひとりの男として、一言。 Aカップでも乙パイです。おっぱ〇がないなんて言ってはいけない! 大小の貴賎な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ