縛められた猫本つよし(マオ視点)
大変にゃ!
ボクの友達のミっちゃんの友達の……
名前はわかんないけど、ミっちゃんと同じ、でっかくて頭にしか毛のない猫が、
ブリキにゃんに捕まって、意地悪されてる!
『ミオにゃん、飛ばすよ』
『はいな、マオちゃま』
ボクとミオにゃんはお尻から火を吹く勢いで平原を駆け抜け、
飛んでるスズメの群れを追い越した。
(ΦωΦ) (ΦωΦ) (ΦωΦ)
町に帰ると、確かに様子が変。
子猫はいつも通り広場でコロコロ遊んでるけど、オトナ達の姿がない。
塀の上でお昼寝をしてたやつを起こして聞いてみた。
『みんなはどこいるにゃ!?』
『ごめん。お昼寝してたからわからん』
ぴゅー!と次の場所へ。
こういう時に頼りになるのはユキにゃんだにゃん。ユキにゃんの家に行った。
留守だった。
『一人の時はいっつも家にこもって研究してるくせに、こういう時に限っていてくれないだにゃん』
『打ちひしがれるマオちゃま、かわいー♡』
あてもなく歩いてると、前からブシネコのもんごえが歩いて来た。
もんごえはブリキにゃんの子分にゃ。
いっつも手にカタナを持ち歩いてる、わびさびな日本ネコにゃ。
仕方なくもんごえに聞いてみることにした。
『もんごえにゃん』
『おお、マオ殿。何を焦っておられるでござるか?』
『みんながどこにいるか知らないかにゃん?』
『北の広場に集まっているでござるよ』
『そこで何してるにゃ?』
するともんごえは教えてくれた。
『我が主ブリキ殿が人間を撃ち落としたでござる。
みんなでいじめているのでござろう。
拙者は孤独な一匹ネコゆえ、参加しないでござるが……』
『人間……?』
ブルブルってなった。
『じゃ、そこじゃないにゃ。ミっちゃんの友達は変わった姿の猫だから……』
『では、ごめん』
行こうとするもんごえを呼び止めた。
『あっ! もんごえにゃん、他にみんなが集まってるとこを知らないかにゃん?』
『知らぬ、存ぜぬ、わからぬでござる』
もんごえにゃんが去ると、ミオにゃんがワクワクしたように言った。
『人間、見たいのやよ! ふー♡』
『ぼ、ボクは見たくないにゃ……。怖いにゃんにゃから』
『でも、みんながそこに集まってるんなら、そこで聞いてみるのやよ?』
『あっ、そうにゃん!』
ミオにゃん頭いい。ぴゅー!とボクらはまた駆け出した。
(ΦωΦ) (ΦωΦ) (ΦωΦ)
行ってみると、本当に町のほぼすべての猫がそこに集まってた。みんな好奇心むき出し。
誰に聞いても他にみんなが集まってる場所はないって言う。
おかしいにゃ……。仕方ない、ユキにゃんに聞くにゃ。
でもあまりにも猫が多すぎて、進めないし知り合いがどこにいるかもわかんにゃい……
かと思ったら、たまたま話しかけたおばあちゃん猫からいきなり有力な情報を得た。
『今、ユキタローさんが人間と会話をしてるらしいよ』
びっくりして毛玉を吐くかと思った。
『ユキにゃんが!? 人間語を話せたのかにゃん!?』
『さすがは学者猫さまだよねぇ。犬語も猿語も喋れるのかねぇ』
『聞いたことないにゃ! とりあえず行ってみるにゃ!』
猫を掻き分け、猫を掻き分け、進んだ。中心部へ。
そこに檻に閉じ込めた人間がいるらしー。でも猫の群れが鬱陶しー。
『退くにゃ! お前ら』
『あっ、顔のでっかいマオ様だ。毛づくろいしていい?』
『後にゃ! 通すにゃ!』
『わーははは、顔のでっかいマオ様だ』
『ほんとにでかいわー』
『ちょーかわいい』
『いつ見ても可愛いオレンジ色ですこと』
『しっぽにじゃれていい?』
そんな猫の海を掻き分けて、ハァハァ言いながら進み続けて、
ミオにゃんとは遠く離れてしまって、人間を見るのは怖かったけど、
でも頑張って進み続けたら檻が見えて来た。
その前に白い猫の後ろ姿があった。ユキにゃんにゃ!
『ユキにゃんっ!』
『あ。マオ』
その向こうに、人間の姿が見えた。
いや……。これ、人間ちがう。
リッカやミっちゃんと同じ姿のものが、檻に閉じ込められて、悲しそうな顔をしていた。
これは人間じゃなくて、変わった種類の猫にゃ。
『人間を捕まえたんだ』
ユキにゃんが言った。
『ブリキが、ボクの作ったジェット噴射機とコンパクト・バズーカを使ってね』
『これ……人間にゃ……?』
ボクは思わず同じことを2回聞いた。
『これが、人間、にゃ!?』




