表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第四部 最終戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/129

【最終話】 未来へ

 元NKU総司令官、青江当麿がどうなったのかは、誰も知らない。

 松田さんとアズサちゃんを連れてどこかでNKUの復活を目論んでいるとも噂されている。


 どうしても猫のかわいさをわかってくれず、猫を敵視している人間は今でも多い。


 猫にお許しをもらって地上に住ませてもらうのではなく、人間の力で地上を支配したいと思っているのだ。


 じつは俺もその気持ちがわからないわけではない。

 マコトさんなんかも今でもコミューンにかわいい服屋さんをたくさん建設することを欲してる。ユキタローがけっして許さないが……。


 仕方なくマコトさんは自分で服を作り、コミューンの他の住人にも配っている。

 リッカもそれを手伝い、二人は結構仲良くなった。


 貨幣が存在しないので、コミューンでのやりとりは基本的に物々交換、あるいは善意での無償提供だ。


 政府も存在しないので無政府主義ということになる。コミューンにリーダーはいないので、各自がめいめいに、猫と共存しながら生きている。


 人間は自然のままには生きられない。自然を歪めなければ生きて行けないのが人間にとっての自然な姿なのだ。


 猫のようには運命に対して素直になれない。

 猫のようにはただ食って遊んで寝るだけでは物足りず、人生に意味を求めてしまう。


 しかしなんとか今は自然と共存して生きている。

 コミューン内で事件を起こすような人間も、今のところは一人もいない。

 猫がすぐ側にいて、心を癒やしてくれるからだろうか。


 俺たちは猫のように無邪気には生きられない。でも、猫の無邪気さを優しく受け入れることはできる。


 人類の未来がどうなって行くのかは誰にもわからないが、人間は人間らしく、罪も愛も両方抱えたまま、未来へ向かって歩いて行くしかないだろう。


 猫は何も物を持たない。生きていることに意味さえ求めない。俺たちにはそんなことはできない。俺たち人間は、新しいやり方で、未来を作っていくしかないだろう



 



「イーきにー」

「イーきにー」

「イーきにー!」


 コミューンに住む人間たちが、今日も猫の町の広場に集まって、猫語の挨拶の練習をしている。


「やぁ、人間様たち、イーきにー」


 マオがトコトコとそこへやって来て、ぺこりと頭を下げた。人間流の挨拶を覚えたようだ。


「マオくん、イーきにー!」

「マオたん、今日もかわいいね。イーきにー!」


 地球の支配者はずっとマオにやっていてほしい。その方がきっと人間の未来は明るい。


「ところで今日は何をして遊ぶだにゃん?」


 マオがわくわく顔でみんなに聞いたが、人間たちは申し訳なさそうにそれに答えた。


「今日は人間全員で発電機を作ろうってことになってるんだ」

「遊んでやれなくてごめんな」


 マオがしょぼんとなった。

 でも駄々をこねたりはしない。運命を受け入れたようだ。


「これで遊んでて、ね?」


 マコトさんがそう言って、でっかいボールを転がした。


「うにゃっ!」

 マオがそれに乗り、転がった。

「にゃはははは! これでビキにゃんと遊ぶだにゃん! ありがとうございます!」


 人間は以前から既に風力や太陽光を利用して発電していた。

 しかし人間の数が増えれば、これでは足りないだろう。

 いずれはもっと大掛かりな発電所を作らなければならなくなる。

 その時、猫との関係がどうなるか、それは今はまだわからない。





「早ク、子供ノ顔ヲ見セにオイデヨ」


 サンバさんがそう言って、おおきな口を開けて笑った。


 サンバさんは森の中で暮らしている。

 猫の町には馴染めないようだ。


 俺はリッカと二人で月に一度以上は必ず彼女に会いに来ている。

 最近あったことを話し合うのだが、サンバさんはいつも通りのことを言うだけで、俺たちも「マオがお腹を上に向けて昼寝してるのがかわいかった」とか、なんでもないようなことを報告するだけだ。


「……じゃ、ママ。そろそろ行くね」

「マタ帰ッてオイデネ、リッカ」


 リッカがサンバさんのおおきな背中に抱きつくと、サンバさんは嬉しそうにリッカの頬をペロリと舐めた。






 ユイは今日も白衣のポケットすべてに銃を入れて歩いている。

 ユキタローの検閲があるので、平和な銃ばかりだが……。


 俺とリッカが部屋でイチャイチャしていると必ずばん! と扉を開けて入って来る。

 前はいきなり攻撃して来たが、最近は涙目でいつも同じ台詞を言う。


「結婚制度なんてものはないのよ! だからさ、わたしにもちょっとぐらい、ミチタカちゃん分けてくれたっていいじゃない!?」


 俺はリッカと結婚した。


 太古の昔と違って、今の人間界にはユイの言う通り、結婚制度はない、基本的には。

 ただし橘家だけは例外だ。

 橘家の者と子を成す者は、それもまた橘家の一員となる。


 つまり──


 俺はこの国の王となってしまった。


「しつこいわね……」

 イチャつきを中断し、リッカがユイを睨む。

「ミチタカはもうわたしのものなのよ。奪おうとしないで、この泥棒猫」


「泥棒猫!?」

 ユイがクリーム銃をこっちに向けた。

「猫をバカにすんな! 猫の世界に泥棒はいないわよ!」


 このコミューンで最初の殺人事件が起こるとしたら、やはりこの二人の間で起こるのだろうか? リッカのためにも、俺がもっとはっきりしてやらなければ……。


 でも、間に猫がいてくれれば大丈夫だ。


 マオがいてくれれば、そののんびりとした、おおきな顔を見せてくれたら、どんな時でも俺たちはいがみ合うのがバカらしくなって、いつでも平和に笑わされてしまうんだ。




               (おわり)




挿絵(By みてみん)


笹門 優さまよりイラストをいただきました。




お読みいただき、ありがとうございましただにゃん!(=^・^=)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
行方不明のままか、アンチ猫派は。 いつか彼らとの全面対決があるのかも知れないなあ。 まあその時はネコ好きとネコ嫌いくらいに最小化した争いになっているかも知れないけど。 親猫派(おやねこじゃないよ、しん…
わー! 本当に終わってしまったー。 このままずうっと続けいて欲しかったような、複雑な気持ちですにゃんこ。
2024/11/29 20:28 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ