最終戦争 〜 人間の未来 〜
「……うん、そう。そこよ」
「えっと……。どうすればいいんだろう」
夜、俺の家へやって来たリッカと、俺は子作りを試みた。
「ああっ……? いたた……」
「痛いのか? やめようか?」
月明かりだけが射し込む闇の中、リッカの顔はよく見えないが、なんだかとても痛そうだ。
「……やめないで。大丈夫だから、続けて?」
「う……、うん。入れるよ?」
ばーん! と扉が開き、ユイが飛び込んできた。
「おどりゃ橘リッカ! ミチタカちゃんの子を産むのはわたしったい!」
白衣から銃を抜き出すと、俺たちに向かって発射してきた。
薄闇の中、真っ白なクリームが俺とリッカを包み込む。
「わーーっ!?」
「これ、何銃?」
「ただのクリーム銃ったい! ばってんおどれらのみっともない裸を隠してやるにはもってこいとよ!」
なぜか秦野ユイはいつの間にか九州弁を喋るようになった。
もしかしたらこれが彼女の『素』だったのかもしれない。
人類の最終戦争は、俺の子種を巡って戦う二人の女性の争いということになった。
(=^・^=) (=^・^=) (=^・^=) (=^・^=)
「人間ってめんどくさいよな。俺みたいにハーレムにすればいいのによ」
メロン畑で並んでメロンを食べながら、ビキが俺に言う。ビキは先日43匹目のメス猫を孕ませたそうだ。
ユキタローは猫語翻訳機を作って俺たち人間に配ってくれた。おかげでみんな猫と会話ができる。
「猫はいいよな。無邪気で……」
「いやぁ、人間だって無邪気だろ」
ビキがそう言いながら、その向こう隣で愛おしそうにメロンを食べるユカイを惚れ惚れするように見た。
((≡゜♀゜≡)) ((≡゜♀゜≡))
ブリキは毎日、人間のコミューンに遊びにやって来る。ただし、空からだが。
「ハッハッハー! おまえら米なんか育ててバカじゃねーのか!? 田んぼとやらを荒らしに俺様が来てやったぜ!」
みんな田植えをしながら、頭上を飛びわ回るブリキに手を振った。俺も汗を拭きながら、笑顔で手を振ってやった。
太陽はぽかぽかだ。いい田植え日和だ。
「コラーッ! 冗談じゃねェんだぞ!? 俺様がおまえらの大事な田んぼとやらをメチャメチャにしてやるんだからな! この、空も飛べねェでっかいサルどもが!」
いや、飛べる人間、一人だけ、いるんだよな。
海崎さんは手にみかんを持つと、ブーツの底に点火させ、ブリキのところへ飛んで行った。
「そんなことを言うやつにはお仕置きだ、ブリキ」
「わーっ! リョウジ! みかんは嫌だ! みかんだけはやめてくれ!」
どうやら猫は理想兵器よりもみかんのほうが怖いようだ。
(ΦωΦ) (ΦωΦ) (ΦωΦ)
さる……山田先輩とミオが、愛し合ってる。
丘の上で、先輩の膝に乗ったミオが喉をゴロゴロと鳴らしながら、ふたりで日なたぼっこをしながら──
「あたい、山田さんのお子が産みたいのやの」
「ダメだよ、ミオちゃん。君は人妻だ」
「人妻やけど、その前にひとりの爛れたメス猫やのうっふん」
「や……、やってみるかい? 人間と猫で、子どもが作れるか、どうか」
あんまり問題は起こしてほしくないが、たぶん大丈夫だ。
(=^・・^=)
ユキタローは相変わらずの人間嫌いだが、話が合うことも多いのか、たまにコミューンにお茶を飲みにやって来る。
相変わらず人間に技術指導みたいなことは頑なにしない。信用されてないこともあるが、めんどくさいというのが一番の理由のようだ。
猫の世界に大量生産という言葉はない。全てハンドメイドで作る。それも必要となってからようやく作り始めるから。ユキタローの仕事はとても遅い。
あのバリアの時のように、間に合わないものは最初から作らない。それが猫らしいんだと思う。それでいいんだと思う。
コユキもついて来て、猫本さんとじゃれ合っている。
「猫本のおじちゃん、またキャット六回転を教えてよ!」
「よし、コユキ。立派な忍者にしてやるでござる」
コユキはもう大人になった。
しかしなんだかまだ幼っちぃ。大人になった猫はふつう「ニャー」とは言わない。
「猫本のおじちゃん、大好きニャー」
子猫の頃から人間になついている猫だけは、大人になっても「ニャー」が語尾についてしまうようだ。
(=^・^=) (=^・^=)
マコトさんが自然分娩で男の子を産み、コミューンに新しい命が増えた。ちなみに海崎さんの子だ。
人間の自然分娩というのはとても珍しい。大抵はお腹の中にいる時に死んでしまうから、行う者も少ないと聞く。
さすがは強いマコトさんだ。
あるいは神が、少しは人間のことをお許しになったのだろうか。
(=^・・^=)
マオの子猫たちは大人になり、それぞれに離れて暮らしている。
たまにコミューンに遊びに来るが、挨拶をして魚をねだるぐらいで、すぐに帰って行く。
父親と違ってみんなしっかりしている。
元隊長の山原さんはよく子猫たちと一緒に自然の風景を眺めている。
晴れた日には遠くの山々を、夕暮れ時には燃えるように染まる空を。
あのパワハラ上司だったひとが、落ち着いたものだ。
たくさんの子猫たちに囲まれて、幸せそうに見える。




