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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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127/129

猫と人間のコミューン

 マオがホクホクしてる。


 嬉しそうだ。


 両手をいっぱいに広げて、次々とやって来る人間たちを歓迎した。


「いらっしゃいませにゃ! ボクが地球の支配者マオ・ウにゃ! 今日から毎日ここで一緒に遊ぶにゃ!」


「うわ……! 猫が喋ってる!」

「言葉、通じたんだ?」


 リッカのあの声明を聞いて、日本各地から人間が猫の町へやって来た。

 車で、徒歩で、ぞろぞろと人間がやって来る。みんな猫の歓迎を受けて、笑顔だった。


「よく見ると猫ってかわいいんだね」

「これからよろしく」


 そのほとんどは元NKU隊員だ。

 何しろ日本の人口の半分以上がNKUに所属してたからな。


 俺たちは猫の町の一角に人間のコミューンを作った。

 あくまでも自然と共存する形でというのを条件に、ユキタローに許可してもらったのだ。

 商業施設などはないが、雨風をしのげるだけの簡素な家を建てて、それぞれに住むことになった。

 畑は作ったが、たぶん今まで通り、カチカチのジャガイモぐらいしかできないだろう。神が人間に与えた罰だ。

 しかし新たに米を作れるようになった。どんな米になるのかは収穫してみないとわからないが……。


 NKUは解体された。


 さる……山田先輩、猫本さん、ユカイははるばる山を歩いて三日かけて辿り着いた。

 週に一個だけという条件で、猫のメロン畑からメロンをもらえるようになって、それでもユカイはホクホクだ。「今までは10年に一度出会えるかどうかもわからないメロンだったんだ。週一のお楽しみなんて贅沢すぎるぜ」と納得してくれている。


 太郎丸が猫を見てどうなるか心配だったが、すぐに仲良くなってくれた。

 むしろ猫たちのほうが犬を初めて見て怖がった。でもユキタローが犬語翻訳機を作ってくれると、たちまち仲良くなって、今では一緒にお昼寝とかしてる。


 青江総司令官がどうなったのかはわからない。


 あれから多数決で決議が取られ、NKUは解散することが決まった。

 大差というまでは行かなかったが、猫との共存への道に賛成してくれた人間のほうが多かった。


 決め手となったのは、橘分家からリッカのおばさんが現れて、リッカが本物の姫だと認めてくれたのだ。


 今、そのおばさんもコミューンにやって来て、一緒に住んでいる。

 優しそうなおばさんだった。

 どことなくリッカに似ていた。


 リッカは今はおばさんと住んでいるが、そのうちには俺と暮らしたいと言ってくれている。

 生田川マヤさんという40歳過ぎの色っぽい美女がコミューンに住み着いて、みんなはリッカよりもそのひとのほうに夢中だ。何よりリッカが日本一偉いお姫様だと知ったからか、みんな距離を置くようになった。


 橘家なんて、俺は知らなかった。NKUの総司令官が一番偉いんだと思ってた。だから俺にはピンときてないし、彼女との接し方も今まで通りだ。


 NKUが解散し、青江当麿はただの少年になった。そして行方不明だ。

 松田さんとアズサちゃんもどこでどうしているかわからない。


 秦野さんは──


「ミチタカちゃーん!」


 手を振りながら、今日も俺めがけて突進して来る。


「あのねっ? ユキタローちゃんとねっ? 相性診断装置、作ったのっ! 猫の科学力が交じってるから、とっっても高性能なのっ! 相性抜群だとこのハートが真っ赤に光るのよぉっ! 一緒にやってみない?」


 相変わらずいつも白衣でボサボサの青い頭だが、前よりも秦野さんはよく笑うようになった。笑顔の彼女はほんとうにかわいいと思う。


「あ……。それ、入国審査装置の応用で作ったんですね?」


「うんっ! そぉなのっ! わたしって天才でしょぉっ?」


 コミューンに住み着くには審査を行っている。

 猫と共存すると口では言いながら、何を企んでいる人間がいるかわからないからだ。

 だから入国希望者を選別するため、ユキタローが作った『入国審査装置』にかけ、心にやましいところがあると判明した者にはお帰りいただいている。


 人間と猫は仲良くなれた。


 しかし、人間のほんとうの敵は、人間なのかもしれない。


 猫のように、人間はそう簡単に仲良くなってはくれない。


 それぞれに主義があり、思想があり、それが相容れなければ、その間には争いが生まれてしまう。


 やはり人間とは、罪深い生き物なのか──


「ねぇ、早くっ! 相性診断しましょーよぉっ! ミチタカちゃあんっ!」


 しかし秦野さんのように、いとも容易く考え方を変えてくれる人もいる。


「ユイにゃん、あとでボクともそれで遊ぶだにゃん」

「うんっ! マオたん! しよーねえっ!」


 マオともすっかり仲良しだ。


 人間には、自分の進む道が間違っていたと知ったなら、それを変えていける力があると、俺は信じたい。……いや、信じている。


「もぉっ! ミチタカちゃん! さっきから何、一人でブツブツ言って誤魔化してるのぉっ? もしかして照れてるのぉっ? やろーよ、相性診断っ!」


 やってみた。


 ハートが赤々と点灯した。


「やったあっ! 相性抜群よ! じゃ、これからすぐに子作りしましょ!」


 たぶんこれ、罠だ……。


 人間って、やっぱり……




               (第三部完)






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― 新着の感想 ―
人間の身内いたんだ、リッカ。 ならそっちからでもNKU解体は働きかけられた様な気もするが(ΦωΦ)キュピーン
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