ボクらの最期 (マオ視点)
ぼくにゃん、猫にゃん。
超感覚って知ってるかにゃん?
ほくにゃん知らにゃいけど、どうやら猫にはそういうものがあるらしいんだにゃん。
トリ様がなんだか木の上で騒いでる。何かを感じているのだね。
猫もそんな感じで、何かを感じるんだにゃん。
アリ様がいつもより早足で急いでる。何かを感じているんだね。
ボクもそんな感じで、何かを感じるにゃ。
きっと明日も楽しい日々だにゃん。何も変わらないのが楽しいんだにゃん。一番だね! ──って、毎日思ってるんにゃけど……
でもそんな気が今日はしないんだにゃん。
何が起こるのかはちっともわからにゃいけれど──
たぶん、みっちゃんが言った通り、これからすぐにこの世が終わるんだね?
人間様たちはなんだか難しいことを言って騒いでるにゃ。
タイチョーさんが長毛種のオス人間に「支部に迎撃ミサイルを飛ばすよう指示しろ」って言って、「支部にはそんなものありませんよ」って答えられてる。意味はわかんにゃいけど、にゃんか絶望っぽい感じはわかる。だってボク、超感覚もちだから。エッヘン!
「マコトさん、海崎さん! どうにかできませんか!?」
そう言って、みっちゃんが必死に何かをなんとかしてくれようとしている。
ありがとうございます。
そのお気持ちだけで十分だにゃん。
ユキにゃんにどうしようもないことは、どうしようもないのだにゃん。
にゃっはっは。
『マオーーっ!!』
ビキにゃんが号泣しながら、ボクを抱きしめてきました。
『わかるよな? オレたちに危機が迫ってる! チクショーッ! どうにもしてやれねェ! オマエを守ってやりてェのに!』
ボクは答えました。
『ビキにゃん、大丈夫だにゃん。なにをするにもボクたち一緒だにゃん』
『マオちゃま、幸せね』
ミオにゃんがボクらを見上げて言いました。
『うっとりするのやの。最期がこんなに幸せの真っ最中で、いとをかし』
むこうでは長毛種のオス人間様とブリキにゃんが会話してる。
「ブリキ、おまえだけでも逃げろ! おまえは飛べるだろう! 災害範囲の外まで出られるからわからんが、あがいてくれ!」
「ありがとよ、リョウジ。でも、おまえはなんともないんだろ? 死ぬのは猫だけなんだろ? 猫がみんな死ぬんなら、俺だけ生き残るわけにはいかねェよ。俺だけ死ぬのは嫌だが、みんなで死ぬなら怖くねェ」
確かにブリキにゃんの言う通りだにゃん。
みんなでやることは楽しいことに決まってるにゃ!
『あっ』
『何か飛んで来るって……、あれか?』
ぶち猫さんと黒猫さんがいち早くそれに気づきました。
見ると、朝日の昇ってる方向から、キラリと光るものが空を飛んできていました。
他の猫たちも面白がって空を見てる。『何か来るらしいよ』そう言いながら、興味津々、好奇心。ウチの子猫が一匹、マコにゃんの胸に登ってって、くつろいでる。あそこは気持ちいいからにゃ……。マコにゃんはウチの子猫を抱きしめて、なんか泣いてるにゃ。ほっぺたスリスリされてるウチの子猫が羨ましい。
『ごめんね、マオちゃん!』
リッカが猫語でボクに謝ってくるけど意味がわかりません。
『ごめんね! ごめんね! あぁ……! 許してなんて、とても言えない!』
何かボク、リッカから謝られることされたっけにゃん?
キイィィィィン! って音が、どんどん大きくなってきました!
これは大変にゃ! 猫は大きな音が大嫌いにゃ!
みんな耳を塞いで、でもなんだかわからないものが飛んで来るのは珍しいので、好奇心をもって見つめました。
丘の上にみんなで立って、猫がみんな目をまん丸にして、みんなでその飛んで来るものを見つめました。
やがて──すぐに──
それがすぐ近くの大地に突き刺さると、とんでもない音がして、炎が上がり、それとともに青白い煙のようなものが、ボクらをぶわっ! と、包み込みました。
ふぎゃーっ!




