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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第一部 人間 vs 猫

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12/129

人間に出遭ったの? ふぅん? いつ? どこで? (マオ視点)

『ヌシぃ〜……』


 帰り道をトボトボ歩きながら、ボクは延々とその名を呟いていた。


『ヌシさん〜……』


『いい加減にもう諦めろよ!』

 ビキにゃんが厳しい声を出す。

『楽しみだったのはわかるけどよ!』


『会いたかったにゃ〜……』

 ボクは涙をこぼすと、聞いた。

『ところでなんで逃げたのにゃ?』


『ハァ!? お前、なんにも気づいてなかったの!?』


『なんにもにゃ』


『人間が出たんだよ! 見てなかったのか!』


『申し訳ないにゃ』

 ボクはぺこりと謝った。

『ボク……、何かに夢中になると、他のことなんにも見えなくなるにゃ。

これじゃいかん、これじゃいかん、これじゃまるで小猫だにゃんっていつも思ってるだけど……

治らないにゃ。楽しいことがあったらそっちばっかり見て……

たとえ人間が出ても……

え。

人間?

人間、出たのーーー!!?』


 ぷっ、とユキにゃんに優しく笑われた。


『お前、地球の支配者なんだからよ』

 ビキにゃんが呆れて言う。

『もうちっと緊張感、もて。そうだな……、ブリキぐらいによ』


『チッ』

 ブリキにゃんが舌打ちした。

『てめーに褒められても嬉しくもなんともねェ』


『アァ!? やんのか、ゴルァ!?』

『消されたいのか、ウスノロ』


『まぁまぁ』

 ユキにゃんが二匹の中に入ってなだめる。

『何事もなくてよかったよね? 誰も怪我しなかったのが一番だよ』


『ボクは何事かあったにゃ。ヌシさんにお会いできなかった……』

 そう言ったらまた涙が出て来た。


『チッ! この日和見ひよりみニャンコめ』 

 ブリキにゃんがユキにゃんに怖い顔をする。

『こっちが何事もなく、あっちに何事かありまくるのが一番だろうが。それが最高に決まってんだろ。

あーあ、ウスノロがもっと速く動いてくれてりゃ、人間二匹のうち一匹ぐらいは地獄送りにしてやれてたのによ』


『んだと!?』

『テメーを地獄送りにしてやろうか!?』


『まぁまぁ』

 ユキにゃんが足の裏の肉球から汗を流しながら笑う。


 本当にビキにゃんとブリキにゃんは仲が悪いにゃ。ボクはみんな大好きにゃのに。


 あ。でもやっぱり。ブリキにゃんのことはボクもよくわかんにゃいから、あんまり好きじゃない。



(=^・^=)  (=^・^=)



 町に帰るとあっちこっちでみんながお昼寝してる。広場では子猫が7匹、遊んでた。


『おう、そんじゃ、またな』

 ブリキにゃんはそう言うと、ヒュンヒュンと飛ぶようにどこかへ行った。すばしっこい猫にゃ。


 急にビキにゃんが震え出した。ボクと並んで歩きながら。


『どうしたにゃん? ビキにゃん』


『いや……。人間のこと思い出したら、恐ろしさがぶり返して来てよ……』


 どうやらブリキにゃんの側ではやせ我慢してたみたい。

人間なんか怖くなかったってフリしてたみたい。


『あいつら……。本当にバケモノだった』

 初めて見た人間の印象を語り出してくれました。

『あ、頭にしか、毛がなかった……。しかもメスのほうはそれが真っ赤だったんだぜ? 血の色みてェによ……』


『そうにゃん?』

 イメージできん。

『ボク、全然見てなかった』


『身体に毛がないんだぜ? しかもよ、下半身丸出しじゃねーんだ。あれ、うんちする時、どうすんだ?』


『しないんじゃない?』

 そうとしか考えられません。

『バケモノだから、しないんだよ、うんち』


『ヒィッ!』

 ビキにゃんが震え上がった。

『うんちしないなんて、やっぱ動物じゃないんだ! バケモノなんだ!』


『それじゃ、ボクはこれで』

 ユキにゃんがそう言いながら手を上げた。肉球がかわいい。


 ビキにゃんがボクにしがみついて来る。

『おい……。マオ、一緒にいてくれ。恐怖が収まるまで……。いいだろ?』


『あっ』

 ボクは前から来る美猫を見つけると、言った。

『マンローちゃんにゃ!』


 マンローちゃんはゴージャスな金色の毛を背中にもつ、メスの美猫にゃ。

しなしなっとした柔らかい動きで、お尻を振りながら、ウフフッと笑いながら歩いて来ると、言った。


『あうー』


『えっ!』

 ビキにゃんが怯えきってた顔を上げる。


 マンローちゃんはまた言った。

『あー、あう、あううー、うあー』


『さ』

 ビキにゃんの目が輝いた。

『さかりがついてるんだね!? マンローちゃん!』


『うっふん、あううー、あおうあおーぅ』


『種付けしてあげよう!』


 ビキにゃんが手を広げて飛んで行った。


 本当にビキにゃんは種付けが好きだ。もう町にはビキにゃんの子猫が31匹いる。


 ボクはほっといて先を歩いて行った。後ろでにゃっふん、にゃっふん言う声が聞こえ始めた。


 ヌシさんに会えなかった、ヌシさんに会いたい……。心はそのことばかりだった。


 また日を改めてヌシさんを釣りに行くにゃ! それ以外のことはどうでもよかった。人間のこととか。



『ン?』 


 なんか気配を感じて振り向くと、木の陰からメス猫が一匹、ボクのことを見つめてた。


 あ……。あいつ、ボクのストーカーにゃ。ストーカーの三毛猫にゃ。


 ボクが慌てて走り出すと、木の陰から飛び出して、ストーカーが追いかけて来た。


『待って! 待ってくだやい、マオちゃま!』


 そう言われたけど、待つものか。きもちわるい。


『待ってェ! 待つやよォ!』


 ヤバい。コイツもさかりついてる。


 悪いけどボクはそういうのに興味ないのにゃあ! ボクの子猫はまだ町に一匹もいないのにゃあ!


『待つやよォ〜! マオちゃまァ〜!』


『ひいいいい……!』



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― 新着の感想 ―
マオちゃんったら、まだまだお子さまね? 仔猫みたいというか、仔猫なんじゃないのかな? 三毛猫ちゃんはジャイ子系なのかラムちゃん系なのかが気になるところだ。
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