レーダーに反応あり (猫本つよし視点)
「あー! あー! あー! あー!」
花井くんがずーっとキ〇ガイのような声を出して悶えているでござる。
「メロンー! メロンー! ……あー、くそっ! あいつら今頃メロン食い放題でニコニコしてんだろーなー……。あー! あー!」
「仕方ないよ。僕らはお留守番だ」
山田副隊長はずっと体育座りをして壁を見つめているでござる。
「お土産のメロンを楽しみに待とう。それしかないよ、ウン」
真面目に仕事をしているのは拙者と太郎丸だけでござる。
拙者はせっせと掃除をし、太郎丸がちりとりや雑巾を持って来てくれる。賢いやつめ。
ふいに通信が入った。
《こちらヨコハマ支部。ヤマナシ支部、誰かいるか?》
太郎丸が送話ボタンを押し、「ワン!」と言った。
花井くんは廃人状態、副隊長はひきこもり状態ゆえ、拙者が応答するしかない。
「はい、こちらヤマナシ支部の猫本。何かあったのか?」
《今、こちらの上空を何かミサイルのようなものが通過して行った。トーキョー本部から何か聞いているか?》
「ミサイル……? いや、聞いてないが……」
《……じゃ、ただの実験かな? もしかしたら理想兵器が完成し、猫の町に向けて発射したものかと──》
──なんだって……?
急いでレーダーを確認すると、こちらへ向かって飛来するものの反応が、確かにあった。
何も報告などなかった。
──しかし、猫との友好を推し進めようとしているヤマナシ支部には知らせないだろう、もし、これがほんとうにあの理想兵器なのなら。
《あっ》
ヨコハマ支部からの無線の声が、喜びの声とともに教えてくれた。
《理想兵器だ! 今、トーキョー本部から連絡があり、理想兵器を発射したとのことだ!》
「まじでござるか!」
急いで隊長たちに知らせねば!
慌てて動いたのでゴミ箱につまづいて転びかけたが、キャット一回転で立ち直ると、大急ぎで連絡用の無線機を手に取った。
《やったぞ! これで猫は絶滅だ! 人類の時代の夜明けだ!》
ヨコハマ支部の隊員の通信機からの声を背後に聞きながら、拙者は猫の町に行っている隊長に報告をしたでござる。




