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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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緊急会議

「久しぶりね……。元気してた?」

「えぇ。轟さんは相変わらずね」


 マコトさんとリッカが再会の挨拶を交わすが……なんか雰囲気がギスギスしてる。女性同士って、どうしてこう、ふつうに会話してても危険なオーラを醸し出すんだろう。


 隊長命令で緊急会議が行われることになった。

 メンバーは人間側全員、猫からはマオ、ブリキ、コユキ、ユキタロー、サンバさんが出席した。


 月の昇る丘の上で円になって座り、俺たちは会議をした。


 マオが言う。「これはどういう遊びだにゃん?」


 わくわくしているマオに、真面目な話をするんだと伝えると、退屈そうにその場で横になった。薄目を開けて会議の内容を聞いてはいるようだ。側にミオがやって来て、四匹の子猫たちもやって来て、家族で団らんしはじめた。


「理想兵器ですって?」

 ユキタローが初めてその人類による猫絶滅計画の話を聞き、瞳孔を針のように細くした。

「やっぱり人間って、どうしようもない害虫ですね。……で? どうやって猫を絶滅させるおつもりなんです?」


「タマネギよ」

 マコトさんが答える。

「猫だけを死に追いやる物質として、タマネギを使うつもりなの」


「タマネギ……」

 ユキタローが深刻な顔つきになった。

「確かに……。それなら……」


「おいおいおいおい!」

 ブリキがしゃがれた声で言う。

「なんてこったよ! 俺は人間嫌いだが、人間を絶滅させようなんて思っちゃいなかったぜ? 人間てのは、どこまで極端な考え方すんだよ!?」


「すまん、ブリキ……」

 海崎さんが頭を下げた。

「私もここまでする気はなかったし……ほんとうにするとも思っていなかった。私はただ現状維持を望んでいただけだった」


「ごめんなさい!」

 マコトさんが顔を覆って、泣き出した。

「あたしが……総司令官に、タマネギのことを教えてしまったから……!」


「大丈夫、我々がなんとしてでも猫ちゃんたちを守ります」

 山原隊長が猫たちの顔を見回し、安心させるように言う。そして、俺たちにも言った。

「みんな! なんとしても、猫ちゃんたちを保護してあげるんだ!」


「保護だって……? 思い上がるな」

 ユキタローがぽつりと呟いた。


「ママ。バリアを作ろうよ」

 コユキが提案する。

「何か飛んでくるんでしょ? 防ごう」


「ウム。おそらくはタマネギの成分を使ったガスを搭載したミサイルがこの町に飛んでくる」

 山原隊長が腕組みをしながら、言った。

「おそらくは数日後……。早ければ二日、遅くとも五日後には」


 俺たちはみんな人間語で会議をしている。

 ブリキが欲しがるので新たに作ったらしく、ユキタロー作の人間語翻訳機は2台しかなかったのが3台になっていた。それをマオ、ブリキ、ユキタローがかぶっている。


 サンバさんは人間語がすべてはわからないのか、お腹を地面につけて毛づくろいをしている。


「そうだね、コユキ。バリアを作ろう」

 そう言いながら、ユキタローが立ち上がった。

「ところで言っておきますが……」

 俺たち人間を見回しながら、言う。

「その気になれば、ボク一匹だけでこの島国に棲息する人間を、絶滅させることだってできるんですよ? それをしないのは、害虫にも何らかの役割があるかもしれないと思っているからだし……」

 泣きそうな声になり、続けた。

「それに……、地球にたった二種類だけの知的生命体じゃないですか! 消しちゃったら寂しいじゃないですか! 同じ地球の仲間なのに……。それなのに、あなた方人間は、それをするんですね?」


 俺たちはみんな、黙ってしまうしかなかった。


「バリアを作ります。それで防ぎます。今日はもう、寝ましょう」


「明日から作りはじめるの!?」

 リッカがびっくりしたように声をあげた。

「急いだほうがいいんじゃ……」


「猫はのんびりです。急いで何かをするのがめんどくさいんです」

 ユキタローはあくびをすると、みんなに背を向けた。

「大丈夫です。その気になれば猫は凄いですから。みんなで協力して、バリアぐらい一瞬で作れますよ。おやすみなさい」



 ユキタローが去っていったのを嗅ぎつけると、マオががばっと起き上がった。

「もう、カイギとやらは終わったのかにゃんっ?」 

 そして楽しそうに、俺に言う。


「遊ぶにゃ! みっちゃん!」


 なんてこった──


 地球の支配者が、事の大きさを理解してない……。







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― 新着の感想 ―
そして、誰にも気づかれずいなくなったせいで、誰にも心配されないネコが…………。
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