サンバさん救出
猫とメロンに囲まれて、とろけそうになっていると、マコトさんがなんかズタボロになりながら駆け戻ってきた。
「ミチタカくん! 昼寝してる場合じゃないわよ!」
そしてマコトさんかみんなにそれを報告した。
「なにっ!? 車を盗られただとっ!?」
山原隊長が大声を出すと、周りの猫たちがびっくりして飛び上がった。
そして青江総司令官たちがどうやら理想兵器を完成させるようだという話に及ぶと、みんなが深刻な顔つきになる。
「とりあえず支部に連絡を取るんだ」
隊長が指示をする。
「もう1台の自動運転車をここへ寄越すように言え」
「あれは試作品ですよ」
海崎さんが横から言った。
「途中で故障して止まったら埒があきません」
そこへ猫たちが他のところからやって来て、ニャーニャーとマオに何かを報告した。
「にゃにっ!? 虎様が木の上に引っかかってるにゃとっ!?」
マオがそこそこ大きな声を出した。猫たちはびっくりしなかった。
「猫員が足りないんだにゃ? わかった、すぐにぞうさんに行くにゃ!」
増援とぞうさんを言い間違えたようだ。
しかし、虎──?
サンバさんが木の上に引っかかってるのか? なぜに──?
「みっちゃん!」
マオが俺を振り返り、言った。
「リッカが助けを求めてるにゃ! 一緒に行くにゃ!」
「えっ!?」
俺は思わず顔が笑ってしまった。
「リッカが……来てるのか!?」
(=^・^=) (=^・^=) (=^・^=)
マオとともに駆けつけると、白い麻のワンピースを着た、長い黒髪の、細身でおっぱいのない女の子が、こっちを向いた。
午後の陽射しの中、森に降り立った白い妖精のようだった。
「リッカ!」
俺は再会を喜び、すごい笑顔で近づいたが、彼女はどうやらそれどころではないようだ。
木の上を指さし、再会の挨拶も何もなく、泣きそうな声で俺に助けを求めている。
「ミチタカ! ママが……あんなとこに引っかかって……!」
見ると高い木の上に、黄色と黒と、そして青と赤が見えた。
サンバさんが、秦野さんのあの○パイダーマンに巻きつかれ、一緒になって木の上に引っかかっている。
数えきれないほどの猫が木を登り、助けようとしているが、猫の力では何匹いても救助不能で困っているらしい。
「よし……! 俺が行く!」
俺が行ってもどうなるかはわからなかったが、少なくとも猫百匹よりは自分のほうが力はあると思う。俺は頑張って木を登りはじめた。
近づくと、サンバさんは諦めたように笑っていた。
「ミチタカ……」
俺の姿を認めると、話しかけてくる。
「アンタとリッカとの子の顔ガ拝めなくテ、残念ヨ」
「諦めるな、サンバさん!」
俺は励まし、提案した。
「自力でそのスパイダ○マンから脱出することはできませんか? それさえ脱げたら、虎も猫の仲間。自力で降りることもできるでしょう?」
「何度モヤッタワヨ……。コレ、脱げナイノ。びっしり巻きついテテ……」
虎の太い爪で破ろうとしてみせるが、確かに破れない。それに姿勢に無理があり、力が入れられないようだ。
猫たちは頑張ってサンバさんの巨体を噛んで、引っ張って降ろそうとしている。
……いや、これじゃ無理だろ!
俺はマコトさんの作った猫語翻訳機を作動させると、猫たちに指示をした。
『自慢の爪を出して、あの青と赤のものを引っ掻くんだ! 引っ掻きまくるんだ! 君たちの細くて鋭い爪ならきっとズタズタにできる!』
『やるにゃ』
『やってみるにゃ』
『楽しそうにゃ!』
猫たちが高速の爪攻撃を繰り出すと、みるみる身代わり人形が切り裂かれはじめた。
サンバさんの身体にもたぶん爪は届いているが、厚い毛皮を纏っているからか、痛そうではない。
『もう一息だ! 引っ掻きまくれ!』
『ニャー!』
『楽しいニャ!』
『ズタズタにしてやるぅ〜!』
「モウ、大丈夫」
にこっと笑うと、サンバさんが自分の力で身代わり人形をバラバラに引き裂き、木の上から脱出した。
「ミチタカ!」
地上でリッカが笑いながら泣き叫んだ。
「ありがとう!」




