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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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ふつうの猫になります (ニャオウ様視点)

 朝から少しお腹の調子が悪かったこともあり、われはとぼとぼと草原を歩いておった。

 何よりわれを気落ちさせておったのは、もちろんマオとの勝負に遂に決着がついてしまったことであった。



 ふぅ……。


 われは、負けた……。


 完敗だ!



 マオ・ウがまさか、あの恐ろしい人間どもと懇意になっているとは……。


 なんておぞましい妖怪を味方につけたものか……。あの巨大な顔! あれを思い出すたびに身の毛がよだつ!


 もう……、我は地球の支配者にはなれぬのか……。


 儚い夢であったか……。


 まぁ、地球の支配者になれたところで、べつにふつうの猫と変わりがあるわけではない。

 特別美味しい魚が自分だけ食べられるわけでもなく、みんなと一緒に奪い合うことに変わりはないし、何より子猫たちには先に食べさせてやらねばならん。

 チヤホヤされるわけでもなく、ただ『顔、でかっ』といつでも褒めてもらえるだけのことだ。


 その褒め言葉が我は欲しかった……。


 すれ違う猫どもに『やぁ、ニャオウ。今日も顔でかいな』と言わせたかった……。


 しかし、夢は夢であったか……。


 もう、ぼく、ふつうの猫に戻ろうかな……。


 自分のことを『われ』とかいうのももうやめて、元通り『ぼく』っていうのに戻して……。


 この世に生を受けて四年。


 まだ四年ともいえるし、もう四年ともいえる──


 この四年間は何だったのだ……。


 地球の支配者になる夢を追って生きてきた。これからは一体何のために生きていけばいいのだ。


 まぁ、ふつうの猫になるなら、答えは簡単だよね。


 美味しいものを食べて、いっぱい遊んで、すやすや寝られればそれでいいもんね。


 うん! ぼく、決めた!


 ぼく、ふつうの猫になります!


 とぼとぼ歩いていた足が元気になった。

 もう黒王號もそのへんて脱ぎ捨てて、そうだ猫の町に帰ろう!


 そう思って笑顔で踵を返すと、背後から何やら見慣れぬものが近づいてきていた。


 巨大な何かだ……。あれは……?


 人間の乗り物ではないかッ!? 黒王號などより遥かにかっこいい……


 我は逃げた! ……しかし、回り込まれたッ!


 中から出てきた青いボサボサの短い毛を頭から生やした人間が、我を銃で撃った。


 うぅ……っ!?


 こ、これは……


 マタタビではないかッ!


 ぼく、ふにゃふにゃにとろけて、その場でゴロゴロしはじめちゃった。


 にゃ……、にゃ〜ん……。ゴロゴロ……。




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― 新着の感想 ―
ああ、捕縛されてしまった。 折角ステージ上で「僕、普通の男の子に戻ります!」って、キャンディーズばりに宣言したばかりなのに。
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