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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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帰還ッス! (中井アズサ視点)

 トーマちゃんの命令をヘッドフォンの中に聞き、相手に聞こえるわけもないのにウチは返事をしたッス。


「えぇ、わかったッス。らじゃーッス」


 すべて聞いてたッス。

 なんだかトーマちゃんより偉い人物が現れたらしいッスね。

 ウチは権力とかどーでもいいっていうか、権力を見たらかえってブチ壊してやりたくなるほうッスから、どーでもいいんスけど。

 でもまぁ、権力に弱いのは確かに大衆のサガッスよね。権力をからかって遊ぶくせに、その実権力に依存してるのが大衆ってやつッス。

 世論が親猫の方向に傾いたりしたら大変ッス。これは早急に理想兵器完成させてぶっ放すっきゃないッス。


 松田さんを見やると、まだメロンを食ってやがるッス。

 食欲底なしのブタみてーに笑顔でがっついてるッス。


「行くッスよ、松田さん。総司令官からの命令ッス」


「え〜? やだ。私、ずっとここでメロンと一緒にいたいですわ」


「……猫の作ったメロンッスよ? 猫なんかに囲まれた状況でよくそんな食欲起きるッスね?」


「んふふ……。私は破壊魔クラッシャー松田だもの。周囲の状況を頭の中で破壊クラッシュさせるなんて、わけもないことですわ」


「これからトーキョー本部へ帰還するぞって命令ッス」


「えっ!?」

 松田さんがようやくこっちを見た、気の触れたみたいな笑顔で。

「帰れるの!? ……じゃ、お土産にメロンいっぱい持って帰りたい!」


 そう言うと松田さん、着ている隊員服の前のジッパーを開けて、中にメロンを詰め込みはじめたッス。

 やっぱりこのひとアニマルッス。まるでリス科の動物みてーッス。頬袋いっぱいに木の実貯め込むリス科の動物ッス。


「いいわ。行きましょう!」


 立ち上がった松田さんの姿がきめーッス。上半身メロンのふくらみだらけで、おっぱいが百個ついてるみてーになっちまってるッス。


 ヤマナシ支部のやつらを見ると、みんなメロンと猫に夢中でヘラヘラ笑ってる……吐きそうなぐらいキモいわ。

 マコトっちの姿が見当たらなかったけど、気にせずウチは松田さんを連れて、総司令官がやって来る方向へむかって歩き出したッス。




 歩いてっと、前から車がやって来た。


「中井、松田、乗れ」


 トーマちゃんの顔が窓から覗いたッス。


 そこへ後方から聞き慣れた声が追っかけて来たッス。

「青江さま! どこへ行かれるのですか!?」


 振り返るとやっぱりマコっちっした。

 総司令官に顔で「どうするッス?」って聞くと、有難い答えが返って来たッス。


「……轟か。アイツは親猫派だ。乗せるな」


 それはつまり「殺れ」って意味ッスね? そう受け取り、ゾクゾク嬉しくなったッス。


「中井さん……」

 松田さんがウチにお願いをする。

「私、今、服の中がメロンだらけで動けませんの。……お任せしてもよろしいでしょうか?」


 言われるまでもねーッス。

 ウチは姿勢を低くすると、マコっちの足元めがけて滑り込んだッス。


 思った通り、マコっちの長い足の、重くて鋭い蹴りが飛んで来たけど、ウチはその下を潜り抜け、そこから一気に飛び上がり、首に巻きついたッス。そのまま両腕を足で縛ると、懐から取り出したチェーンをマコっちの首に巻きつけ──


 声も出せずにマコっちが苦しんでる。


 キヒヒ……、言っただろ? 接近戦ならウチはマコっちよりも強い。


 でもマコっちも同じトーキョー本部のエリート仲間ッス。このまま首の骨を砕いて殺してもいいッスけど、容赦はしてやるッス。


 よだれを流しながらケホケホ苦しんでるマコっちを見下し、言ってやったッス。

「これでマコっちとの戦歴、64戦32勝32敗ッスね」


 最近はウチのほうが勝ち越してたから負ける気はしなかったッス。お料理なんかにうつつを抜かしてる女に負けてたまっか。

 まぁ、ウチがもし負けても、マコっちとの戦歴64戦61勝3敗の破壊魔クラッシャーがいるから安心だったッスしね。


 苦しむマコっちを置き去りにして、車は走りだしたッス。


「あー……。トーキョーに帰って食べるメロンはどれほど美味しいかしら?」


 松田さんがうっとりしながらそんなことを呟いてるから、言ってやったッス。


「そんな生暖かいとこに入れてっと、熟れすぎてビチャビチャになるッスよ?」


 慌てたように服の中から松田さんがメロンをひとつずつ取り出して並べたッス。百個はあるッスね。


 メロンをまだ口にしてなかったトーマちゃんもさすがに手を出すかと思ったら、我慢してるッス。さすが総司令官。威厳を保ってるッス。


「それにしても実験に使う猫の生体が必要ッスよね。マコっちの報告を鵜呑みにして、実験もせずにタマネギを理想兵器の材料にして、実はガセだったなんてことになったらバカみたいッスからね」


 ウチが言うと、トーマちゃんは「わかってる」みたいに無言でうなずいたッス。


「……あれ?」

 ユイちゃんが声をあげたッス。

「……あれは、何?」


 ユイちゃんが指さすほうを見ると、草原を一匹、黒い馬のハリボテのようなものを腰につけて自分の足で歩いている灰色の何かが見えたッス。


「猫だ」

 トーマちゃんが言ったッス。

「捕まえろ」




 





 


 

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