世界はなんと幸せなことだろうにゃん (マオ視点)
ピンク色のしっぽを2つ頭から生やしている人間様に話しかけたにゃ。
「ええ、わかったっす」とか、なんか一人でぶつぶつ呟いてらっしゃるのが寂しそうだったので。
「お前様、メロンはうまいかにゃん?」
ニコニコしながら話しかけたのに、笑顔を返してくれにゃいどころか、無視されました……。
背中をこっちに向けたので、そこを両手でフミフミしてあげると、うるさそうに肘で退けられました。
寂しいにゃ……。
せっかく新しい人間のお友達ができると思ったのに、かまってくれたのはトーマくんだけにゃ!
そのトーマくんと遊ぼうと思って見回すと……あれ? トーマくん、どこにゃ?
体のおっきぃ、金色の長い毛を頭からくるくると生やしたメスの人間が、一心不乱にメロンを食べてるのをかわりに見つけました。
あの人間様はよほどメロンがお好きなのに違いにゃい。
きっと仲良くしてくれるにゃ!
そう思ってぼくにゃん、話しかけました。
「ねこ畑は気に入りましたかにゃん?」
話しかけてすぐに言い間違えたのに気づいたにゃ。
ねこ畑って何にゃ! メロン畑の間違いにゃ!
すると体のおっきぃ金色のくるくる毛のメス様は、鋭いお目々でボクを睨みながら、長いその足で蹴ろうとしてきて、寸前で止めてくれました。
「キモいことを言うなですわ! クソ猫さん!」
言い方はとても丁寧ですが、殺気がこもってらっしゃいます。
おかしい……。
このひとたち、猫と仲良くしに来てくれたんじゃないのかにゃ!?
みっちゃんを見ると、メロンをうまそうに食べながら、微笑んでる。すごく嬉しそうにゃ。
やっぱりみっちゃんを見てると安心するにゃ。
ぼくにゃん、みっちゃんにはなついてしまうにゃ。
好きにゃ。みっちゃんが、好きにゃ。
トコトコと前まで歩いていくと、ボクのことを大好きなものでも見るように笑って、言ってくれました。
「おぉ、マオ! やっぱ猫って、最高だな!」
ふふふ……。
人間様も最高にゃ。
新しいひとたちはちっとも仲良くしてくれにゃいけど……。
ミオにゃんがボクの隣にやって来ました。
ボクのほっぺたにほっぺたをくっつけて、スリスリしてきます。
「相変わらず仲いいなぁ、おまえら」
みっちゃんが笑ってくれました。
「おしどり夫婦ってやつだよな」
おし……どり……フーフー? ことばの意味がわからなかったけど、なんか褒められたのはわかったので、ウンウンうなずいてみせました。
『ウチら、ラヴラヴですのやの』
ミオにゃんが自慢します。
『子猫たちもウチらのラヴに包まれて、幸せのハッピーでいっぱいですやのよ』
たたっ! と駆け寄ってきた四匹のウチの子猫たちを見て、みっちゃんが驚いたように笑います。そして言いました。
「えっ……! その子猫たち、もしかして、マオの子!?」
「そうにゃ!」
ボクは両腕をいっぱいに広げて、踊りながら自慢しました。子猫を指さしながら──
「名前は左からイチ、ニイ、サン、シイにゃ!」
『違いますわよ、マオちゃま』
ミオにゃんに突っ込まれました。
『左からサン、イチ、シイ、ニイなの。……一匹も合ってませんやのやの……』
「にゃははは!」
ボクは笑ってごまかしたにゃ!
「ははは! もしかしてマオ、子どもの名前、間違えた?」
みっちゃんも笑ってくれました。
ミオにゃんの猫語はわからないはずにゃけど、ふいんきでバレたみたいにゃ!
みっちゃんが手を伸ばしてきて、ボクの頭を撫でてくれました。
このすっぽり包み込んでくれる人間様のてのひらのサイズ感が最高にゃ……。たまらないにゃ……。
ぼくにゃんたまらずゴロゴロと喉を鳴らしてしまいました。
続けてウチの子猫たちのことも、一匹ずつ撫でて、かまってやってくれました。
ミオにゃんは美人猫にゃ。
横からボクのほっぺをペロペロしてくれるにゃ。
子猫たちも元気に遊んでるし……
あぁ……
世界はなんと幸せなことだろうにゃん。




