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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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舐めんじゃないわよ (秦野ユイ視点)

「……舐めんじゃないわよ」


 わたしは落ち着いて、銃をひとつポケットから取りだすと、虎にむかって銃爪を引いた。


「ガアッ!?」


 虎がのけぞった。

 当たり前だ。


 この天才マッド・サイエンティスト秦野ユイ様の作った武器が、虎なんかに負けるわけがない。


 虎はくるくるとその場でしばらく歩き回ると、再びこちらを向き、相変わらずの怒りの表情を浮かべて突進してきた。

 なんで!? 象でも失神させる必殺のシビレ・ブラスターなのに!?


 次どれにしよう! どの銃だったらあの虎を止められる!?


 迷っているうちに虎があっという間に近づいてくる!


 あぁ……、しまったな……。


 わたしの武器はすべて銃だから、射撃の訓練は死ぬほどした。それしかしてこなかった。


 自分の動きのどんくささをカバーできるぐらい、せめて敏捷性も磨く訓練をしていれば、こんなところでこんな虎に食われることもなかっただろうのに……。


 そう思いながら走馬灯を頭の上で回していると、橘リッカの叫ぶ声が聞こえた。


「やめて、ママ!」


 しかしわたしは、虎に、押さえつけられ、目の前に、おおきな虎の顔を見せつけられながら、その顔がニイッと笑うのを見せつけられながら──あれ? 食われない……。


 虎が喋った。

「リッカに感謝しろ」


 そしてヨダレをボトボトと顔に垂らされるのを受けながら、わたしは失神──


 するかボケ!


 わたしはNKUトーキョー本部が誇る天才マッド・サイエンティスト秦野ユイだぞ! 舐めんなし!


 虎に前足で押さえられているとはいえ、手は動かせる。

 ポケットをまさぐり、手近なところから適当に銃を取りだすと、何万回と練習を重ねた自慢の射撃の腕で──っていうかこんな至近距離から外しようがない。わたしは虎の額へむけて、銃爪を引いた。


 赤と青の衣装に身を包んだスパ○ダーマンが飛び出した。


「しまった! 間違えた!」


 適当に取り出したのが間違いだった。これ、攻撃用のじゃなくて救出用身代わり人形(エアバッグ)銃だ!


 しかしス○イダーマンは虎を抱きかかえると、その巨体を遠くへ連れて飛んでいってくれた。結果オーライだ。少し遠くで木の上に引っかかるバサバサという音がして、虎はいなくなった。


 ひひ……。


 引き続き、橘リッカを殺すとしよう。


「わたしを……殺すの?」

 橘リッカはわたしとトーマちゃんを交互に睨むように見ながら、うろたえた声を出す。

「わたしさえ消せば……トーマくん、あなたが一番の権力者でいられるから?」


「私は日本で2番目の権力しかない」

 トーマちゃんが答えた。

「分家とはいえ、橘家は健在ではあるからな。……しかし、本家に生き残りがいたというのはまずい」


「だから、ここで消しておくのね?」


「悪く思うな」


「それを聞いて安心したわ」

 橘リッカがにこっと笑った。

 そして何やらへんなことばで周囲にむかって叫んだ。

「マオマオゲー! ミカラ、イーに、ミャオミャオミャオ!」


 降ってきた──


 空から猫の大群が、降ってきた!




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― 新着の感想 ―
お母さん、飛んでっちゃったけど、そっちはまるで気にした様子のないリッカたん。 クール!
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