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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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メロン旨いッス……でも (中井アズサ視点)

 猫のメロン畑に案内されたッス。


 畑っていうから、畑を想像してたけど、そこはただのブナ林の中だったッス。


 でも確かによく見ると、ブナのたもとから、緑色のヘタが伸びてて、まん丸なメロンがたくさん頭を覗かせてるわ。……なんだコレ。


 松田さんが犬みてーに駆けだして、早速メロンにかぶりついたッス。行儀の悪さをたしなめたけど、理性飛んでるわ、コレ。まぁ、このひと根はアニマルッスからね。


 ウチもまぁ、腹減ってたし、仕方なく口にしたッス。


 うまいッスね……。


 ふつうにうまいッス。


 でも……


 想像してみてほしいッス。

 たくさんのゴキブリに囲まれて食うメシがうまいと思いますか?


 どんだけ豪華でうまくて好物だったとしても、食欲なくすっしょ? フツー?


 たくさんの猫に囲まれて、ウチの食欲メーターは限りなくゼロに近かったッス。

 でも、夢中になったフリをして、食べ続けたッス。

 そうしながら、指示されていた仕事をしてたッス。


 トーマちゃんが隣にやって来て、小声でウチに聞いたッス。


「……どうだ? 秦野は? もう何匹か捕まえた頃か?」


 ヘッドフォンを通じて、ウチはユイちゃんの服についた無線機の音声を聞いてたんッス。

 アニマルな松田さんと違って、メロンなんかに仕事を忘れたりはしないッス。なんしろトーキョー本部のエリートッスからね。

 若いとバカにされがちなんで、余計に力入れて頑張ってるんッスよ、これでも。


 ヘッドフォンの中に、知らない女の声が聞こえて、ウチは首を傾げたッス。若い女の声ッス。……誰?


 その女とユイちゃんがなんか言い争ってるみたいッス。口汚く罵りあいはじめたッス。女同士の口喧嘩って怖いッスね……。


 ウチは総司令官に報告したッス。

「なんか知らない女、来てるみてーなんッスけど……」


「知らない女だと? 誰だ?」


「だから知らねーんですってば」

 ただ、気になることをその女が口にするのを聞いた。

「……でも、むこうはトーマちゃんのこと知ってるみたいッスよ?」


「なぜだ?」


「『トーマくんが来てるんでしょ?』って言ってます。その女が」


「こんな田舎に知り合いはいないはずだが……」

 総司令官も首を傾げたッス。

「……で、秦野は猫を捕まえたのか?」


「妨害されてるみたいッス」


「その女にか」


「激しく……。うわっ、汚ねー言葉飛ばし合ってるッス。聞いちゃいらんねー……」


「行って来る」

 総司令官が立ち上がって、背を向けたッス。

「山原たちの注意を引きつけておいてくれ」


「らじゃッス!」


 ブナの林の間を幽霊みてーに、総司令官が気配を消して、その場からいなくなったッス。




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― 新着の感想 ―
あ~、どっかでこの辺の伏線になりそうな言葉を見ていたような気がする(・_・;) ちゃんと覚えてないけど。
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