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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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猫殺したいけど捕まえる (秦野ユイ視点)

 来た……。


 トーマちゃんから指令を言い渡された。


【実験用に猫を何匹か捕まえろ。捕まえたらトーキョーへ帰るぞ】


 うふふ……。うふふふ……。


【殺してよし】じゃ、ないんだ?


 でも……、きっと捕まえた猫を、本部に持って帰ったら、なんらかの実験に使って殺すのね?


 ひひひ、ひひひひひひ!


 この指令はわたしだけに伝えられた。


 松田さんやアズサだと、捕まえる前に力技で殺してしまいかねないもんね。


 わたしなら、体技を何も身に着けていないこのわたしなら、殺さずに生け捕りにできる。


 まぁ、非力なわたしでも、蹴ったりすれば猫、死ぬかもしれないけどね。


 うひひひひひひひひひひ!


 ……問題はミチタカちゃんの目を盗んでやらないといけないことだわ。


 わたし、彼に嫌われたくない。


 あの子、猫のことが本気で好きみたいだから、猫をゴミ袋に詰めてるところなんか見られたら、きっと嫌われちゃう!


 他のひとの目はどうでもいいんだけどね。


 海崎さんにだって嫌われてもいい。


 だってわたしのこと「かわいい」って言ってくれたのはミチタカちゃんだけだから!


 どうしよう……。


 どうやって、ミチタカちゃんに見つからないように、猫を盗もう。


 彼から見えない場所でやればいいって?


 嫌よ! わたし、ずっと彼の見えるところにいたいんだもん!


 そんなことを考えていると、総司令官がみんなに言った。


「……やはりメロンが食べたくなった。畑とやらへみんなで行こう」

 そしてわたしに目配せをする。


 ……ナイス。


 トーマちゃん、ナイス!


 わたしは行かない。

 松田さんとアズサは、総司令官からあれだけ言われてたのに、しぶしぶなフリして喜んでる。

「メロンは食べるな。ふつうにうまいメロンらしい。骨抜きにされるぞ」って言われてたのに、どう見ても内心食べる気満々。


 わたしは行かない。


 メロンなんかより、楽しいことがあるのよ。


 メロンなんかに骨抜きにされるのは御免だわ。骨抜きにされるならミチタカちゃんにされたい。


 そのミチタカちゃんも、メロンに夢中なら、放っておいてあげるのに胸も痛まないしね。


 さぁ、何匹捕まえて、ゴミ袋に押し込めてやろうかしら。

 それをトーキョーに持って帰って、どんなふうに殺してやろうかしら。


 うふふ、うひひ、あはははは!




 みんな、行った、メロン畑へ──


 わたしもついて行くフリをして、すぐに木の陰に隠れた。


 誰も気づいてない、トーマちゃんを除いて。


 ……まぁ、元々影が薄いからだよね、有名なわりに、いなくなっても気づかれないわたしだから。


 ミチタカちゃんの後ろ姿が、林のむこうに消えた!


 好機到来!


 鬼の笑いを浮かべて振り返ると、猫がそこに3匹いた! 名前も紹介されてないようなモブ猫ばっかりだけど、構うもんか!


 わたしは銃を懐から取りだすと、そいつらを撃った。


「にゃ……」

「ニャア〜……」

「ゴロゴロスリスリ……」


 効いたわ、マタタビ銃。


 やつらがとろけてる隙に、捕まえて──素手で触るのはゴメンだから、手袋をはめて捕まえて──ゴミ袋に……



「……あなた、何をやってるの!?」


 聞き覚えのない声がして、わたしは後ろを振り向いた。


 誰だ、この女──?


 髪の長い、身体の細い、白い麻のワンピースを着た10歳代後半ぐらいの女が、そこに立っていた。




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