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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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101/129

猫の町視察

「ゴタゴタを起こすな」と青江総司令官が言ってくれた。


 海崎さんがブリキのことをちゃんとお仕置きしてくれたそうだ。どんなお仕置きかは知らないが……。



 よかった──


 せっかくの首脳会談がめちゃくちゃになるところだった。



「では、猫の町を視察して回るぞ」


 そう言いながら歩きだした総司令官の後を、俺は「はい!」と元気な声とともについて行った。


「にゃっ!」とマオが声をあげ、総司令官とはべつの方向へ駆けだした。

 見るとなんだか黒い馬のオモチャみたいなのに跨り、赤いマントを着けたブサかわいい灰色の猫がいる。マオが何やら親しげに話しかけていた。

 悪い目つきでこっちを睨んでたから、口を開けて笑いかけてやると、なぜだか怖じ気づいたように、慌てて逃げていった。

 まぁ、人間のことがまだ怖いんだろう。

 そのうちいつかは仲良くなろうな。



「ミチタカくん」

 隣を並んで歩くマコトさんが、小声で話しかけてきた。

「青江総司令官、何か企んでるわよ」


「えっ……? とてもフレンドリーじゃないですか。マオとも楽しそうに遊んでたし」


「顔では笑いながら、心の内では残酷なことを考えてらっしゃるのが青江当麿さまというお方なのよ」


「企んでる……って、何を?」


「わからない……。でも、不気味よ。あの総司令官が、猫ちゃんと楽しそうに遊んでただなんて」


「猫のかわいさをわかってくれたんじゃないんですか? きっとそうですよ」


「純粋無垢なのね……、ミチタカくんて」

 マコトさんが呆れたようにため息をつき、言った。

「なるほど秦野がメロメロになるわけだわ」


「えっ? 秦野さんが……何ですか?」


「……なんでもない。行くわよ」



(=^・^=) (=^・^=) (=^・^=)



 視察する……っていっても、ほんとうになんにもないんだよな。


 総司令官がマオについて、広い野原をただ歩き回っているのがちょっとバカ……じゃなくて可哀想に見えた。


 猫のひなたぼっこを視察し、猫が岩の上で会議をしているのを視察し、子猫が元気にじゃれ合ってるのを視察し、子猫がママのおっぱいを吸っているのを視察していると、ようやく太陽が真上に来た。


「昼食の時間ですな」

 山原隊長が言ってくれた。

「マオくんにお願いして、みんなでメロンをいただきませんか?」


 マコトさんがじゅるりと口元を拭う。

 俺も腹ペコだったので、勢いよく手を上げ、隊長に賛成した。


「メロンはいらん」

 青江総司令官が再びそう言い、俺たちをガッカリさせた。

「それよりも……猫の食事風景を見たい。やはり猫も、決まった時間に食事をするのか?」


 マコトさんが答えた。

「猫ちゃんはそれぞれに気まぐれで食事をします。誰かが魚を獲ってきた時などは集まってみんなで食事しますが……」


「そう! 猫は集まって食事する時、えらいんですよ」

 俺がマコトさんの話を引き継いだ。

「大人の猫はまず身を引いて、子猫に先に食べさせるんです。それで子猫の残したものを──」


「そうだ、轟」

 総司令官が俺の話を途中で遮った。

「この間の報告で、前回この町を訪問した時、猫に料理をふるまおうとして失敗したと言っていたな? あれはどういう失敗をしたのだ?」


「ああ……」

 マコトさんがくすっと笑い、それを教えた。

「ニジマスの南蛮漬けを作って、持って来てたんです。猫はお魚大好きだし、川魚を生で食べるっていうから、寄生虫のことを心配して、加熱調理済みのものを──」


「……で?」

 青江総司令官が尋ねた。

「何を失敗したのだ?」


「南蛮漬けにタマネギを乗せちゃってたんです」

 思い出して、マコトさんがくすくす笑う。


 「タマネギ? タマネギがどうしたのだ?」


「タマネギはね、猫ちゃんにとって、毒なんですって。タマネギを食べたら、猫ちゃんはうんちが止まらなくなって、死んじゃうんですって」


「な……んだと?」

 青江総司令官の無表情な顔に、驚きのようなものが浮かんだ。

「タマネギは、猫にとっては、毒なのか……。そうか」


 何かマコトさんが、総司令官に教えてはならないことを教えてしまった気がする……。




 


 


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― 新着の感想 ―
といっても、そのまま使ったら匂いでバレるだろうけど。 タマネギスプレーでも作るのかなあ?
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