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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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我はまた来た! (ニャ王さま視点)

 我はまた、来たッ!


 もちろん今度こそマオ・ウに勝利するためだッ!



 黒王號に跨り、己の足を動かして、シャカシャカシャカと歩き、猫の町に入ると、何やら様子がおかしい。

 いつもそのへんでダラダラと世間話をしておるオバサン猫どもがおらん。


 向こうに猫の群れが見えた。


 ……なんだ? 何やら町の猫どもが、ひとところに固まっておるようだ。


 巨大でとてもうまい魚でも捕まえたのであろうか?


 ムウ……、思わずヨダレが……


 興味なしッ!


 我は、マオ・ウとの勝負以外、一切興味なしッ!


 今日こそあやつに勝利し、地球の支配権をあのバカから奪うのだッ!



 なぜ、我が、地球の支配者になろうとしているの……だと?


 決まっておる!

 プライドである! 

 意地である! 

 承認欲求であるッ!


 我はただ、『地球の支配者ニャ王』の称号が欲しいだけなのだ!


 他には何も要らぬッ!


 今日はあの、顔を締めつける兜は脱いできた。

 お湯と水とに交互に浸し、可能な限りに顔をおおきくしてきた。


 猫の世界では顔のおおきさが権力なのだ。

 どれだけ中身がショボくとも、顔の最もおおきな猫がボスとなるものなのだ。


 今日の我は絶好調!

 過去最大の巨顔を誇るッ!


 さあッ! いざ行かん! 宿敵マオ・ウの元へ!


 審判はそのへんにおる猿や豚や羊にやらせる。

 公平な審判に、『勝者、ニャ王!』と決してもらうのだ!





 我の足が止まった。


 なんだ、あれは……。


 見たこともない、巨大な生物と、マオ・ウたちが会話らしきことをしている。


 その巨大なものどもは、頭だけに毛が生えており、猫のように二足歩行をする、げにおぞましき姿のものたちであった。


 帰ろうかな、怖い……


 臆するなッ!


 我は次代の地球の支配者、ニャ王さまであるぞッ! 怖いものなどあるかッ!


 全身の毛を逆立てながらも、好奇心の強さにも背中を押してもらい、シャカシャカと我が近づいていくと、マオ・ウがこちらに気がついて手を振ってくれた。

 たたっ! と駆け寄ってきてくれる。ウームなんだかこやつのアホ顔を見て、安心した。


『ニャ王さま! また遊びにきてくれたのかにゃん?』


『遊びに来たのではないわ! マオ・ウ、貴様との闘いに終止符を打ちに来たのだ!』


『難しいことはいいにゃ! ちょうど人間様たちも来てるにゃ! 一緒に遊ぶにゃ!』


 ……人間?


 人間て……、あの、けっして猫が近づいてはいけないという、あの、おそろしい妖怪のこと?


 我は猫のように二本足で立っている巨大なそのものたちを、改めて眺めた。


 聞いたことがある。


 人間とは、頭だけに毛を持ち、目が3つ、鼻が顔の真ん中とお腹にもあって、大きな口の中には尖った犬歯ばっかり並んでおり、その口をぱっかり開けて猫を食うものだと。

 身体から触手が何本も生えており、それに捕まったら猫の命はそこで終わるという──


 見たところ、そんな言い伝えの姿とは違っていたが、ここからメタモルフォーゼするのであろう。……うぅ、見たくない。


 人間のうち一匹が、我に気づいてこちらを向いた。


 口を開き、臼歯だらけの口内を見せて、我のほうへ近づいてきた。


 なんて──


 なんて巨大な顔だ!


 恐ろしい……ッ!


『うわああああああああ!!!』



 我は逃げ出した。

 黒王號に跨っていると走りにくいゆえ、捨てて逃げ出した。

 あんなに顔のおおきなものに勝てるわけがない!


 そんな恐ろしいものと一緒に遊べるというのか……、マオ・ウは?


 勝てるわけがない!


 我ごときが勝とうなどと思ったのが間違いであったッ!


 我が生涯にいっぺんも勝ち目なしッ!



 我はこの日をもって、地球の支配者の座を諦めた。





 

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― 新着の感想 ―
ああ、マオにゃんの友達が、もう遊びに来なくなってしまった!? ニャ王「人間コワい人間コワい人間コワい人間コワい人間コワい人間コワい人間コワい人間コワい」ブルブルブルブル
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