◆◆◆◆ 6-3 祈願 ◆◆◆◆
【 シジョウ 】
「陛下には、ご機嫌うるわしゅう――」
平伏したのは、宮廷に巣くう方士集団・十二佳仙の筆頭格、黄龍・シジョウである。
【 ヨスガ 】
「おお……誰かと思えばそなたか。来る場所を間違えたのではないかな? ここは東の宮ではないぞ」
楽器をいじりながら、そっけなく応じるヨスガ。
【 シジョウ 】
「はっ……たいへんご無沙汰し、汗顔の至りにて……」
*汗顔の至り……顔に汗をかくほど恥じ入る様子。
シジョウら十二佳仙がヨスガが居を構える西の宮を訪れることはめったにない。
その点を突かれ、シジョウは言葉もなかった。
【 ヨスガ 】
「まあ、そんなことはいい。我は忙しいのだ、さっさと用件を言ってもらおうか。……いささか弦が緩いようだな」
なおも楽器をいじくりつつ、ヨスガがうながす。
【 シジョウ 】
「はっ。陛下は、ただいま世を騒がせている噂をご存じでしょうか?」
【 ヨスガ 】
「さぁ、なんのことかな」
【 ミズキ 】
「――国母さまのことでしょうか?」
とぼけるヨスガに代わって、ミズキが口を挟む。
【 シジョウ 】
「ははっ……なにやら、よからぬ噂が広まっているようですが、我らも東の宮には入れず、まるで状況をつかめぬありさまにて……陛下はご存じでしょうか?」
【 ミズキ 】
「先ほど煌秘書官に尋ねたところでは、たいしたことはない……との答えでしたが」
【 シジョウ 】
「左様でしたか……しかしご不調であれば、我らが方術をもってご快癒に尽くしますものを、そのお声もかからず……」
【 ヨスガ 】
「ふむ……」
方士たちの用いる術には、病を癒すものも当然ある。
外丹と呼ばれる薬物を用いる場合もあり、皇太后がシジョウら十二佳仙を贔屓していたのは、それもあってのことのはずだが……
【 ヨスガ 】
「話は終わりか? それなら、さっさと下がるがいい。我は多忙ゆえな」
と、ヨスガが席を立ちかけるところへ、
【 シジョウ 】
「どうかお待ちを――方士たちを招き、国母さまのご快癒を祈るべく、祈願祭を開催させていただきたく――」
【 ヨスガ 】
「ほう……天下の十二佳仙だけでは不足と?」
【 シジョウ 】
「これも、国母さまの一刻も早いご回復のためでございまする。どうか、ご裁可を――」
【 ヨスガ 】
「――よかろう」
ミズキとチラリと視線を交わし、ヨスガは頷いてみせた。
【 ヨスガ 】
「そなたたち、せいぜい祈祷に励むがいい。それが本来の仕事なのだからな」
【 シジョウ 】
「ははっ……ではさっそく、取りかかりましょう――」
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