◆◆◆◆ 5-38 蛇と鴉 ◆◆◆◆
【 ウツセ 】
「――っ、陛下っ!」
血を吐いてうずくまったアグラニカに、悲痛な声をかけるウツセ。
放った呪術が破られかけていることで、呪いが反転し、己の身に帰ってきたのである。
【 アグラニカ 】
「なんの――まだ、まだっ……!」
口からこぼれた血をぬぐうアグラニカ。
【 ウツセ 】
「無理をしてはっ……!」
【 アグラニカ 】
「ふふっ……貴方の前で……無様は晒せません……!」
アグラニカは凄みのある笑みをうかべると、再び身構える――
【 シンセ 】
(このまま――一気に、押し切るっ……!)
全身が弾けそうなほどに集中し、部下たちの術を束ね、巨大な鴉へと注ぎ込み続けるシンセ。
そのまま、黒鳥が大蛇らを切り刻むかと見えたが――
【 大蛇 】
「――グゥアアアア……!」
【 シンセ 】
「なっ……!?」
シンセは目を疑った。
もっとも大きな蛇が、他の首を次々と食らいはじめたのだ。
自棄になったのかとも思われたが、
【 シンセ 】
(いや……違う! 共食いで、力を集めて……!)
【 大蛇 】
「グウウウウッ……!!」
すべての首を食らい尽くした蛇は、ひときわ巨大となり、大ガラスへと立ち向かってきた。
巨鳥と巨蛇は、しばしもつれ合い、絡み合い、相争っていたが、
――ブシャアアッ!
【 シンセ 】
「ぐっ!? う、ああっ……!」
突如、シンセの目、鼻、口、耳――ありとあらゆる穴から、一斉に鮮血が噴き出した――
【 シュレイ 】
「シンセ……!?」
黒衣を血に染めながら馬上に崩れ落ちるシンセの姿に、シュレイは絶句した。
のみならず、
【 神鴉兵たち 】
「――――っ」
黒衣の兵たちも次々と倒れ、術者を失った怪鳥は、ほどなく煙のごとく消え失せてしまった。
【 シュレイ 】
「――――っ」
そのまま、勢いづいた大蛇が茫然と立ち尽くした宙軍へ襲いかかる――かと思われたが、
【 ??? 】
「――“兀”――」
【 大蛇 】
「ガ――アッ……!?」
いずこからともなく飛来した巨大な剣が、大蛇の身をブスリと刺し貫いていた。
見る間に、大蛇もまた、もとの霞となって風に散っていく――
【 シュレイ 】
「――っ、見よ、森羅の呪いは破ったぞっ! 今こそ攻め立てよっ!」
シュレイは自らを奮い立たせ、声を励まして命を下した。
【 宙兵たち 】
「お……おおおおーーっ!!」
シュレイの命令一下、気を取り直した宙兵が一気に攻勢に出る。
【 森羅兵たち 】
「まさか……女王の術が敗れただと……!?」
【 森羅兵たち 】
「否、五分であろうっ……なんだ、あの剣はっ……!?」
【 ヴァンドーラ 】
「くっ……!」
思わぬ成り行きに動揺をきたし、浮き足立った森羅兵であったが、
【 ウツセ 】
「――森羅の強者たちよ、まだ負けてはおらぬ! 女王の加護を思い出すべし!」
【 森羅兵たち 】
「…………っ!」
【 ヴァンドーラ 】
「しかり――我らは森羅の勇士なり! 者ども、怯むなッ!」
【 森羅兵たち 】
「お――おおおっ!」
駆けつけたウツセの一喝で我に返り、どうにか態勢を立て直す。
その後、しばし交戦が続いたものの、両軍とも決め手がないまま時が過ぎ、互いに兵を退くにいたったのだった。
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