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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
89/421

◆◆◆◆ 5-34 密書 ◆◆◆◆


【 ヤクモ 】

「まずは一杯……と言いたいが、戒律があるのでしたかな」


【 ゾダイ 】

「よくご存じで……デスが、般若湯ハンニャトーならば、一杯くらいは頂戴いたしマス!」


 つまり、酒でない酒ならいいというような理屈らしい。

 そういうことなら……と、ヤクモは飛鷹の民が好む馬乳酒ばにゅうしゅを振る舞った。


【 ゾダイ 】

「ゴクゴク……おお……これは珍味デス! マコトにかたじけなく!」


 大いに喜ぶ姿に、ヤクモもつい頬をほころばせる。


【 ヤクモ 】

「ゾダイ殿は、ちゅうに来られていかほどに?」


【 ゾダイ 】

「さて、どれほどでしたか……もう四、五年にもなりましょう!」


【 ヤクモ 】

「よく〈銀劔関ぎんけんかん〉を抜けられたものですな」


 銀劔関とは、北方諸国と宙北部の間にある巨大な関塞かんさいであり、難攻不落として知られている。

 この銀劔関を通過せねば、北方から宙に入るのはほとんど不可能といっていい。


【 ゾダイ 】

「ハイ、法を尊ぶ者は各地におりマスので……おっと、これはどうか内密に……!」


【 ヤクモ 】

「なるほど。……銀劔関はショウという部将が守っているはずですが、お会いになりましたかな。私と同年代の男ですが」


【 ゾダイ 】

「あぁ……そういう方もおられたような……? とにかく、無事に抜けられました!」


【 ヤクモ 】

「ほう、左様で……苦労を重ねたご様子だ」


 ヤクモは頷きつつ、馬乳酒を飲み干した。


【 ヤクモ 】

「さて。……そろそろ、本当の用件をうかがおうか」


【 ゾダイ 】

「…………」


 尼僧ゾダイは口をつぐんだ。


【 ゾダイ 】

「……なぜ、お気づきに?」


【 ヤクモ 】

「なに、他愛のない話でな」


 ヤクモは微笑した。


【 ヤクモ 】

「ただの旅の僧にしては、身のこなしに隙がなさすぎる。聖職者ではあるのだろうが、それにしても――な」


【 ゾダイ 】

「…………」


【 ヤクモ 】

「なおいえば――銀劔関は、とうに“落ちている”。これは、宙のほとんどの者が知らぬことだが」


【 ゾダイ 】

「なんと……!?」


【 ヤクモ 】

「まぁ、それはいいとして……まことの用件をうかがおう、ゾダイ殿」


【 ゾダイ 】

「――お見それいたしました。そこまでお見通しならば、もはやごまかしもいたしますまい」


 ゾダイは一礼し、言葉遣いも改めると、懐から書状を取り出した。


【 ゾダイ 】

「拙僧が参上したのは、これをお渡しするためです」


【 ヤクモ 】

「これは――」


 送り主の名を見て、ヤクモは目を見開いた……

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