◆◆◆◆ 5-25 火花 ◆◆◆◆
宙軍のグンロウと南軍のドリュウ、容貌魁偉な豪傑ふたりが、各各の大刀と長矛を振りかざし、真正面からぶつかり合って火花を散らす――
――ガキャアアアアンッ!!
【 グンロウ 】
「ぬうっ……!」
【 ドリュウ 】
「ちいっ……!」
あまりの衝撃に、両騎そろって跳ね飛ばされ、高々と飛沫が噴き上がる。
【 両軍の兵 】
「おおおおっ……!!」
その迫力に、両軍あわせて十数万の兵がどよめく。
【 グンロウ 】
「この俺を弾くとはっ……小癪なっ!」
【 ドリュウ 】
「ただの、ただのウドの大木ではないらしいなっ……!」
双方、態勢を立て直すやいなや、お互いに身の丈ほどもある長大な武器を振り回し、敵目がけて再びまっしぐらに突撃する――
――ガキイイィィンッ!!
空を裂く鮮烈な一撃を受け止め合った両人が、鍔迫り合いの力比べで拮抗する。
【 グンロウ 】
「ぬううっ……少しはやるっ――夷狄風情がっ!」
*夷狄……外国人をおとしめた言い方。
渾身の力で押し込みつつ、グンロウが吼え立てる。
【 ドリュウ 】
「うぬっ……そちらこそ、軟弱な――軟弱な宙人にしては、やりおるっ!」
負けじと額に青筋をうかべて押し返しつつ、ドリュウが唸る。
【 グンロウ 】
「ぬおおおっ!」
【 ドリュウ 】
「おおおおおっ!」
獣めいた咆哮を放ちながら、双方が丁丁発止と打ち合い、切り結ぶ。
*咆哮……吠え、叫ぶこと。
――ガキィッ! ブォンッ! キイィンッ!
鉄塊が空を裂き、鋼が風邪を切り、気合が地を揺らす――
馬術においてはドリュウにやや分があると見えるが、グンロウの膂力たるや尋常なものではない。
*膂力……腕力の意。
【 グンロウ 】
「っ……!」
グンロウの兜が空高く弾き飛べば、
【 ドリュウ 】
「……くっ!」
ドリュウの肩当てが千切れ飛び、鮮血が舞い散る。
両騎の壮絶な一騎討ちは、いつ果てるとも知れなかった――
【 ヘイジ 】
「へええ、あのグンロウって人、なかなかやりますねぇ!」
【 ダイトウ 】
「うむ――見事なものだ」
【 ヘイジ 】
「すごい迫力だなぁ……まあ、師匠ほどじゃあないですけど!」
ヘイジは激闘に目を奪われつつも、
【 ヘイジ 】
「……でも、なんでどっちも、一騎討ちを見物してるんです? 合戦なんだから、軍勢同士でぶつかれば早いじゃないですか」
と、率直な感想をぶつけた。
【 ダイトウ 】
「それは――うむ、これも最初の総大将同士の問答と同様、一種の作法のようなものだな」
【 ヘイジ 】
「ははぁ……景気づけみたいなもんですか?」
【 ダイトウ 】
「そんなところだ。勝った側はそれだけで勢いがつくし、負けた側は意気阻喪する。ゆえに、手ごろなところで水が入ることも多い」
【 ダイトウ 】
「……もっとも、これは宙における作法であって、他国ではそうとも限らんがな」
【 ヘイジ 】
「ははぁ……おっ? なんだか動きが――」
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