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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
80/421

◆◆◆◆ 5-25 火花 ◆◆◆◆

 宙軍のグンロウと南軍のドリュウ、容貌魁偉ようぼうかいいな豪傑ふたりが、各各おのおのの大刀と長矛を振りかざし、真正面からぶつかり合って火花を散らす――


 ――ガキャアアアアンッ!!


【 グンロウ 】

「ぬうっ……!」


【 ドリュウ 】

「ちいっ……!」


 あまりの衝撃に、両騎そろって跳ね飛ばされ、高々と飛沫が噴き上がる。


【 両軍の兵 】

「おおおおっ……!!」


 その迫力に、両軍あわせて十数万の兵がどよめく。


【 グンロウ 】

「この俺を弾くとはっ……小癪こしゃくなっ!」


【 ドリュウ 】

「ただの、ただのウドの大木ではないらしいなっ……!」


 双方、態勢を立て直すやいなや、お互いに身の丈ほどもある長大な武器を振り回し、敵目がけて再びまっしぐらに突撃する――


 ――ガキイイィィンッ!!


 空を裂く鮮烈な一撃を受け止め合った両人が、鍔迫つばぜり合いの力比べで拮抗きっこうする。


【 グンロウ 】

「ぬううっ……少しはやるっ――夷狄いてき風情がっ!」

 *夷狄……外国人をおとしめた言い方。


 渾身の力で押し込みつつ、グンロウがえ立てる。


【 ドリュウ 】

「うぬっ……そちらこそ、軟弱な――軟弱な宙人ちゅうひとにしては、やりおるっ!」


 負けじと額に青筋をうかべて押し返しつつ、ドリュウが唸る。


【 グンロウ 】

「ぬおおおっ!」


【 ドリュウ 】

「おおおおおっ!」


 獣めいた咆哮ほうこうを放ちながら、双方が丁丁ちょうちょう発止はっしと打ち合い、切り結ぶ。

 *咆哮……吠え、叫ぶこと。


 ――ガキィッ! ブォンッ! キイィンッ!


 鉄塊が空を裂き、鋼が風邪を切り、気合が地を揺らす――

 馬術においてはドリュウにやや分があると見えるが、グンロウの膂力りょりょくたるや尋常なものではない。

 *膂力……腕力の意。


【 グンロウ 】

「っ……!」


 グンロウの兜が空高く弾き飛べば、


【 ドリュウ 】

「……くっ!」


 ドリュウの肩当てが千切れ飛び、鮮血が舞い散る。

 両騎の壮絶な一騎討ちは、いつ果てるとも知れなかった――




【 ヘイジ 】

「へええ、あのグンロウって人、なかなかやりますねぇ!」


【 ダイトウ 】

「うむ――見事なものだ」


【 ヘイジ 】

「すごい迫力だなぁ……まあ、師匠ほどじゃあないですけど!」


 ヘイジは激闘に目を奪われつつも、


【 ヘイジ 】

「……でも、なんでどっちも、一騎討ちを見物してるんです? 合戦なんだから、軍勢同士でぶつかれば早いじゃないですか」


 と、率直な感想をぶつけた。


【 ダイトウ 】

「それは――うむ、これも最初の総大将同士の問答と同様、一種の作法のようなものだな」


【 ヘイジ 】

「ははぁ……景気づけみたいなもんですか?」


【 ダイトウ 】

「そんなところだ。勝った側はそれだけで勢いがつくし、負けた側は意気阻喪いきそそうする。ゆえに、手ごろなところで水が入ることも多い」


【 ダイトウ 】

「……もっとも、これはちゅうにおける作法であって、他国ではそうとも限らんがな」


【 ヘイジ 】

「ははぁ……おっ? なんだか動きが――」

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