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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
52/421

◆◆◆◆ 4-14 軍略 ◆◆◆◆

【 侍従 】

「――レイ・グンムを征南せいなん将軍に任ずる。宰相を補佐し、賊を討ち滅ぼすべし――」


【 グンム 】

「はっ……このグンム、身命を賭して賊を平らげ、天下を安寧へと導きましょう」


 吉日晴天、グンムを将軍に任じる儀式がおこなわれた。

 黄金で彩られた甲冑や剣を授けられ、官軍を預かることとなったグンム。

 その数、実に十万……帝都の官軍の八割ほどに値する大軍である。

 これを五十万の軍と号して、南方への遠征を託されたのだ。


【 グンム 】

(……あれが、今の皇帝陛下か)


 グンムは玉座に腰を下ろした少女を見上げた。

 皇帝ヨスガはつまらなそうに視線を外し、落ち着かない様子で身じろぎしている。


【 グンム 】

(歌舞音曲に溺れてるって話だが……)


 グンムが皇帝を観察していると、御簾みすの向こうから声がかかった。


【 ランハ 】

「勝算はいかほどかしら、レイ将軍?」


【 グンム 】

「はっ――」


 皇太后からの問いに、威儀を正す。


【 グンム 】

「もとより天兵の征くところ敵はございませんが、なにがあるかわからぬのが戦場というもの。しかし……」


【 グンム 】

「両陛下のご信任ある限り、このグンム、必ずや勝利をもたらす所存でございます」


【 ランハ 】

「まあ、頼もしいこと! ちなみに、凱旋したあかつきには、どんな褒美を所望かしら?」


【 グンム 】

「それは――ただただ、ほどほどの領地と褒賞を授かれば、それだけで身に余る光栄に存じます」


【 ランハ 】

「あら、相変わらず欲のないこと……それでこそ、篤実のレイ公ね」


【 グンム 】

「恐れ入ります」


【 シジョウ 】

「――後学のため、将軍にお尋ねしたい。いかにして兵を進め、南寇を討つおつもりか?」


 そう問うたのはシジョウである。

 グンムはチラリとそちらを見て、


【 グンム 】

「さて、それはあちらの出方次第ゆえ、なんとも言えませんが……正面からぶつかって損害を出すのは、避けたいところではありますな」


【 シジョウ 】

「では、どのように――?」


【 グンム 】

「まずは一戦し、相手の勢いを確かめたのち、おもむろに兵を割いて縦横に動かし、攪乱かくらんする――と、いったところでしょう」


【 シジョウ 】

「ふむ、そして?」


【 グンム 】

「これまた賊の動き次第ではありますが……“南方を封じて”、しかるのちに“東方を制する”――といったことになりましょう」


【 ランハ 】

「――ふふ、なるほどね! 期待しているわ、レイ将軍――」


【 グンム 】

「はっ――」




【 ヨスガ 】

「あのグンムとやら……食えぬ男だな」


 儀式を終えた後、ヨスガはぽつりと呟いた。


【 ミズキ 】

「もともと、つかみどころのない御仁でしたが……ますます磨きがかかってきているようですね」


【 ホノカナ 】

「あの……どういうことなんですか?」


【 ヨスガ 】

「つまりだな、朝廷にとってはこのいくさ、勝ってほしいが、勝ちすぎてもらっても困る……ということだ」


【 ホノカナ 】

「えっ? でも、いくさなら、勝てばいいんじゃ……」


【 ヨスガ 】

「仮にラク宰相とグンムが、南寇に大勝し、滅亡させたとしよう。すると、どうなる?」


【 ホノカナ 】

「えっ、えっと……あっ!」


【 ヨスガ 】

「気づいたか」


【 ホノカナ 】

「その……前の二の舞になる、ってことですか?」


【 ヨスガ 】

「そういうことだ」


 数年前、朝廷はスイ・ヤクモに兵を与え、岳南がくなんの反乱を討たせた。

 ヤクモはこれを鎮圧したが、いろいろあって自立し、南方に割拠する独立勢力となってしまっている。


【 ヨスガ 】

「ヤクモを討ったとしても、宰相たちが入れ替わってしまっては意味がない。そういう意味で、勝ちすぎはよろしくないわけだ」


【 ミズキ 】

「とはいえ、勝たなければ……」


【 ヨスガ 】

「そう、さしあたり、森羅くらいは手に入れたいところであろう。“南方を封じて”“東方を制する”というのは、森羅は支配下に置いても、それ以上の戦果は求めない、ということだな」


【 ホノカナ 】

「は、ははぁ……」


 いくさなのに、勝ちすぎてはいけないなんて……と困惑を深めるホノカナ。

 ミズキの講義を受けて、少しは兵法というものを学びはしたが……実際の戦争は奇々怪々のようだ。


【 ミズキ 】

「しかし、レイ将軍はそう察しているようですが、宰相はどうなのでしょう?」


【 ヨスガ 】

「むろん、わかっておるさ。耄碌もうろくしていなければな。だが、あやつはわかったうえで、逆手に取る気かもしれぬ」


【 ミズキ 】

「では……自立を考えていると?」


【 ヨスガ 】

「ありえぬことではないな。グンムがそれに乗るかどうかはわからぬが……腹の読めぬ男ゆえな」


【 ランブ 】

「――レイ将軍に、お会いしてみますか」


【 ヨスガ 】

「ほう、ランブ、面識があるのか?」


【 ランブ 】

「はい。……将軍と父とは、旧知の仲でしたので」


【 ヨスガ 】

「ふむ……そうだったな」


【 ヨスガ 】

「しかし、こちらに呼び出すとなると、いろいろと面倒なことになりそうだ」


【 ランブ 】

「は。城外にて、ひそかに招かれるのがよろしいかと」


【 ヨスガ 】

「そうだな。では、ひとつ席を設けてもらうとするか」


【 ランブ 】

「承知いたしました」


【 ミズキ 】

「とはいえ、ヨスガさまが直接お会いするというのはさすがに……」


【 ヨスガ 】

「む……それならば……」


【 ミズキ 】

「そうですね……」


【 ホノカナ 】

「……えっ? ええっ?」


 一同から視線を向けられ、ホノカナは嫌な予感を覚えた……

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