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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
42/421

◆◆◆◆ 4-4 布石 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「――ええいっ! あの女狐め……やってくれるっ!!」


 皇太后との茶会を終え、自室に戻ってきたヨスガは、憤懣ふんまんやるかたない様子だった。

 *憤懣やるかたない……怒りが収まらない様子。


【 ミズキ 】

「……よもや、ホノカナのことをあそこまで把握されているとは……予想外でした」


【 ヨスガ 】

「ふん、驚くほどのことではあるまい。我に仕える宮女たちの中にも、あの御仁の息がかかっている者は少なくなかろうよ」


 ひとしきり怒りをぶつけると、ヨスガはすでに冷静さを取り戻していた。


【 ミズキ 】

「それらしき者を洗い出しますか?」


【 ヨスガ 】

「やめておけ。見つけて追い出したところで、どうせまた別の者を送り込まれるだけのことゆえな」


【 ホノカナ 】

「す、すみませんでした、わたしっ、なにも言えなくてっ――」


 申し訳なさそうに詫びるホノカナ。


【 ヨスガ 】

「謝るな。先ほどの件は我が悪い。そなたを連れて行ったのは悪手だった」


 素直に失策を認めるヨスガ。


【 ヨスガ 】

「いや、しかし、それほど悪い手でもなかったな」


【 ホノカナ 】

「……と、いうと?」


【 ヨスガ 】

「これはこれで、のちのち生きるかもしれぬ。良くも悪くも、皇太后陛下はそなたのことを認識したのだからな」


【 ホノカナ 】

「は、ははぁ……?」


【 ヨスガ 】

「これが布石ともなろう。妖狐め、後で目にもの見せてくれる……!」


【 ホノカナ 】

(……よかった、お元気そうで)


 転んでもただでは起きないヨスガの姿に、安堵を覚えるホノカナだった。


【 ヨスガ 】

「ああ、それと――」


【 ホノカナ 】

「はい?」


【 ヨスガ 】

「先ほど、欲しければ献上しましょう、煮るなり焼くなりなんなりと……などといろいろ言ったが……」


【 ヨスガ 】

「あれは方便である。真に受けるでないぞ」


 と、ヨスガは少し言い訳じみたことを口にする。


【 ホノカナ 】

「あっ……はい! それはわかってました。だって、ヨスガ姉さまにはわたしが必要なので!」


 顔をほころばせるホノカナ。


【 ヨスガ 】

「……はぁっ? 調子に乗るでないわ!」


【 ホノカナ 】

「ええっ!?」


【 ヨスガ 】

「利いた風な口を叩くでないぞ、このへなちょこ妹めが~~っ!」


【 ホノカナ 】

「ひゃはぁんっ!? そ、そんなところ、くすぐらないでくださいぃ~!?」


【 ミズキ 】

「…………」


 じゃれ合う少女たちを横目に眺めつつ、ミズキは思案していた。


【 ミズキ 】

(それにしても、あの御方のこと……ただの戯れとも思えないけれど)


 皇帝の周辺にも己の目が届いていることを示し、やんわりと威圧した――と、いったところだろうか。


【 ミズキ 】

(しかし、それだけかどうか――)


 なにか、別の思惑があったのではなかろうか……?


【 ヨスガ 】

「ほれほれ、小生意気な妹はここが弱かろうっ?」


【 ホノカナ 】

「えっ? あっ、そ、それ、くすぐった……きゃひぃん!?」


【 ミズキ 】

「…………」


 それはさておき、そろそろ止めねばなるまい、とミズキは思った。

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