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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
405/421

◆◆◆◆ 9-105 鶴風の戦い(54) ◆◆◆◆

【 ゼンキョク 】

「今こそ、わが職務を――」


 火の粉が届くほどの距離に達したところで、落花鬼手ことゼンキョクは一歩踏み出す。


【 タシギの成れの果て 】

『アッ……ガァッ……アアアァッ……!』


【 ゼンキョク 】

「――果たしましょう」


 ――――スッ。


 手にした処刑刀を、一閃して。


【 タシギの成れの果て 】

『…………ッ!』


 ――ふわり。


 花が、落ちるかのように。

 音もなく、首が胴から離れていた。


【 ゼンキョク 】

「――執行、つつがなく」


 その無機質な声が、かの者の耳に届いたか、どうか。




 ……………………


 …………


【 タシギ 】

(…………)


【 タシギ 】

(…………っ? こ……ここ……は……)


 タシギは、見知らぬ場所に横たわっていた。

 そこは、どこまでもうつろな、なにもない空間。

 先ほどまで己の身をさいなんでいた熱さや苦痛は、もはや感じない。


【 タシギ 】

(アタシは……死んだ、のかッ? ここ……が……冥府あのよって、ヤツかッ……?)


 周囲を見渡そうにも、指一本すらも動かせない。


【 タシギ 】

(……クソッ……クソがッ……こんな……こんなところでッ……このアタシが、終わり……なのかよッ……!)


【 タシギ 】

(まだ、殺せたッ……もっともっと、アタシはッ……思うままに、殺せたのにッ……!!)


【 ???? 】

「――――」


 ふと、視界になにか光るものが映った。


【 タシギ 】

(…………!)


【 光輝く存在 】

「――罪深き、者よ――」


 澄んだ声が、耳に入る。


【 タシギ 】

「な……なんだッ……てめェ……はッ……」


 かろうじて、声を絞り出す。


【 光輝く存在 】

「――私は、冥府の門番……貴方の罪を裁き、死後の罰を与える者――」


【 タシギ 】

「罰……だとッ……?」


【 冥府の門番 】

「――そう……貴方は、多くの人を殺めました――そう、とても、多くの人々を――」


【 冥府の門番 】

「――その罪は、償わねばなりません――」


【 タシギ 】

「…………ッ、どんな罰をッ……与えるって、いうんだッ……」


【 冥府の門番 】

「――貴方はこれより、地の底の、そのまた底……血に飢えた悪鬼あっきどもがうごめく、冥府魔道めいふまどうへと落ちるのです――」


【 タシギ 】

「――――っ」


【 冥府の門番 】

「――そこで貴方は、終わりなき殺し合いを続けねばなりません……死んでもすぐに生き返り、休むことは許されず、戦鬼どもと不毛な戦いを繰り返すのです……そう、ざっと千年ほどは――」


【 タシギ 】

「…………ッ」


【 冥府の門番 】

「――いささか、酷にすぎる罰かもしれませんが、これも魂を浄化するためのみそぎで――」


【 タシギ 】

「……ク……ククッ……ハハハッ! アッハハハッ!」


【 冥府の門番 】

「――――?」


【 タシギ 】

「永遠の殺し合い……だって? 最高じゃアないかッ! いくら殺したっていいんだろうッ? 極上だぜッ……!」


【 タシギ 】

「さァ、さっさと落としやがれッ……! 思う存分、殺して、殺して、殺しまくってやるよッ……!!」


【 冥府の門番 】

「…………」


【 冥府の門番 】

「――ケタッ……ケタ、ケタケタッ……」


【 タシギ 】

「――――っ?」


 突然、異様な笑い声をあげはじめた門番に、当惑する。


【 冥府の門番? 】

「面白い……思った以上に、とち狂ってやがるじゃあないか……ケタケタケタッ!」


【 タシギ 】

「てめェ――はッ――」


 輝いていた影が、ふいに、その姿を変貌させる。

 ばさりと翼を広げたのは、角の生えた異形の女――


【 角と翼を持つ女 】

「キロロッ……あたしは死神! 人呼んで催命翔鬼さいめいしょうき――」


【 催命翔鬼 】

「魂を冥府に運ぶのが仕事なんだけど――こんなイカれ果てた魂、浄めるなんてもったいないからさぁ!」


【 タシギ 】

「…………ッ」


【 催命翔鬼 】

「その救いようのないドグサレ魂、あたしが美味しく喰らってやるよっ! ケ~タケタケタァッッ!!」


 高笑いしながら、催命翔鬼はタシギに飛びかかり――


【 タシギ 】

「…………ッ!?」


 ガブッ! バクッ! ムシャアアァッ……!


【 タシギ 】

「ぎゃアアッ!? ぐがッ、ぎぃアアアアッ!? がッァァアアアアッ!!」


 肉を引き裂かれ、はらわたを引きずり出されて。

 生きたままむさぼり食われるという、想像を絶する苦痛を味わわされ、つんざくような絶叫がほとばしる。


【 催命翔鬼 】

「キロロッ……安心しなよっ、たっぷり堪能して、あたしの血と肉にしてやるからさぁ~っ! ムシャ……モグモグ……ゴキュッ……ズズゥ~~ッ……」


【 タシギ 】

「がッ……アッ……アアァッ……アアアアアアァァァァァ――――ッッ!!」


 ギン・タシギの断末魔の悲鳴は、誰に聞かれることもなく、現世と黄泉よみの狭間に消えていったのだった――

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