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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
403/421

◆◆◆◆ 9-103 鶴風の戦い(52) ◆◆◆◆

【 ランブ 】

「――っ! 陛下……!」


【 タシギの成れの果て 】

『出てきたかッ……クソ天子ッ……!』


【 ヨスガ 】

ギン司馬か――ずいぶんと、あさましい姿になり果てたものだな」


 洞窟の奥から姿を見せたヨスガが、変わり果てたタシギの姿を見て、眉をひそめる。


【 タシギの成れの果て 】

『あァ、てめェを……てめェらを……ブチ殺すためになッ……!』


【 ミズキ 】

「ヨスガさま――お下がりください」


 ミズキが、ヨスガを守るように前に出る。


【 タシギの成れの果て 】

『てめェもいたか、紅雪華こうせっかッ……!』


【 ミズキ 】

「あの状況からさらに生き返るとは……呆れた生命力ですね。それとも、誰かの差し金ですか?」


【 タシギの成れの果て 】

『四の五の、ゴチャゴチャとッ……オオッ……オオオッ!』


 咆哮ほうこうとともに、妖人の肢体が唸る。


【 ギョクレン 】

「ぐっ……! あ、あまり長い間はっ、封じていられないのでございますっ……!」


 ギョクレンが息を切らしている。

 かなり消耗しているらしい。


【 ランブ 】

「陛下っ……今のうちに、脱出をっ……!」


【 ヨスガ 】

「そうはいかぬ。我は、逃げるときは恥も外聞もなく逃げるが……今は、そのときではないゆえな」


【 ヨスガ 】

「ミズキ、空刀そらがたなで斬れるか?」


【 ミズキ 】

「さぁ、私も、邪念を捨てる自信はありませんが――」


【 ミズキ 】

「――しかし、やってみるとしましょう」


 一礼して、ミズキが異形のタシギと対峙する。


【 タシギの成れの果て 】

『…………ッ!』


【 ミズキ 】

「――今度こそ、ケリをつけさせてもらいます」


【 タシギの成れの果て 】

『抜かせェ……ッ!』


【 ギョクレン 】

「も……もう、限界で……ございますっ!」


【 タシギの成れの果て 】

『死ねェッ!』


 ――ドォンッ!


 ギョクレンの術が解けた瞬間、怒りに任せて、ミズキに襲いかかっていく。


【 ミズキ 】

「――――っ」


 両手、両足、さらに背中から生えた腕――といった人ならざる猛攻を、かろうじてかわしていく。


【 タシギの成れの果て 】

『ちいいッ、ちょこまかとォッ!』


【 ミズキ 】

「図体が大きくなったせいで、キレがなくなったようですね」


【 タシギの成れの果て 】

『ほざきやがれッ……!』


【 ミズキ 】

「――――っ」


 大きく、深呼吸する。

 燃拳豪仙ねんけんごうせんに指摘されたように、無駄な力を抜き、脱力する。


【 ミズキ 】

「今こそ、お見せしましょう――」


【 ミズキ 】

「――わが、明鏡止水めいきょうしすいの、境地を」

 *明鏡止水……曇りのない鏡、静止した水のごとく、心に邪念がなく澄み切った状態の意。


 立ち止まり、目を閉じる。

 今こそ、その心、無に至る――


【 タシギの成れの果て 】

『はァアアッ? 面白ェ……やれるものならッ、やってみろオッ!』


【 ミズキ 】

「――――っ」


 棒立ちになったミズキへ、妖異ミズキの爪が、牙が迫る――


【 ミズキ 】

「――と、思いましたが」


【 タシギの成れの果て 】

『――――ッ?』


【 ミズキ 】

「やはり、無理ですね」


 ――カチッ。


【 タシギの成れの果て 】

『……なッ!?』


 ――ドオオオオォンッ!!


【 タシギの成れの果て 】

『ぐッッがァあああァァァァッ!?』


 轟音とともに異形の足元から爆炎が立ち昇り、その身を包み込む――


【 エキセン 】

「クク……お見事っ……!」


 明鏡止水がどうこうと語るかたわら、エキセンから預かった爆薬を地面に仕掛けておいたのである。


【 ミズキ 】

「爆薬には――」


 燃えさかる元タシギを眺めながら、ミズキは汗ばんだ髪をかき上げる。


【 ミズキ 】

「――怨みも憎しみも、ありませんので」

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