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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
402/421

◆◆◆◆ 9-102 鶴風の戦い(51) ◆◆◆◆

 ――ドガァアッ!!


【 タシギの成れの果て 】

『ぐうッ!?』


【 ランブ 】

「――――っ?」


 突然、化生の者が声をあげて、背後に飛びすさった。


【 タシギの成れの果て 】

『なんだッ……てめェ、その、左手はッ……!?』


【 ランブ 】

「……っ、これはっ……」


 無意識のままに、彼女の僵尸きょうし化した左手が拳を握り、土手っ腹に一撃を食らわせていたのである。

 にもかかわらず、ランブには攻撃が跳ね返ってきていない。


【 ランブ 】

(どういうことだっ? 僵尸化した拳ならば、反射されないのかっ……?)


【 タシギの成れの果て 】

『てめェッ……!』


【 ランブ 】

「…………っ!」


 突進してくる相手に向かい、ランブは左の拳を握って、真っ向から打ち込む――


 ――ドカッ!


【 ランブ 】

「ぐおっ!?」


 ランブの巨体が、軽々と背後へ跳ね飛ばされていた。


【 屍冥幽姫 】

「ランブさんっ――!?」


【 ランブ 】

「ぐっ……! くうっ……」


 かろうじて転倒をまぬがれ、体勢を立て直す。

 先ほどと違い、今度はランブの打撃は跳ね返された。

 全力で繰り出した突きではなかったものの、それでも骨がきしむほどの威力である。


【 ランブ 】

(僵尸化していればいい、ということではないと……!?)


【 タシギの成れの果て 】

『ククッ……なんだ、さっきのはマグレかァ……? だったら、じっくりなぶり殺してやるよッ……!』


【 ランブ 】

「…………っ!」


 異形と化したタシギが、ランブに襲いかかる――


 ――ピタッ……


【 タシギの成れの果て 】

『……ぐッ!? な……なんだ……これはッ……!』


 巨躯の動きが、ぴたりと止まっている。

 あたかも、その場に縫いつけられたかのように。


【 ランブ 】

「これはっ……」


【 ???? 】

「――間に合ったようでございますね……!」


 空から、若々しい声が降ってきた。




 空中からひらりと地上に舞い降りてきたのは、


【 宝玲山の将 】

「おおっ、副軍師補佐っ!」


【 ランブ 】

「……っ、小幻魔しょうげんま殿っ……!」


【 ギョクレン 】

「遅くなって申し訳ないのでございます――小幻魔、セイ・ギョクレン、ただいま参上でございます!」


 方士ギョクレンであった。


【 タシギの成れの果て 】

『ググッ……てめェかッ……この、術はッ!』


【 ギョクレン 】

「覚えたての小手先技ですが……動きを封じるだけなら、上々でございますので!」


 〈獰鵬天聖どうほうてんせい〉の〈烏籠からすかごの陣〉を応用した術である。


【 ランブ 】

「小幻魔殿っ、この相手はっ……」


【 ギョクレン 】

「ええ、おおかたは承知しているのでございます――おそらく、あやつを守っているのは〈怨憎返報おんぞうへんぽう〉の術!」


【 ギョクレン 】

「すなわち、己に向けられた怨みや憎しみを、攻撃ごと跳ね返す邪法でございます……!」


【 ランブ 】

「怨みや、憎しみをっ……?」


 つまるところ、相手の敵意に反応して、攻撃を反射する――という仕組みであるらしい。

 だとすれば、先ほどランブの左手による打撃が通ったのは、彼女の意志によるものではなかったためであろう。

 左手に意志があるのなら、話は別だが。


【 ランブ 】

「ではっ……どうすれば、たおせるっ?」


【 ギョクレン 】

「あらゆる邪念を捨てた攻撃ならば、効果はありましょうがっ……容易ではないかと!」


【 ランブ 】

「――――っ」


 あらゆる敵意を断ち切りつつ、なおかつ、相手を殺す……

 そんな達人のごとき真似は、常人にはとうてい成しえないであろう。


【 タシギの成れの果て 】

『クククッ……やれるものかよッ……!』


【 ???? 】

「――たしかに、難しいことだ。人が人を殺すとき、何の感情も抱かないことなど、およそ不可能ゆえな」


 凛とした声が、その場に割り込んだ。

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