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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
401/421

◆◆◆◆ 9-101 鶴風の戦い(50) ◆◆◆◆

【 タシギの成れの果て 】

『グッククッ……アァハハァッ……!』


 自らは指一本動かすことなく、カズサらを血の海に沈めた妖人タシギは、返り血を舐めて高笑いをあげる。


【 宝玲山の将 】

「くそっ……なんだっ、あの化け物っ……!?」


 さしもの強者たちも、困惑を隠せない。


【 ランブ 】

「攻撃を跳ね返すだとっ……方術のたぐいかっ?」


【 屍冥幽姫 】

「お、恐らくはっ……邪法の一種かとっ……!」


 となれば、うかつに手を出すのは自殺行為――

 だが、このまま手をこまねいているわけにもいかない。


【 タシギの成れの果て 】

『……ククッ……クソ天子は、そこの洞穴に籠ってやがるなァッ……!』


 せせら笑いながら、タシギの成れの果てはじわじわと前進を開始する。


【 ランブの配下 】

「な、ナギ将軍っ……!」


【 ランブ 】

「――足止めして、時間を稼ぐっ! その間に、陛下を脱出させるのだっ!」


【 宝玲山の将 】

「おおっ……!」


【 タシギの成れの果て 】

『はァッ? させる……かよオッ……!』


 ――ドォンッ!


 タシギだったものが、地を蹴って洞窟の入口へ走りはじめる。


【 宝玲山の兵 】

「くっ……行かせるかっ!」


【 宝玲山の兵 】

「そうやすやすとっ!」


 そうはさせじと兵たちが立ち向かうが、


【 タシギの成れの果て 】

『邪魔だッ……!』


 ――ドカァッ!


【 宝玲山の兵 】

「うぐうっ!?」


【 宝玲山の兵 】

「ぐああっ!?」


 阻止せんとする兵たちを腕の一振りでたやすく蹴散らし、まっしぐらに洞窟へと向かう。


【 ランブ 】

「やらせんっ……!」


 ランブはその前に立ちはだかり、突進を受け止めにかかる。


【 タシギの成れの果て 】

『邪魔するなッ、デカブツがッ……!』


 ――ガキイッ!


【 ランブ 】

「ぬうっ……!」


【 タシギの成れの果て 】

『…………ッ!』


 斧刃を向けず、斧腹の部分でかろうじて受け止め、その足を止める。

 刃で傷を与えることで、跳ね返ってくるのを恐れたのだ。


【 タシギの成れの果て 】

『ククッ……双豪斧そうごうふ、だったかッ? たいした馬鹿力だなァッ……!』


【 ランブ 】

「陛下にはっ……指一本、触れさせはせんっ!」


【 タシギの成れの果て 】

『アァッハハッ! 結構な心がけだな――しかしッ!』


 ――ガブウッ! ブシャアッ!


【 ランブ 】

「ぐおっ!?」


 突如、血しぶきとランブの苦悶の声がほとばしる。


【 屍冥幽姫 】

「ランブさんっ!?」


 妖人の左右の翼が変形し、わにさながらの鋭い牙の生えたあごとなり、ランブに食らいついている……!


【 タシギの成れの果て 】

『アァッハハハッ! そォら、いつまで持ちこたえられるかなァッ……!』


 ランブに咬みついた牙が、肉を裂き、骨に達する……!


【 ランブ 】

「ぐっ……ぬううっ……これしきのっ……ことでっ!」


 失血と激痛で、意識が薄れかけてくる……


【 宝玲山の将 】

「ランブ殿っ!」


【 ランブ 】

「わ……私のことは、いいっ……それよりっ……陛下をっ!」


【 タシギの成れの果て 】

『クックク、涙ぐましいなァッ……! いいぜ、てめェの死体の前で、あのクソ天子を切り刻みながら、食らってやるよッ……!』


 ――ブシュウッ!


 さらに牙が深々とランブの身に食い込み、鮮血が噴き出す。


【 ランブ 】

「ぬっ、ぐううううっ……! させるっ……ものかっ……!」


 ランブがさらに押し込まれ、もはや支え切れないと思われた、そのとき――

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