◆◆◆◆ 4-2 招待 ◆◆◆◆
それから数日後のこと……
夜、例によってホノカナがミズキの部屋を訪れると、
【 ヨスガ 】
「~~~~っ……」
いかにも不機嫌そうに腕を組み、足をブラブラさせているヨスガがいた。
【 ホノカナ 】
(うわぁ、ものすごくご機嫌斜めっぽい……)
日中はごくふつうの様子だったのに……と思いつつ、ホノカナは挨拶もそこそこに、ミズキを待とうとするも、
【 ヨスガ 】
「――おい妹! 我がなにか言いたげなのは一目瞭然であろう! なぜ放っておく? なぜ問わぬっ!」
【 ホノカナ 】
(うわ、めんどくさ……)
とまではホノカナは思わなかったが、少々厄介だなと思いつつ、
【 ホノカナ 】
「す、すみません! 話しかけられたくないのかな~と思いまして……」
【 ヨスガ 】
「むむ……そうか。そう見えたのならば、それは我の落ち度であるな。許せ」
【 ホノカナ 】
「い、いえっ……」
こんなふうに、妙にものわかりのいい面もあるのだった。
【 ホノカナ 】
「それで、その……どうしてご機嫌がよろしくないんでしょう?」
【 ヨスガ 】
「原因はこれだ」
と、書状を投げてよこす。
達筆で記されていたのは、
【 ホノカナ 】
「これって……国母さまからっ?」
皇太后ランハからの、招待状であった。
【 ヨスガ 】
「そうだ。明日、茶会を開くゆえ、ぜひ来られたし――とさ」
【 ホノカナ 】
「えっ、でも、そんな予定は入ってなかったような……」
【 ヨスガ 】
「急な話だ。それも、ごくごく内輪だけの席らしい」
【 ホノカナ 】
「ははぁ……それが、そんなに嫌なのですか?」
【 ヨスガ 】
「そんなもの、嫌に決まっておるではないか!」
当然と言わんばかりのヨスガ。
【 ヨスガ 】
「そなたも、あの御仁に会ったことがあるのであろう?」
【 ホノカナ 】
「え、ええ……会った、というほどではないですけれど」
タイシンにくっついて平伏していただけで、直接言葉を交わしたわけでもない。
【 ヨスガ 】
「しかし、声くらいは聞いたであろう。どう思った?」
【 ホノカナ 】
「ええと、その……とても穏やかな雰囲気でしたけれど……」
【 ホノカナ 】
「でも、ちょっと怖いな~……って」
【 ヨスガ 】
「それよ」
うんうん、とヨスガはうなずいてみせる。
【 ヨスガ 】
「あの御仁、決して居丈高ではないし、傲慢というわけでもない。相手を威圧することもないし、見下したりすることもない」
【 ヨスガ 】
「だが――それでいて、どこか、恐ろしい。逆らってはならぬ、と否応なく感じてしまうのだ」
【 ホノカナ 】
「……なんとなく、わかります」
【 ヨスガ 】
「長年に渡って陰謀渦巻く宮廷を生き延びるには、あれくらいの器量が必要なのかもしれぬが……」
【 ヨスガ 】
「ともあれ、なるべく接したくはない相手だ。なにを仕掛けられるやら、わかったものではないからな」
【 ヨスガ 】
「まして我は今、昏君を演じておるからな。この聡明かつ仁徳あふれる本性を悟られず、さりとて相手の機嫌を損ねることもなく接する……というのは、容易ではないのだ」
【 ホノカナ 】
「な、なるほど……」
たしかに、難題ではあるようだった。
【 ホノカナ 】
「こういうお誘いは、たまには……?」
【 ヨスガ 】
「いや、即位してからは一度もない。ただの気まぐれならばよいのだが……」
【 ミズキ 】
「――底の知れない御方ではあります」
いつの間にか入ってきていたミズキが、お茶を出しながら。
【 ミズキ 】
「過大評価してはならず、さりとて過小評価も決してすべきではない……まことに、やりにくい相手と言えましょう」
【 ヨスガ 】
「まったくだ。……というわけだから、ホノカナ、そなたも来い!」
【 ホノカナ 】
「ええっ!?」
突然のご指名に、ホノカナは仰天した。
【 ホノカナ 】
「で、でも、わたしみたいな小者が、そんなっ……」
【 ヨスガ 】
「従者は二人ほどで、と指定されておる。ミズキは外せぬゆえ、あとはそなたしかおるまい」
【 ヨスガ 】
「ランブを連れて行くのは物々しいし、セイレンは……あやつ、なにか余計なことを口走って、面倒事を引き起こしかねぬからな」
【 ホノカナ 】
「…………」
その懸念はもっともだ、とホノカナは思った。
【 ヨスガ 】
「とにかく、そういう次第だ。我と同じく、不安な夜をすごすがいい!」
【 ホノカナ 】
「ええー……」
姉というのはこんなに横暴なものなのだろうか、いやわたしはここまでではないはず……と思うホノカナなのだった。
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