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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
40/421

◆◆◆◆ 4-2 招待 ◆◆◆◆

 それから数日後のこと……

 夜、例によってホノカナがミズキの部屋を訪れると、


【 ヨスガ 】

「~~~~っ……」


 いかにも不機嫌そうに腕を組み、足をブラブラさせているヨスガがいた。


【 ホノカナ 】

(うわぁ、ものすごくご機嫌斜めっぽい……)


 日中はごくふつうの様子だったのに……と思いつつ、ホノカナは挨拶もそこそこに、ミズキを待とうとするも、


【 ヨスガ 】

「――おい妹! 我がなにか言いたげなのは一目瞭然であろう! なぜ放っておく? なぜ問わぬっ!」


【 ホノカナ 】

(うわ、めんどくさ……)


 とまではホノカナは思わなかったが、少々厄介だなと思いつつ、


【 ホノカナ 】

「す、すみません! 話しかけられたくないのかな~と思いまして……」


【 ヨスガ 】

「むむ……そうか。そう見えたのならば、それは我の落ち度であるな。許せ」


【 ホノカナ 】

「い、いえっ……」


 こんなふうに、妙にものわかりのいい面もあるのだった。


【 ホノカナ 】

「それで、その……どうしてご機嫌がよろしくないんでしょう?」


【 ヨスガ 】

「原因はこれだ」


 と、書状を投げてよこす。

 達筆で記されていたのは、


【 ホノカナ 】

「これって……国母さまからっ?」


 皇太后ランハからの、招待状であった。


【 ヨスガ 】

「そうだ。明日、茶会を開くゆえ、ぜひ来られたし――とさ」


【 ホノカナ 】

「えっ、でも、そんな予定は入ってなかったような……」


【 ヨスガ 】

「急な話だ。それも、ごくごく内輪だけの席らしい」


【 ホノカナ 】

「ははぁ……それが、そんなに嫌なのですか?」


【 ヨスガ 】

「そんなもの、嫌に決まっておるではないか!」


 当然と言わんばかりのヨスガ。


【 ヨスガ 】

「そなたも、あの御仁に会ったことがあるのであろう?」


【 ホノカナ 】

「え、ええ……会った、というほどではないですけれど」


 タイシンにくっついて平伏していただけで、直接言葉を交わしたわけでもない。


【 ヨスガ 】

「しかし、声くらいは聞いたであろう。どう思った?」


【 ホノカナ 】

「ええと、その……とても穏やかな雰囲気でしたけれど……」


【 ホノカナ 】

「でも、ちょっと怖いな~……って」


【 ヨスガ 】

「それよ」


 うんうん、とヨスガはうなずいてみせる。


【 ヨスガ 】

「あの御仁、決して居丈高ではないし、傲慢というわけでもない。相手を威圧することもないし、見下したりすることもない」


【 ヨスガ 】

「だが――それでいて、どこか、恐ろしい。逆らってはならぬ、と否応なく感じてしまうのだ」


【 ホノカナ 】

「……なんとなく、わかります」


【 ヨスガ 】

「長年に渡って陰謀渦巻く宮廷を生き延びるには、あれくらいの器量が必要なのかもしれぬが……」


【 ヨスガ 】

「ともあれ、なるべく接したくはない相手だ。なにを仕掛けられるやら、わかったものではないからな」


【 ヨスガ 】

「まして我は今、昏君ばかとのを演じておるからな。この聡明かつ仁徳あふれる本性を悟られず、さりとて相手の機嫌を損ねることもなく接する……というのは、容易ではないのだ」


【 ホノカナ 】

「な、なるほど……」


 たしかに、難題ではあるようだった。


【 ホノカナ 】

「こういうお誘いは、たまには……?」


【 ヨスガ 】

「いや、即位してからは一度もない。ただの気まぐれならばよいのだが……」


【 ミズキ 】

「――底の知れない御方ではあります」


 いつの間にか入ってきていたミズキが、お茶を出しながら。


【 ミズキ 】

「過大評価してはならず、さりとて過小評価も決してすべきではない……まことに、やりにくい相手と言えましょう」


【 ヨスガ 】

「まったくだ。……というわけだから、ホノカナ、そなたも来い!」


【 ホノカナ 】

「ええっ!?」


 突然のご指名に、ホノカナは仰天した。


【 ホノカナ 】

「で、でも、わたしみたいな小者が、そんなっ……」


【 ヨスガ 】

「従者は二人ほどで、と指定されておる。ミズキは外せぬゆえ、あとはそなたしかおるまい」


【 ヨスガ 】

「ランブを連れて行くのは物々しいし、セイレンは……あやつ、なにか余計なことを口走って、面倒事を引き起こしかねぬからな」


【 ホノカナ 】

「…………」


 その懸念はもっともだ、とホノカナは思った。


【 ヨスガ 】

「とにかく、そういう次第だ。我と同じく、不安な夜をすごすがいい!」


【 ホノカナ 】

「ええー……」


 姉というのはこんなに横暴なものなのだろうか、いやわたしはここまでではないはず……と思うホノカナなのだった。

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