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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
395/421

◆◆◆◆ 9-95 鶴風の戦い(44) ◆◆◆◆

 タイザンの射放った矢が、背後からランブに迫る――


 ――ドスッ!


【 ランブ 】

「……ぐうっ!」


 苦悶の声が響く。


【 ランブの配下 】

ナギ将軍っ!?」


 やったか――と思われたが、


【 ランブ 】

「……っ、くうっ……!」


【 タイザン 】

「――っ!? まさかっ!?」


 ランブの脇腹を貫こうとした矢は、とっさに左手で受け止められていたのである。

 矢は見えていなかったにもかかわらず、あたかも左手が勝手に動いたかのようだった。


【 タイザン 】

「くっ……!」


 さらに矢をつがえんとするタイザンだったが、


【 カズサ 】

「よくもっ――大姐おねえさまをっ!」


【 タイザン 】

「――――っ!」


 怒気もあらわに、カズサが襲いかかる。

 とっさに身をひねってかわそうとするも、一歩遅く――


【 カズサ 】

「はぁあああっ!」


 ドシュッ! ザクウッ!


 左右の剣がきらめき、タイザンの胴を切り裂く……!


【 タイザン 】

「ぐっ……ううっ!」


【 飛鷹の兵 】

「タイザン様っ……!」


 ――ドシャッ!


 カズサの連続斬撃を受け、血煙を放ちながらタイザンは落馬していった――




【 ランブ 】

「陛下っ! よくぞご無事でっ……!」


【 カズサ 】

「お待たせしましたっ……!」


【 ヨスガ 】

「うむ――」


 乱戦の中、ヨスガらはランブたちとの合流を果たしていた。


【 ランブ 】

「陛下っ、エイ将軍は――」


【 ミズキ 】

「…………っ」


【 ヨスガ 】

「……話は、後だ! まずはこの場を切り抜けるっ! 敵陣が乱れているあいだに、突破するぞ!」


【 一同 】

『ははっ……!!』


 ヨスガらは一塊ひとかたまりとなって、右往左往する飛鷹兵らの中を切り進んでいった――




 日没が、迫っている。


【 ウツセ 】

「タイザン殿っ! ご無事ですかっ……!」


 馬から降りたウツセが、タイザンの元へ駆け寄る。


【 タイザン 】

「……っ、なんの……これしきっ……くぅっ……」


 応急手当を受けて寝かされていたタイザンは、身を起こして呻き声をこぼす。


【 タイザン 】

「……鎖帷子くさりかたびらを着こんでいただけ、まだ良かったようですっ……」


 飛鷹の戦士はもっぱら軽装だが、タイザンはちゅうの流儀を好むことから、鎖帷子を着込んでいた。

 おかげで、致命傷はまぬがれたのである。

 浅傷あさでとは言えないが、命にかかわるわけでもないようで、ウツセは胸を撫でおろす。


【 タイザン 】

「それよりっ……敵は……?」


【 ウツセ 】

「……逃げられました」


 そう告げるウツセの視線の先には、鬱蒼うっそうとした草深い山が見える。


【 飛鷹の兵 】

「おのれっ……宙人ちゅうひとどもめ、卑劣な真似をっ!」


【 飛鷹の兵 】

シン将軍っ! 今すぐ、追撃命令をっ!」


 味方に偽装した敵に背後を衝かれ、一杯食わされたことで、飛鷹の兵たちは息巻いている。


【 ウツセ 】

「――いや、待て。敵は山中に身を潜めた。いかに飛鷹騎兵が精強でも、十分には力を発揮できぬ」


【 飛鷹の兵 】

「しかしっ……!」


【 ウツセ 】

「彼らの行く先はわかっている。……ひとまず馬を休め、しかるのち、追い討ちをかける!」


【 飛鷹の兵たち 】

『……おおっ……!』


【 飛鷹の兵たち 】

『…………っ』


 兵の半ばは同意の声を上げたものの、残りの者たちは不服そうな態度を隠さない。


【 タイザン 】

「……シン将軍の言葉は、正しいっ……皆、軽はずみな行動はっ……慎めっ……!」


 手負いのタイザンが声を張り上げる。


【 飛鷹の兵たち 】

『……っ、ははっ……』


 飛鷹の有力部族・三羽みつばの族長代理であるタイザンの言に、おおかたの兵たちは同意を見せる。

 それでも、いくらかの者たちは不服そうだった。


【 ウツセ 】

「……かたじけない、タイザン殿」


【 タイザン 】

「いえ……今の私にできることは、この程度、ですのでっ……」


【 ウツセ 】

「お恥ずかしい……私が、もっとしっかりしていればっ……ふがいないっ!」


【 タイザン 】

「……是非もありません。飛鷹の者がまとまっているのは、スイ公の威あってのこと……誰も、あの方の代わりにはなれますまい」


【 ウツセ 】

「…………っ」


 ウツセが歯噛みしているところへ、


【 ???? 】

「――シン将軍は、こちらかっ?」


 後方から駆けつけたのは、伝令を示す旗を掲げた騎兵だった。

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