◆◆◆◆ 9-95 鶴風の戦い(44) ◆◆◆◆
タイザンの射放った矢が、背後からランブに迫る――
――ドスッ!
【 ランブ 】
「……ぐうっ!」
苦悶の声が響く。
【 ランブの配下 】
「凪将軍っ!?」
やったか――と思われたが、
【 ランブ 】
「……っ、くうっ……!」
【 タイザン 】
「――っ!? まさかっ!?」
ランブの脇腹を貫こうとした矢は、とっさに左手で受け止められていたのである。
矢は見えていなかったにもかかわらず、あたかも左手が勝手に動いたかのようだった。
【 タイザン 】
「くっ……!」
さらに矢をつがえんとするタイザンだったが、
【 カズサ 】
「よくもっ――大姐をっ!」
【 タイザン 】
「――――っ!」
怒気もあらわに、カズサが襲いかかる。
とっさに身をひねって躱そうとするも、一歩遅く――
【 カズサ 】
「はぁあああっ!」
ドシュッ! ザクウッ!
左右の剣がきらめき、タイザンの胴を切り裂く……!
【 タイザン 】
「ぐっ……ううっ!」
【 飛鷹の兵 】
「タイザン様っ……!」
――ドシャッ!
カズサの連続斬撃を受け、血煙を放ちながらタイザンは落馬していった――
【 ランブ 】
「陛下っ! よくぞご無事でっ……!」
【 カズサ 】
「お待たせしましたっ……!」
【 ヨスガ 】
「うむ――」
乱戦の中、ヨスガらはランブたちとの合流を果たしていた。
【 ランブ 】
「陛下っ、霙将軍は――」
【 ミズキ 】
「…………っ」
【 ヨスガ 】
「……話は、後だ! まずはこの場を切り抜けるっ! 敵陣が乱れているあいだに、突破するぞ!」
【 一同 】
『ははっ……!!』
ヨスガらは一塊となって、右往左往する飛鷹兵らの中を切り進んでいった――
日没が、迫っている。
【 ウツセ 】
「タイザン殿っ! ご無事ですかっ……!」
馬から降りたウツセが、タイザンの元へ駆け寄る。
【 タイザン 】
「……っ、なんの……これしきっ……くぅっ……」
応急手当を受けて寝かされていたタイザンは、身を起こして呻き声をこぼす。
【 タイザン 】
「……鎖帷子を着こんでいただけ、まだ良かったようですっ……」
飛鷹の戦士はもっぱら軽装だが、タイザンは宙の流儀を好むことから、鎖帷子を着込んでいた。
おかげで、致命傷はまぬがれたのである。
浅傷とは言えないが、命にかかわるわけでもないようで、ウツセは胸を撫でおろす。
【 タイザン 】
「それよりっ……敵は……?」
【 ウツセ 】
「……逃げられました」
そう告げるウツセの視線の先には、鬱蒼とした草深い山が見える。
【 飛鷹の兵 】
「おのれっ……宙人どもめ、卑劣な真似をっ!」
【 飛鷹の兵 】
「辰将軍っ! 今すぐ、追撃命令をっ!」
味方に偽装した敵に背後を衝かれ、一杯食わされたことで、飛鷹の兵たちは息巻いている。
【 ウツセ 】
「――いや、待て。敵は山中に身を潜めた。いかに飛鷹騎兵が精強でも、十分には力を発揮できぬ」
【 飛鷹の兵 】
「しかしっ……!」
【 ウツセ 】
「彼らの行く先はわかっている。……ひとまず馬を休め、しかるのち、追い討ちをかける!」
【 飛鷹の兵たち 】
『……おおっ……!』
【 飛鷹の兵たち 】
『…………っ』
兵の半ばは同意の声を上げたものの、残りの者たちは不服そうな態度を隠さない。
【 タイザン 】
「……辰将軍の言葉は、正しいっ……皆、軽はずみな行動はっ……慎めっ……!」
手負いのタイザンが声を張り上げる。
【 飛鷹の兵たち 】
『……っ、ははっ……』
飛鷹の有力部族・三羽の族長代理であるタイザンの言に、おおかたの兵たちは同意を見せる。
それでも、いくらかの者たちは不服そうだった。
【 ウツセ 】
「……かたじけない、タイザン殿」
【 タイザン 】
「いえ……今の私にできることは、この程度、ですのでっ……」
【 ウツセ 】
「お恥ずかしい……私が、もっとしっかりしていればっ……ふがいないっ!」
【 タイザン 】
「……是非もありません。飛鷹の者がまとまっているのは、翠公の威あってのこと……誰も、あの方の代わりにはなれますまい」
【 ウツセ 】
「…………っ」
ウツセが歯噛みしているところへ、
【 ???? 】
「――辰将軍は、こちらかっ?」
後方から駆けつけたのは、伝令を示す旗を掲げた騎兵だった。
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




