◆◆◆◆ 9-91 鶴風の戦い(40) ◆◆◆◆
【 セイレン 】
「申し遅れましたが、私はセイレン、〈幻聖魔君〉藍・セイレン。こちらは……」
【 ホノカナ 】
「あ――〈人侠烈聖〉、鱗・ホノカナと申しますっ……」
【 セイレン 】
「ぜひ、千載竜仙さまに会わせていただけないでしょうかっ? お願いしたいことがあるので!」
【 暗庭君 】
「あァ? ……あ~……そりゃア、無理だな」
【 セイレン 】
「そこをなんとかっ……! 勝手に入り込んだ無礼はお詫びしますので! ほら、ホノカナ殿も!」
【 ホノカナ 】
「あっ、はい、すみませんでしたっ……!」
二人してペコペコと頼み込む。
【 暗庭君 】
「……俺に頼まれても困るんだよなァ」
【 暗庭君 】
「師父は……その、なんというか……あまり人付き合いが得意じゃないんだよ」
【 暗庭君 】
「なんせ俺だって、直接会ったのはもう十年くらい前だからな」
【 ホノカナ 】
「ええっ!? で、でも、お弟子さんなんですよね……? ……怖がられてるんじゃ?」
【 暗庭君 】
「別に怖がられたり、嫌われてるわけじゃねェからな!?」
【 暗庭君 】
「日記に質問とかを書いておくと、いつの間にか返事があったりするんだよッ……まあ、そういう御方なんだ」
【 セイレン 】
「はぁあ……孤高の人、とは聞いていましたが、そこまでとは……」
【 暗庭君 】
「てめェら、地上に出たいんだろ? それくらいなら、俺が出してやるよ」
【 ホノカナ 】
「ほ、本当ですかっ? ありがとうございます!」
見かけや口調によらず親切な暗庭君の言葉に、ホノカナは胸を撫でおろす。
【 ホノカナ 】
「よかったですね、セイレンさん!」
【 セイレン 】
「う~ん、それはありがたいのですが……この先のことを考えると……」
【 ホノカナ 】
「…………?」
【 セイレン 】
「仕方ありません――暗庭君どの! 少し、騒がしくしてしまいますが……お許しをっ!」
【 暗庭君 】
「はァ!? てめェ、なにをッ……」
【 ホノカナ 】
「ちょっ、セイレンさん……!?」
なんだか妙にいつもより冴えている、と思ったが、とんだ見込み違いだったのかもしれない……!
【 セイレン 】
「はぁあぁぁぁっ……!」
……ゴゴゴゴ……!!
杖を手にしたセイレンの周囲に、見えざる力が集まっていく……!
【 ホノカナ 】
「セイレンさん!? な、なにしてるんですかっ!?」
いつものセイレンとはまるで異質な気配に、ホノカナは戸惑いを隠せない。
【 暗庭君 】
「ちいッ……こいつ、何考えてやがるッ!?」
身構える暗庭君。
【 セイレン 】
「なに、千載竜仙さまにお出ましいただくためですともっ……えいっ!」
と、セイレンが地面を叩くと、
――ドドッ! ドドドォッ……!
【 ホノカナ 】
「…………っ!?」
【 暗庭君 】
「っ! こいつはっ……」
【 土の巨人 】
『オオオオオオ……!!』
軽く五宙丈(約15メートル)はあろうかという土製の巨人が、出現した……!
【 セイレン 】
「申し訳ないが――ひと暴れさせていただきましょうっ!」
【 土の巨人 】
『グォオオオオオオ……!!』
手の上に乗ったセイレンが告げるや、巨人は身を震わせながら咆哮する。
【 暗庭君 】
「ちッ、ふざけたヤツめッ……! 好き勝手にさせるかよッ!」
怒り心頭の暗庭君が、術を放たんとする――
【 ホノカナ 】
「あ、あわわっ……!」
【 セイレン 】
「これも、陛下のためっ……!」
【 暗庭君 】
「やらせるかよッ……無礼者がッ!」
【 ホノカナ 】
「――やっ、やめてくださ~~いっ!!」
ホノカナが宝剣を抜き放ち、頭上に掲げる――すると、
――カカッ!!
【 ホノカナ 】
「…………わっ!?」
【 セイレン 】
「……おわぁっ!?」
【 暗庭君 】
「ぐっ……!?」
強烈な光が、周囲を包み込む……!
と、それに呼応するように、
【 ???? 】
『そ――そんなに――光らずとも――いいでしょう――』
……ボコォオッ!
地面が崩れて、何者かが姿を現す――
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