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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
384/421

◆◆◆◆ 9-84 鶴風の戦い(33) ◆◆◆◆

 そのころ、戦場の上空では……


【 ギョクレン 】

「おっ……皆、突破できたようでございますね! グンムは取り逃しましたか……まあ、仕方なし!」


 地上の様子を眺めながら呟くのは〈セイ・ギョクレン〉、ヨスガ一党の方士である。


【 馬のような生き物 】

「メエエエエエ……」


 彼がまたがる翼のある奇妙な馬のような生物が、鳴き声をあげる。

 風変わりな見た目によらず、れっきとした霊獣れいじゅうであり、人を乗せて空を飛ぶくらいのことは造作もない。


【 ギョクレン 】

「……さてと、うちの役目はこんなところでございますね!」


 彼がヨスガから与えられた任務は、ランブたちの援護であった。

 暴風雨を起こしてグンム軍を混乱させ、さらには本陣の位置を伝えたのである。


【 ギョクレン 】

「むう~……うちが本気を出せば、もっと大暴れできるのでございますがっ……」


 しかし、直接的な敵軍への攻撃は、大首領おやぶんたるヨスガから禁止されている。

 方士が前線に出てきて方術を用いると、双方に甚大な被害が出る可能性がある。

 それを避けるために、あくまで方術は支援にとどめる……というのが、ヨスガの判断であった。


【 ギョクレン 】

「うむう~……うちなら、そこいらの方士がたばになってかかってきたところで、後れは取らないのでございますがっ……」


【 ギョクレン 】

「……まあ、是非もなしでございますね! 早いところ師父おししょうたちと合流しなくては――」


 と、セイレンらのもとへ向かわんとしたとき……


【 馬のような生き物 】

「……ンメエェェ~~……」


【 ギョクレン 】

「……んんっ? どうしたのでございます、〈小牛姫(しょうぎゅうき〉?」


 彼の駆る霊獣れいじゅうが、なぜか動かない。


【 ギョクレン 】

「もしや、お腹が空いたのでございますかっ? 急いでいるので、しばらく我慢するのでございますっ!」


【 小牛姫 】

「ンメヘェェェ……」


【 ギョクレン 】

「んんんっ? 違う……これはっ?」


 ……ヒュウウウウゥ……


 気づけば、ギョクレンたちの周囲を風が取り囲んでいる……!


【 ???? 】

「――悪いが、ゆかせるわけにはいかぬな」


【 ギョクレン 】

「…………っ!」


 バサッ……バサッ……


【 翼を持つ者 】

「ま……しばらく、ここでゆっくりしていくといい」


 翼を持ち、鳥を思わせる仮面をつけた見知らぬ人物が、前方に浮かんでいる。


【 黒猫 】

「…………」


 その肩には、ちょこんと黒猫が載っかっている。


【 ギョクレン 】

「むむっ……賊にくみする方士でございますかっ!」


【 翼を持つ者 】

「ま、そちらから見れば、そういうことになるな」


【 翼を持つ者 】

「〈獰鵬天聖どうほうてんせい〉――などと、呼ばれている。君が〈小幻魔しょうげんま〉だな?」


【 ギョクレン 】

「いかにも! 誉れ高き〈幻聖魔君げんせいまくんアイ老師の一番弟子、小幻魔ことセイ・ギョクレンでございます!」


【 獰鵬天聖 】

「ご丁寧な自己紹介、いたみいる」


【 ギョクレン 】

「うちをたおすために現れたのでございますかっ!」


【 獰鵬天聖 】

「その通り……といえば勇ましいところだが、そうではない。私の役目は、足止めにすぎないよ」


【 ギョクレン 】

「…………っ?」


【 獰鵬天聖 】

「君の実力は、噂に聞いている。まともにぶつかっては、こちらもただではすまないのでね……ま、時間稼ぎ、というところだ」


【 ギョクレン 】

「ぬぬっ……師父や大首領たちのところへ行かせないつもりでございますかっ!」


【 獰鵬天聖 】

「別に、彼女たちや君に恨みはないがね……ま、これも仕事、というやつだ。ご理解ねがおう」


【 黒猫 】

「…………」


 黒猫が己の顔を撫でる。


【 ギョクレン 】

「知ったことではございませんっ! 力づくで通していただくのでございます――ええいっ!」


 ――バリバリバリッ!


 ギョクレンが、獰鵬天聖に向けて電撃を放つ――


【 獰鵬天聖 】

「――――っ」


 ――シュウウゥン……


 しかし、雷は相手に届くことなく、途中で掻き消えてしまった。


【 ギョクレン 】

「これはっ……!」


 ヒュゥウウウゥ……!


 先ほど以上の、何層もの風の結界がギョクレンを取り囲んでいる。


【 獰鵬天聖 】

「言っただろう? まともにやり合う気はないとね……ま、ほんの少し、足止めできればそれでいいのさ」


【 ギョクレン 】

「ぬぬぬっ……小賢こざかしい真似をっ……!」


 ギョクレンは端正な顔を歪め、歯噛みする。

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