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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
382/421

◆◆◆◆ 9-82 鶴風の戦い(31) ◆◆◆◆

 ――バイシが壮烈な討ち死にを遂げた、その頃。


 ドドッ……ドドドッ……


 帝都近辺にて、西に向かう騎馬の一団の姿がある。


【 ランブ 】

「――皆、ついてきているなっ?」


【 カズサ 】

「ええ――あらかたはっ!」


 鶴風かくふう城に立てこもって敵を引きつけていたナギ・ランブやセン・カズサたち。

 現在は包囲陣を突破して城を脱出し、一路、西へと向かっていた。

 その数、およそ三百騎。


【 屍冥幽姫しめいゆうき 】

「シシシ……つわものたちが、いささかは時を稼いでくれましょう……」


 包囲軍は屍冥幽姫が呼び出した死人の群れ――冥軍めいぐんに足止めされており、すぐには追撃に移れずにいる。


【 ランブ 】

「かさねがさね、助かった、ウヅキ殿っ!」


【 屍冥幽姫 】

「シシッ……だいぶ、くたびれたので……後は、あまりアテにしないでください……シシィ……」


 当初、鶴風城には数千の兵が立てこもっている――と見られていたが、そのほとんどは彼女が操る屍だった。

 撤退時といい、屍冥幽姫ありきの作戦であり、消耗するのも無理はない。


【 ランブ 】

「うむ、後は任された――ゆっくり休まれよっ!」


【 屍冥幽姫 】

「そうさせていただきます……ご武運、を……シ……シシ……」


 と、屍冥幽姫はランブの影へと消えていった。


【 カズサ 】

「消えてしまいましたけどっ!? 大丈夫なのですか!?」


【 ランブ 】

「おそらくなっ! それよりも――」


 目指すは、ヨスガたちとの合流……

 だが、もとよりそう簡単にはいきそうにない。


【 カズサ 】

「――っ! ランブ大姐おねえさま、あれを……!」


【 ランブ 】

「うむ――」


 ランブたちの前方には、レイ・グンム率いる本軍、約十万の大軍が待ち構えているのである。




【 官軍の兵 】

「東より、鶴風城を脱出した敵兵が接近中! その数、ざっと三百ほど――」


 ヨスガの爆死?による混乱はすでに収まり、グンムの本軍はすでに落ち着きを取り戻している。

 そこへ、敵が迫っているという知らせが入った。


【 グンム 】

「ほう……包囲陣を突破したか。大した逃げ足だな」


 十万の兵を相手に、わずか数百騎で挑むなど、正気の沙汰ではない。

 ただ突破するだけでも、容易なことではなかった。


【 グンム 】

「……玉砕ぎょくさいする気か?」


【 ダンテツ 】

「いえ……それはありえません」


 セキ・ダンテツが首を振る。


【 グンム 】

「なぜ、そう思う?」


【 ダンテツ 】

ナギ将軍の娘たるあの御仁が、そんな無謀な真似はいたしますい。必ずや、なにか策があるかと」


【 グンム 】

「ほう……?」




 ランブたちとグンム軍は、お互いの顔がわかるまでに接近した。

 敵方からは、ちらほらと矢が飛んできている


【 カズサ 】

大姐おねえさまっ……これ以上はっ!」


【 ランブ 】

「ああ――合図を!」


【 ランブの部下 】

「はっ……!」


 ランブの命で、空中に矢が放たれる――ほどなく、


 ――ドオンッ……!


 矢じりについた火薬が炸裂し、空に響いた。

 すると、たちまち、空に異変が生じはじめる――




 ――ゴオォッ……ザアァッ!


【 官軍の将兵 】

『な、なんだっ……急に、雨風がっ……』


 突然、空が真っ暗になったと思いきや、グンムの陣を暴風雨が見舞ったのだ。


【 ダンテツ 】

「ぬう……これはまるで、あの時のようなっ!」


 レツドウが急死した際も、突然の悪天候に見舞われたことを思い出すダンテツ。


【 グンム 】

「なるほど、こういうことかっ……相手にも、凄腕の方士がいるらしいなっ!」


 雨風に負けじと怒鳴るグンム。

 天候の操作は、神仙級の実力がなければ不可能な大技である。


【 ダンテツ 】

「ではっ……我らを突破するためにっ!?」


【 グンム 】

「それも、一つはあるだろうよっ! だが――」


【 グンム 】

「俺なら、もう一手、重ねるところだなっ!」


 ドドッ……ドドドッ……!


【 ダンテツ 】

「――――っ!」


 局地的な嵐の中、何者かが本陣に迫ってくる――


【 ダンテツ 】

「まずいっ! 皆、将軍をお守りせよっ!」


 ――ドオォンッ!


【 官軍の兵 】

「ぐあああっ!?」


【 官軍の兵 】

「ぎゃあああっ!?」


【 ダンテツ 】

「ぬっ……!?」


 暴風の中、血しぶきが高々と噴き上がる。

 兵馬を蹴散らし、暗がりから飛び出してきたのは、両手に大斧を構えた、巨体の戦士――


【 ランブ 】

「ここにいたかッ、レイ将軍っ! いな――」


【 ランブ 】

「謀叛人、レイ・グンムッ!」


【 グンム 】

「…………っ!」


【 ランブ 】

「大逆の罪人の首、このランブが――もらい受けるッ!」


 ――ブォンッ!


 〈双豪斧そうごうふ〉ことナギ・ランブの振り下ろした斬撃が、グンムへと迫る――

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