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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
38/421

◆◆◆◆ 3-13 天意 ◆◆◆◆

 明けて翌日――

 タイシンとユイの姿は、すでに邑から離れた街道にあった。


【 ユイ 】

「やれやれ……とんだ目に遭いましたね」


【 タイシン 】

「しかし、それだけの価値はあったというものさ」


【 ユイ 】

「例の方士のお宝に、ずいぶんご執心だったようですけど?」


【 タイシン 】

「むむ……あれは神仙の世界においても貴重な一品だからな。もっとも、仙才のない凡人が手にすれば、それだけで精気を吸い取られてしまうがね」


【 ユイ 】

「……下手に触ろうとしたりしなくてよかったですよ」


【 タイシン 】

「サノウ殿とは渡りをつけておいた。あの御仁、たいそう仙薬に興味があるようだからな」


【 タイシン 】

「希少な薬の材料を工面しようと申し出たら、あっさり飛びついてきたよ。ま、さしあたりは好きに泳いでもらうが」


【 ユイ 】

「……大丈夫なんですか、あの人?」


【 タイシン 】

「……だいぶ風変わりな御仁なのは間違いないな」


【 ユイ 】

「それより、肝心の大魚のほうは釣れたんですか?」


【 タイシン 】

「それは――」


 タイシンは、別れ際のグンムとのやりとりを思い出す……




【 タイシン 】

「――では、我らはこれにて」


【 グンム 】

「おお……あえてお見送りもしませんが」


【 タイシン 】

「なに、お気遣いなく。それにしても昨夜は、奇怪なことでありました」


【 グンム 】

「一夜の夢……と思っていただけるとありがたいが、そうもいきますまいなぁ」


【 タイシン 】

「夢にしては、いささか度がすぎるというもの。もとより、口外する気はございませんが……しかし」


【 グンム 】

「…………」


【 タイシン 】

「幽聖岳の方士を客として迎えるとは、これはもう、天意も同然かと」


【 グンム 】

「……やれやれ、天意、ですか。そこまでして、私を引っ張り出したいので?」


【 タイシン 】

「私のような者が小細工するまでもありますまい。あとはもう、将軍の御心ひとつかと」


【 グンム 】

「いやはや……誰も彼も、買いかぶりすぎってもんですよ。しかしまぁ――」


【 グンム 】

「――座して死を待つほど、腑抜けちゃあいません」


 そう断言したグンムの目には、沸々たる熱情がたぎっていた……




【 タイシン 】

「必要となれば、いつでもお声がけください――とは伝えておいた。これから先は、あの男次第だよ」


【 ユイ 】

「…………」


【 タイシン 】

「なにか言いたそうじゃないか」


【 ユイ 】

「いや――いたく、楽しそうだと思っただけですよ」


【 タイシン 】

「そうかな?」


 蒼空を見上げながら、タイシンは微笑んだ。


【 タイシン 】

「――たしかに、そうかもしれないな」

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