◆◆◆◆ 9-77 鶴風の戦い(26) ◆◆◆◆
【 無頼漢たち 】
『あ、あああああっ……副頭目っ!?』
【 アシアンディーカ 】
「……やったっ! やりましたっ、姉者人っ!! これで、やつがれを認めてくれますよねっ!」
と、思わず喜びを爆発させたのも束の間。
【 バイシ 】
「――そいつは、ちと、気が早いんじゃないか?」
【 アシアンディーカ 】
「っ!? こっ、これは……!?」
アシアンディーカは、目を疑った。
【 無頼漢たち 】
『おおっ……!?』
幾多の円月輪が、バイシの肉体に食い込んでいる――
だが、そこまで。
骨を断ち臓を斬ることもなく、受け止められていたのである。
【 バイシ 】
「なかなかの芸だが――まだまだ……だねえっ!」
バキッ! メキャアアッ!
【 アシアンディーカ 】
「な――――」
バイシが総身に力を籠めると、食い込んでいた円月輪が、ことごとく砕け散った……!
【 バイシ 】
「ふうううっ……」
これすなわち、内丹――体内で陰陽の気を練ることで、肉体を活性化させる術に他ならない。
バイシは円月輪を己の肉で受け止めたうえ、さらに圧迫することで粉砕したのである。
【 無頼漢たち 】
『お、おおおっ……すげえっ!』
【 アシアンディーカ 】
「…………っ」
アシアンディーカは、しばし絶句するも、
【 アシアンディーカ 】
「……なるほど。まあ、これくらいは、想定内だ。驚くには値せぬな」
冷静さを取り戻す。
【 バイシ 】
「さっきは、ずいぶんハシャいでたみたいだけど?」
【 アシアンディーカ 】
「う、うるさいっ! 見間違いだっ!」
【 バイシ 】
「あんた、なかなかやるじゃないか――これほど血を流したのは、いったい何十年ぶりだろうねえ」
【 アシアンディーカ 】
「ふん、ならば――わが〈八剣六臂刀〉の真髄、見せてくれるっ……はぁああっ!」
アシアンディーカが印を結ぶや、彼女の背後に、奇怪な影が浮かび上がる――
【 無頼漢たち 】
『な、なんだ……ありゃあっ!?』
【 バイシ 】
「む――」
アシアンディーカの背から、剣を持った四本の腕が生えてきている。
さらに本来の両手にそれぞれ剣を構え、
【 アシアンディーカ 】
「これぞ八剣六臂刀――いざ、参るっ!」
気迫とともに、バイシに真っ向から打ちかかっていく。
【 バイシ 】
「面白いっ……かかってきな!」
バイシも騎馬を駆り、正面からぶつかり合う――
【 アシアンディーカ 】
「――おおおおっ!」
【 バイシ 】
「ぬううっ……!」
――ガギィイッ!
大剣と六本の剣が打ち合い、噛み合い、火花が飛び散る。
【 アシアンディーカ 】
「ぬううっ……おおっ!」
――キンッ! ガキッ! ギィンッ!
【 バイシ 】
「やるねえっ……ちょこまかとっ!」
熾烈な打ち合いが続く――
【 ウツセ 】
「おお……速度を生かした一撃離脱戦法! しかし……」
【 タイザン 】
「あれでは、決め手にはなりませんな」
【 アグラニカ 】
「……っ、アシアン……」
【 アシアンディーカ 】
「このおっ……!」
【 バイシ 】
「速い――が、あたしを討つには、まだまだ浅いね……!」
【 アシアンディーカ 】
「わかって……いるともっ!」
――にゅるり。
突如、アシアンディーカの胸から、剣を手にした二本の腕が新たに生えてくる――
【 バイシ 】
「――――っ!」
【 アシアンディーカ 】
「貫けっ……!」
バイシの喉笛めがけて、繰り出される刺突!
【 バイシ 】
「ぬうぅんっ!」
――バキィッ!
【 アシアンディーカ 】
「ん、なっ……!?」
バイシの頭突きが、不意討ちの剣を粉砕していた。
【 バイシ 】
「おおおおおッ!」
間髪入れず、バイシの重い斬撃が振り下ろされる。
【 アシアンディーカ 】
「――――っ!」
六本の剣で防ごうとするアシアンディーカ――しかし、
ドバキャアアッ!!
【 アシアンディーカ 】
「――ぐぅあっ!?」
受け止めた剣がことごとく砕け散った上、バイシの刃が彼女の肉を切り裂く――
【 アグラニカ 】
「アシアンッ……!!」
女王アグラニカの、悲痛な声が響いた――
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