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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
359/421

◆◆◆◆ 9-59 鶴風の戦い(8) ◆◆◆◆

【 女官 】

「……これから、どうなるのかしら」


【 別の女官 】

「さぁねぇ……」


 レイ・グンム率いる大軍が迫り、宮中が騒然となるなか、皇帝に仕える女官たちは、不安げな顔を見合わせていた。

 官僚らと違い、彼女たちの多くは身寄りがなく、帰る場所もない。


【 他の女官 】

「陛下にお供しなくてよくなったけれど……でも……」


 ヨスガが去った後、なにごともなく新たな天子に仕えられる保証はない。

 なにより、勝者として乗り込んでくる兵士たちの毒牙が彼女らを襲う可能性は、十分にあった。


【 女官 】

レイ将軍は、軍規には厳しい御方だとか……略奪、暴行を許したりはしないと思いますが……」


【 他の女官 】

「でも……どうなることやら……」


【 女官 】

「……そういえば、ホノカナは、どうなったのでしょう? 先日、山賊のような大女に連れ去られて、それきりですが……」


【 他の女官 】

「さぁ……シキの行方もわからないし……」


 〈リョウ氏の変〉の混乱の中、消息知れずとなった女官〈蓮華レンゲ・シキ〉の行く末も、判然としない。


【 女官 】

「……っ、いっそ、みやこから逃れた方が……」


 などと、話し合っているところへ、


【 ???? 】

「――それは、やめておきなさい」


【 女官 】

「っ!? 女官長さまっ……!」


 慌てて平伏する女官たち。

 姿を見せたのは、彼女らを取り仕切る女官長ミズキであった。


【 ミズキ 】

「――知っての通り、陛下はみやこを離れることになりました。あなたたちは、己の職分をまっとうしなさい」


【 他の女官 】

「で、ですが……私たち、どうなるのでしょう……?」


【 ミズキ 】

「手は打ってあります。慌てず騒がず、ことのなりゆきを見守るように。焦って逃げようとすれば、かえって身の破滅となるでしょう」


【 女官 】

「……あの、女官長さま、ホノカナは、どうなりました?」


【 ミズキ 】

「彼女は、陛下や私たちと同行します」


【 他の女官 】

「…………っ」


【 ミズキ 】

「いつの日か、また会うこともあるでしょう。それまで、皆、健勝けんしょうであるように」


【 女官 】

「女官長さまっ……」


【 ミズキ 】

「それでは」


 踵を返し、ミズキは去っていった。


【 女官 】

「女官長さま、どこまでも陛下に従わねばならないとは、お気の毒に……」


【 他の女官 】

「ホノカナも、かわいそうに……」


 皆、ミズキらのためにさめざめと涙を流した。

 あるいはそれは、自分たちの身に降りかかる不安から逃れるためであったかもしれないが。




【 ミズキ 】

「――では、よろしくお願いします」


 女官たちの宿舎を出たミズキが、入り口に立つ相手に頭を下げた。


【 逞しい女 】

「ああ。ま、任せておきなよ。誰も入れやしないさ。ただし、勝手に逃げ出すヤツを引き留めたりはしないけど、いいよな?」


【 ミズキ 】

「もとより、そこまでは求めません。……しかしよもや、〈燃拳豪仙ねんけんごうせん〉さまが、じきじきにお出でいただけるとは」


 燃拳豪仙ねんけんごうせんこと〈ネン・カツミ〉……すなわち、皇太后たる〈コウ・ランハ〉の〈二友〉のひとりである。


【 カツミ 】

「なあに、ランハからの頼みだからね。あたしも、山の中に引っ込んでても退屈だからさぁ~」


 ヨスガから、宮中の女官の保護を依頼されたランハが差し向けたのがカツミであった。


【 カツミ 】

「お前さんこそ、ここに残った方がいいんじゃないか? なんなら、あたしが内弟子にしてやるよ。それなら誰も文句ないだろ?」


【 ミズキ 】

「……ありがたいお言葉ですが、私には他にやるべきことがありますので」


【 カツミ 】

「あっそ。惜しいな~、お前さん、スジはいいからなぁ」


 以前にも勧誘されたことがあったが、よほどカツミはミズキを見込んでいるらしい。


【 カツミ 】

「――でも、いかんせんまだまだ固いな。ちょっと、構えてみなよ」


【 ミズキ 】

「…………っ!」


 カツミから強烈な殺気を浴びせられ、思わず身構える。


【 カツミ 】

「ふむ、悪くはないけど……やっぱり固いな。もっと力を抜きなよ。たとえば――」


 スッ……


【 ミズキ 】

「――――っ」


 一瞬のうちに、間合いを詰められてしまう。


【 カツミ 】

「こことか、さ」


 さわさわ……


【 ミズキ 】

「うっ……!」


 軽く指先を撫でられ、すかさず飛び退く。

 カツミがその気なら、一瞬で仕留められていただろう。


【 ミズキ 】

「……っ、ふぅううっ……」


【 カツミ 】

「おっ、少しは脱力できたみたいじゃないか? やっぱりお前さん、なかなかスジがいいよ」


【 ミズキ 】

「……それは、どうも」


【 カツミ 】

「ま、いろいろ片付いたら、本気でやり合おうじゃないか。それまでに、もっと鍛錬しておいてくれよな!」


【 ミズキ 】

「…………」


 ミズキは口を引き結び、一礼したのだった……

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