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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
341/421

◆◆◆◆ 9-41 姉と弟 ◆◆◆◆

【 ユイ 】

「それじゃあアルカナ、殿下のことは任せたぜ」


【 アルカナ 】

「はい、ユイ殿も、お気をつけて……」


 翌日のこと。

 旅支度を整えた虎王コオウ・ユイは、アルカナの元を訪れ、後を託していた。


【 ユイ 】

「殿下はどうされてる?」


【 アルカナ 】

「は……どっと旅の疲れが出たようで、寝込まれております。もともと、あまり身体が丈夫な御方ではありませんし……」


【 ユイ 】

「そうか……まあ、気疲れも尋常じゃなかっただろうからな。腕のいい方士がいるらしいから、まずいようならレイ将軍の方に相談してくれ」


【 アルカナ 】

「はい、そこまでのことはないとは思いますが……」


【 ユイ 】

「なにしろ、この先はもっと大変になるからなぁ」


【 アルカナ 】

「……わかっています。できうる限り殿下の負担を減らせるよう、努めます」


【 ユイ 】

「まあ、ほどほどにな。レイ将軍にとっても、殿下はかけがえのない御方だ。ちゃんと気遣ってくれるさ」


【 アルカナ 】

「……だと、いいのですが」


【 ユイ 】

「なんだ、なにか言いたそうだな?」


【 アルカナ 】

「ユイ殿は……レイ将軍を、信頼されているのですか?」


【 ユイ 】

「信頼……か。まあ少なくとも、そう悪い男じゃあない、とは思ってるさ。人をモノみたいに扱ったりする御仁じゃないからな」


【 ユイ 】

「だが、油断できない男だっていうのも確かだ。あんまり気を許し過ぎるのも、考えものだろうな」


【 アルカナ 】

「……なるほど」


【 ユイ 】

「さしあたりは面倒事はないだろうが、うまく頼む。みやこの方は、こっちに任せておけ」


【 アルカナ 】

「はいっ……姉上のこと、くれぐれもよろしくお願いしますっ……!」


【 ユイ 】

「ああ、なんとかやってみるさ」


【 ユイ 】

「……ところでお前さん、青龍セイリュウ・カスカナって名に、心当たりはあるか?」


【 アルカナ 】

「えっ? 青龍セイリュウというのは、亡き母上の実家の姓で、カスカナは、ぼくが生まれる前に亡くなった姉上の名ですが……そういう姓名の方は知りません」


【 ユイ 】

「ほう……そうか」


 ここにいたって、ユイは確信した。


【 ユイ 】

(やはり、乗り込んできたのはあの小姐おじょうちゃんだったか……無茶をするもんだ)


 もともと、皇帝にケンカを吹っかけるような向こう見ずな小娘だったが……わずかな間に、輪をかけて命知らずになったとみえる。


【 アルカナ 】

「……その人が、どうかしたんですか?」


【 ユイ 】

「いや……なに、お前さんも聞いただろう? レイ将軍のところに乗り込んできた朝廷の使者の話。そのひとりが、そう名乗ったらしくてな」


【 アルカナ 】

「ああ……そうでしたか。それにしても、たった三人で敵陣に乗り込むだなんて、何と無謀な……暴虎馮河ぼうこひょうがの勇にもほどがありますね。よほどの勇者か、そうでなければ愚か者でしょう」

 *暴虎馮河……血気にはやって無謀な行いをするの意。


【 ユイ 】

「……っ、ああ、まったくだ」


【 ユイ 】

(十中八九、お前の姉貴のことなんだけどな……)


【 ユイ 】

「そっちこそ、無茶をするなよ? 殿下をお守りするのが、お前さんの役目なんだからな」


【 アルカナ 】

「……はい、心得ています。姉上を、無事にお迎えするためにも……!」


【 ユイ 】

「わかってるなら、結構だ。じゃあ、任せたぜ」


【 アルカナ 】

「はい、どうかお気をつけてっ……!」




 そのまま陣を離れたユイは、一路、みやこへ足を向けた。

 懐には、グンムから預かったタイシンへの書状もある。


【 ユイ 】

(しかし、あの姉弟……ほんのわずかな期間で行き違いになるとはな。運がいいのか、悪いのか……?)


 もしアルカナがその場にいれば、当然ながらホノカナの正体は明るみになり、大騒動になっていたことだろう。


【 ユイ 】

(宮城に潜入するのは骨だが……ま、行ってみるさ)


 ユイは、さらに速度を上げて駆け出した――




 その一方で……


【 アルカナ 】

「…………」


 ユイを見送った後、アルカナは先ほどの話を思い起こしていた。


【 アルカナ 】

青龍セイリュウ……カスカナ……)


 青龍セイリュウという姓は、峰東ほうとうではよくあるものだ。

 しかし、アルカナとかカスカナといった名は、そう一般的なものではない。


【 アルカナ 】

「…………」


【 アルカナ 】

「……っ! も、もしかしてっ……!」


 アルカナは、ハッと思い当たった。


【 アルカナ 】

(もしかすると、母上の縁者だったりするのではっ……?)


 アルカナが物心ついた頃には、すでに峰東ほうとうは乱れており、親戚縁者と顔を合わせる機会もなかった。


【 アルカナ 】

(朝廷にいるなら、姉上もご存じかもしれないし……お会いしたら、確かめてみよう)


 青龍セイリュウ・カスカナが姉の偽名である……などとは、まったく想像すらしないアルカナなのであった。

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