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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
336/421

◆◆◆◆ 9-36 詰問 ◆◆◆◆

【 グンム 】

「――これはどういうことだ? 説明していただこう、ガク老師せんせい


【 シュレイ 】

「……っ、はっ……」


 グンムの幕舎に呼び出されたシュレイは、無言で平伏していた。


【 グンム 】

「私に黙って、かの者たちを追わせたあげく、タシギ卿は手傷を負い、シンセ殿にいたっては深手という。いったい、どういうつもりだ?」


【 シュレイ 】

「はっ……申し訳ございません、あの者たちを生かして帰すべきではない、と判断いたしまして……」


【 グンム 】

「それで、私の命に逆らった――ということだな?」


 シュレイと二人きりの場合、ふだんならグンムはざっくばらんな態度で接するが、今は峻烈しゅんれつそのものだった。

 *峻烈……激しく、厳しいの意。


【 シュレイ 】

「……面目ございません」


【 グンム 】

「…………」


【 グンム 】

「軍法違反は厳罰だ。貴公の身を軍政司ぐんせいしに引き渡し、裁きを待つ――」

 *軍政司……ここでは軍隊内の賞罰係の意。


【 シュレイ 】

「…………っ」


【 グンム 】

「――と、言いたいところだが、貴公は軍属ではない。ゆえに、今回は罪には問うまい」


 シュレイは立場的にはあくまでグンムの客分であり、部下ではない。


【 グンム 】

「だが、勝手な行動を取ったとがは見過ごせぬ。しばし、謹慎きんしんしてもらおう。話は以上だ」


【 シュレイ 】

「……はっ……」


 シュレイは深々と頭を下げる。


【 グンム 】

「……シンセ殿の、容体は?」


 やや声音を和らげて、尋ねるグンム。


【 シュレイ 】

「は……ヘキ師弟していの手当てのおかげで、幸い、命に別状はないとのこと」


【 グンム 】

「そいつは、なによりだな。……なあ老師せんせい、これに懲りたら、独断専行どくだんせんこうは勘弁してくれ。俺たちは、同志だろう?」

 *独断専行……他人の意見を無視して、自分の判断で行動するの意。


【 シュレイ 】

「ははっ……まことに、かたじけない限りです」


【 シュレイ 】

「しかしながら――」


 と、顔を上げて。


【 シュレイ 】

「今後も、時には将軍の意に沿わぬことを、あえて行うことがあるやもしれません。それが、将軍の大業のためであれば」


【 グンム 】

「…………」


【 シュレイ 】

「…………」


 しばし、両者は睨み合っていたが……


【 グンム 】

「……シンセ殿に、お大事にと伝えてくれ。ああ、タシギ卿にもな」


【 シュレイ 】

「は――」


 一礼して、シュレイは幕舎を出ていった。


【 グンム 】

(……やれやれだな)


 勝手な男だ、とグンムは内心呆れつつも、


【 グンム 】

(だが、あれくらいでなきゃあ、つまらんがね)


 ダンテツもそうだが、有能な人材ほど、とかく扱いづらいものと相場が決まっているのだ。


【 グンム 】

(それにしても……)


 たった三人で、タシギとその手下、さらにシンセと神鴉兵しんあへいを返り討ちにするとは……


【 グンム 】

(あの連中……俺の見立て以上に、大物だったということか?)


 人を見る目はあるつもりだが、もとより万全ではない。

 今回に関していえば、シュレイの目が正しかった……とも、いえる。


【 グンム 】

(ま、俺ひとりでできることなんて、たかが知れてるからな)


 他人を、いかに使いこなすか……それが肝要。


【 グンム 】

(なにせ、これからは大仕事だからな)


 グンムは、机の上の地図に目をやった。

 今や、帝都〈万寿世春ばんじゅせいしゅん〉は目と鼻の先に迫っている。


【 グンム 】

「さて……どう出るかな、あの天子さまは」


 玉座で退屈そうにしていた小娘の様子が思い浮かぶ。

 だが、それが真の姿でなかったことは、もはや明白だ。


【 グンム 】

(おとなしく、ご退場願えればいいが……)


 おそらく、そうはなるまいな――と、グンムは身を引き締めるのだった。

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