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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
332/421

◆◆◆◆ 9-32 車輪 ◆◆◆◆

 その頃、先行したホノカナたちは――


 ドドッ……ドドッ……!


【 ホノカナ 】

「……う、わっ……!」


【 セイレン 】

「ひぇっ……うううっ……!」


 闇に包まれた森の中を、まっしぐらに突き進んでいた。

 ゼンキョクの言ったとおり、飛鷹ひよう馬は木に激突することもなく、軽快に走り続けている。

 ホノカナたちはたてがみにしがみつき、振り落とされまいと必死だった。


【 ホノカナ 】

「ゼンキョクさんっ……大丈夫、でしょうかっ?」


 背後をチラリと見ながら、ホノカナが案じる。


【 セイレン 】

「心配はっ……いりませんともっ! なにせ、あの御仁は――」


 と、セイレンがなにやら言いかけたとき……


【 ホノカナ 】

「っ! あれはっ……」


 ボワッ……ボウッ……!


 背後の闇に、いくつもの光が灯った。

 そして、恐ろしい速度で追いかけてくる――


【 ホノカナ 】

「なにあれっ……鬼火おにびっ!?」


【 セイレン 】

「い、いえっ……違いますっ! あれはっ……」


 シャリッ……シャランッ……


【 ホノカナ 】

「…………っ!?」


 なにかが回転するような音が近づいてくる。


【 ???? 】

「我らが主に、あだなす者は――」


【 ???? 】

「ことごとく、討つべし――」


 迫ってくるのは、黒ずくめの兵たちだった。

 その両足に燃える車輪を装着しており、空中を滑るようにして接近してくるのだ。


【 セイレン 】

「あ、あれは、もしやっ……!」


【 ホノカナ 】

「知ってるんですか、セイレンさん!?」


【 セイレン 】

「いえ、全然知りませんっ! でも、なんというか……ものすごく危険なのは、わかりますねっ!」


【 ホノカナ 】

「それはわたしにだって一目瞭然ですけどぉ!?」


 これすなわち、グンム軍の方術部隊〈神鴉兵しんあへい〉たちだったが、ホノカナたちは知る由もない。


【 黒ずくめの兵たち 】

『――――!』


 短槍を手にした兵たちが、一気に距離を詰めてくる……!


【 セイレン 】

「あ、あわわっ!? 串刺しは嫌ぁ~~っ!」


【 ホノカナ 】

「セイレンさんっ、なにかこうっ……足止めに使える方術とか、ないんですかっ!?」


【 セイレン 】

「……おおっ! そ、そうでしたね! ええっ、もちろん準備してありますともっ!」


【 ホノカナ 】

「今、忘れてませんでしたっ!?」


【 セイレン 】

「そんなことはありませんともっ……えーっと、えーっと……そう、こういうときは――“バク”ッ!」


 セイレンが杖を掲げ、兵へと向ける――


 ――バリバリバリッ!


【 黒ずくめの兵 】

「ぐっ……!?」


 電撃がほとばしり、縄のごとく先頭にいた兵にからみついて、その場に釘付けとする。

 この術は、先日セイレンの弟子〈セイ・ギョクレン〉が用いていたものに他ならない。


【 ホノカナ 】

「すごいっ……! やればできるじゃないですか、セイレンさんっ!」


【 セイレン 】

「わ、わはははっ! そうでしょうっ! ギョクレンの術をパク……いえっ、見よう見まねで使っただけですがねっ!」


【 ホノカナ 】

「…………うん、すごいですっ!」


 弟子の術を真似るというのはどうなのか……と思いつつ、ホノカナは重ねて称賛した。


【 他の黒ずくめの兵 】

「味な真似を……散開せよ!」


【 他の黒ずくめの兵たち 】

『おお――』


 一網打尽にされるのを避けるべく、互いの間合いを空けつつ、迫ってくる兵たち。


【 ホノカナ 】

「…………!」


【 セイレン 】

「ホノカナ殿! 先に行ってくださいっ!」


【 ホノカナ 】

「えっ? セイレンさん、でもっ……」


【 セイレン 】

「なぁに――私はけっこうしぶといので、ご心配なく! それに、なにより……」


【 セイレン 】

「この雷、いまいち命中精度が怪しくてですね……間違ってホノカナ殿に当ててしまうかもしれませんので!」


【 ホノカナ 】

「……っ、セイレンさん、どうか、ご無事でっ!」


 ホノカナは一礼して、さらに馬を加速させた。


【 セイレン 】

「これでよし……さぁ、まとめてかかってきなさいっ! この天地開闢てんちかいびゃく以来の大軍師にして、世に比類なき方術使いたるこの私が――」

 *天地開闢……天と地が分かれるの意、世界創造。


【 黒ずくめの兵たち 】

『――――っ』


【 セイレン 】

「って、本当に一斉にかかってくるのはズルいっ……おわぁあああぁ~~~~っ!?」


 ――ドオオォォーンッ!!


 深夜の森に、轟音が鳴り響いた――

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